2025年、記録的な不漁で28年連続で獲得していた「生鮮カツオ水揚げ量日本一」の座を失った宮城県・気仙沼。しかし2026年は一転、9月末時点ですでに約2万8000トンと、2位の千葉県・勝浦を4倍以上引き離す豊漁が続いている。「今年は気仙沼が日本一でほぼ確実」と専門家が断言するほどの復活劇の背景に何があったのか。そして今まさに旬を迎えた戻りガツオの味わいは…。
2025年は前年比1割という衝撃の不漁
気仙沼といえば、全国有数の「カツオのまち」だ。生鮮カツオの水揚げ量で2024年まで28年連続の日本一を誇り、地域のアイデンティティそのものとも言える看板を背負ってきた。
ところが2025年は、前年のわずか1割ほどとなる4372トンという記録的な不漁に見舞われた。長年守り続けてきた「日本一の座」を千葉の勝浦に譲り渡すという、地域にとって痛恨の結果となった。
カツオ産業の裾野は広い。飲食店や鮮魚店のほか、加工、製氷、資材、運送など多くの業種が不漁の影響を受け、地域経済も大きな打撃を受けた。
2026年は春先から豊漁続き 9月末で約2万8000トン

しかし2026年は、状況が大きく変わった。春先から豊漁が続き、10月5日時点の気仙沼市内の鮮魚店には、朝に水揚げされたばかりの新鮮な戻りガツオが並んだ。9月末時点の水揚げ量は約2万8000トンに達し、2位の勝浦を4倍以上引き離している。
価格も安定傾向にあり、1匹あたり3000円と去年より500円ほど安く販売されている。この日は栃木から「ニュースを見てきた」という観光客もいて、豊漁の情報が全国から気仙沼にカツオ目当ての客を呼び込んでいることもうかがえた。
鮮魚店でも、「今年はかなり脂の乗ったカツオが毎日のように水揚げされている。ぜひ食べてほしい」と、その質の高さに太鼓判を押す。
豊漁の鍵は「黒潮大蛇行の収束」

なぜ今年はこれほどの豊漁となったのか。カツオの生態に詳しい一般社団法人・漁業情報サービスセンターの水野紫津葉さんは、「黒潮大蛇行の収束」との関連性を指摘する。
日本列島の太平洋側では、南の暖かい海域から房総半島沖へと流れる「黒潮」と呼ばれる海流がある。去年4月までのおよそ8年間、この黒潮が通常のルートを大きく外れる「黒潮大蛇行」と呼ばれる現象が発生し、その流れの一部が三陸沖にまで達していた。
暖かい海流はプランクトンや、それを目当てに集まる小魚などが少ない。一方、北の冷たい海流はその逆で、栄養が豊富とされている。去年は冷たい海流が三陸沖に流れ込まず、結果的に北上するカツオの数が減少したと考えられるという。

今年は黒潮大蛇行が収束し、状況が一変した。水野さんは「冷水が北の方から降りてきているということもあって、潮境になる三陸沖に餌が多く、海洋環境が以前の状態に回復してきていると思う」と語る。餌が豊富な北の海域から三陸沖へ海流が流れ込んだことで、カツオの来遊量が増加し、今年の豊漁につながったと考えられる。
カツオが地域経済を動かす
豊漁の恩恵は、気仙沼の食卓と飲食店にも直接届いている。市内でカツオ料理を提供する飲食店を営む小野寺洋さんは、カツオの水揚げが地域経済に直結すると語る。
和醸酒一杯屋梟 小野寺洋さん:
カツオがいっぱい揚がる、日本一に返り咲くことで、地域が経済的に回るのは本当にありがたい。
漁師だけでなく、氷を供給する業者、梱包や運送に携わる人々、飲食店や鮮魚店に至るまで、カツオ漁が多くの人の生計を支えている。去年の不漁がいかに地域に打撃を与えたか、そして今年の豊漁がいかに多くの人に安堵をもたらしているか、その重みは計り知れない。

小野寺さんの店ではわら焼きを提供しており、今年のカツオはあぶり始めるとすぐに脂がしたたるという。おすすめの食べ方は「にんにくと塩」。
和醸酒一杯屋梟 小野寺洋さん:
カツオのうま味や香りを味わうのにはベストと思って提供しています。
「漁師の皆さんの努力で日本一という形。去年は本当に悔しい思いをしたが、ありがたい」と、小野寺さんは語る。
今こそ気仙沼へ 旬のカツオは「絶対に自信あり」

漁業情報サービスセンターの水野さんが「ほぼ確実」と断言する日本一奪還。数字の上でもすでに2位を大きく引き離しており、28年守り続けた王座への返り咲きは目前だ。
旬を迎えた戻りガツオは今が食べごろ。小野寺さんは「今はどこのお店でもカツオは絶対に自信あると思うので、ぜひ気仙沼に来ていただいてカツオを食べてもらいたい」と呼びかける。
去年の悔しさを胸に、今年の豊漁をつかみ取ったカツオのまち・気仙沼。その旬の味は、価格も去年より安く、脂の乗りも申し分ない。秋の気仙沼で、今しか食べられない一皿に出会いに行く価値は十分にある。

