農作物の食害などで捕獲、駆除される野生動物を新たな食の資源として活用する調味料が福岡で開発、誕生した。
捕獲・駆除された肉の8割以上は廃棄
ベーコンが入ったニンニク香るスープパスタにセロリと赤タマネギのピクルスが添えられたロースト肉。

美味しそうな料理だが、味の決め手となっているのが、シカとイノシシの肉から作られた『鹿醤油』と『猪醤油』なのだ

野生のシカやイノシシを巡っては、住宅街など人間の生活圏で目撃されるケースが相次いでいる。福岡県によると2023年度の県の野生鳥獣による農林水産物被害額は約5億3900万円でこのうちイノシシは約2億9378万円となっている。

こうした野生動物は、農作物への被害などを防ぐために捕獲・駆除されているが、その肉の8割以上は廃棄されているのが現状だ。
『鹿醤油』と『猪醤油』
そこで、駆除した野生動物の肉を新たな資源として生かそうと福岡工業大学と福岡県内87の醤油醸造元が加盟する協同組合がタッグを組み、約3年をかけて開発したのが2つの醤油『鹿醤油』と『猪醤油』なのだ。

福岡工業大学工学部生命環境化学科の長谷靜香・准教授は「一般的な大豆を原料とした醤油と同じ作り方です。肉から醤油ができることに今でも驚いている」と話す。

製造には、一般的な醤油と同じ技術を使っているが、大豆の醤油に比べて苦みが少なく、旨味が強い傾向があるという。更に研究チームが注目しているのが肉に含まれる成分だ。

長谷准教授によると「イミダゾールペプチドという特殊な成分を含んでいて、疲労回復や運動能力の向上に役立つことが報告されていて、その成分が醤油に加工後も残ることを期待して製造している」という。

この日、取材した記者が試食したパスタは、コンブだしのスープに猪醤油を加えたもの。「臭みとか全くないですね。醤油の味に深みがある感じでものすごく美味しいです」

続いて、鹿醤油を使ったピクルスは「こちらも全く臭みがないですね。お酢だけではない旨味が感じられます。酸味をちょっとまろやかにしてくれている感じがします」という。

長谷准教授は「臭い、硬い、美味しくないというマイナスイメージがあるので、そうではなくてコクをプラスできる良い調味料なんだということをきちんと伝えていきたい」と話す。

研究チームは今後、原料となる肉の安定確保などの課題を解決し一般販売を目指すとしている。
(テレビ西日本)

