宮城の秋の風物詩・芋煮会のシーズンに入り、会場を運営する会社ではクマ対策を強化している。クマの目撃件数が大幅に増加した2025年は「クマキャンセル」が相次ぎ、客入りが例年の4割にまで落ち込んだ会場もあった。今年はブナの実が豊作で、専門家も「出没は大幅に減る」と予測するが、人慣れしたクマや冬眠の遅れという新たなリスクも指摘されている。
「熊キャンセル」で客が激減した去年の教訓
広瀬川沿いの仙台市青葉区芋沢にある「元祖仙台いも煮会場広瀬川」は、50年以上の歴史を持つ芋煮会場だ。食材を持参する必要がなく、手ぶらでボリューム満点の芋煮を味わえるとあって、取材日には社会人のグループなど約170人が楽しんでいた。
会場はにぎわいをみせているが、この前年、2025年の予約受付表には「熊キャンセル」の文字が並んでいた。
元祖仙台いも煮会場広瀬川 宍戸正樹店長:
2025年は10月は平年並みに好調だったが、11月からクマの情報が多くなってきて、それとともにキャンセルが相次いだ。
結果として、例年と比べ客入りは4割にとどまった。
元祖仙台いも煮会場広瀬川 宍戸正樹店長:
クマで大きく客が減少したのは2025年が初めて。団体での利用が多かったので、(客入りに)響いた。
会場にクマが出たことはないが、対策は万全に

会場にはこれまで一度もクマが出たことはないという。それでもロケット花火やクマスプレーを用意し、2026年からはさらに周辺の背丈の高い草木を刈って見通しを良くするなど、対策を強化した。
においでクマを引き付けないための工夫も徹底している。
元祖仙台いも煮会場広瀬川 宍戸正樹店長:
ゴミの対策として、各団体にバケツを渡して、食べ残しや食材を周りに捨てないようにお願いしている。会場でもやれる限りの対策は日々万全にやっていきたいと思うので、安心して来場してほしい。
2025年は“クマ異常事態” 2026年はブナ豊作も…
2025年は人里への出没が相次ぎ、「クマ異常事態」とも呼ばれた。10月には栗原市でキノコ採りをしていた女性がクマに襲われ死亡する事態も起きた。一緒に山に入った70代女性の行方は、1年が過ぎても分かっていない。

宮城県によると、2025年度のクマの出没件数は夏から秋にかけて例年を大きく上回り、10月だけで1239件に達した。要因として挙げられているのが、クマの餌となるブナの実の「大凶作」だ。
一方、2026年は東北森林管理局の調査でブナの実が「豊作」と判定されている。
岩手大学農学部 山内貴義准教授:
基本的に2025年よりはかなり餌の条件が良いと言える。出没自体は大幅に減ると思われる。

実際、近年のクマの出没件数のデータを見ると、ブナの実が「大凶作」だった2023年度と2025年度は出没が多く、豊作だった年度は出没が少ない傾向が確認できる。餌の豊凶がクマの行動に直結していることがわかる。
ただし、楽観視できない点も指摘する。
岩手大学農学部 山内貴義准教授:
山に餌がずっとあると、クマはなかなか冬眠しない。冬眠の時期が全体的に遅れる可能性がある。頭数は少ないにしても、『もう冬眠しているから大丈夫だろう』と安易に思わない方がいい。
通常は12月ごろに冬眠するが、ここ数年はふらふらと出てくる個体もいるという。
人慣れしたクマ、思わぬ至近距離での遭遇も
もう一つ懸念されているのが、人里を恐れない“人慣れ”したクマの存在だ。
岩手大学農学部 山内貴義准教授:
人の生活音、車の音や話し声などにかなり鈍感になっている。小さい頃から親と一緒に人里の周辺をうろうろしているので、人間の生活をまったく気にしないような個体が増えている。
こうした個体は、山の中だけでなく住宅街にも出没する。「思わぬ至近距離でいきなり遭遇してしまう可能性はある」と山内准教授は警戒を呼びかける。
基本的なクマ対策を知り、実際に講じることが大切
芋煮会や山菜採りなど、秋のレジャーを安心して楽しむために、一人一人が基本的なクマ対策を知り、実践することが求められる。
岩手大学農学部 山内貴義准教授:
出没情報や目撃情報をこまめにチェックして、行政の指導にきちんと従う。情報があった際には、餌になるものを外に放置しないこと、戸締まりをしっかりすることが大切。
芋煮会シーズンが多くの人にとって安全で楽しい時間となるよう、ひとりひとりのクマ対策が欠かせない。

