「いや本当にもうこれ死んだなって思いましたね」9月に開通したばかりの新しい宮沢橋(仙台市)に隣接する根岸交差点で、あわや大事故という場面がドライブレコーダーに記録されていた。
渋滞解消や事故減少が期待されて整備された新しい橋だが、交差点のルール変更に戸惑うドライバーが後を絶たず、開通からわずか3週間足らずで9件もの物損事故が発生している。
ドラレコが記録した”死にかけた”瞬間
新しい宮沢橋の開通から2日後の9月15日夜、根岸交差点に隣接する国道286号で、危険な場面がドライブレコーダーに記録された。
長町方面から五橋方面へ直進していた乗用車の前に、対向車線の軽自動車が突然右折してきたのだ。軽自動車は五橋方面から西多賀方面へと向かおうとしていた。双方の信号はいずれも青だったが、軽自動車の強引な右折がギリギリの場面を生んだ。衝突はかろうじて回避されたものの、乗用車の運転者はその瞬間をこう振り返る。
「いや本当にもうこれ死んだなって思いましたね。もし左車線走っている車が隣にいたら、もう多分ぼく事故になっていたと思うので、本当に運が良かったなってそれだけですね」
スムーズな開通翌日から一転、事故が相次ぐ
新しい宮沢橋は、JR仙台駅から南におよそ2キロ、広瀬川にかかる。旧・宮沢橋の老朽化に伴い、およそ30メートル上流側に架け替えられ、9月13日午前6時に開通した。
最大の変化は車線数だ。新しい橋は片側2車線となり、これまでより1車線増えた。開通翌日の14日朝、通勤、通学時間帯の根岸交差点周辺では目立った渋滞は見られず、橋の上の車の流れはスムーズだった。歩道も広くなり、自転車や歩行者にとっても利便性が向上した。
橋を歩いて通勤する人は「車はいつも詰まっている、渋滞しているのばかりを見ていたので、流れているのでびっくりしている」と驚きを口にした。付近の住人は、新しい橋の開通をおおむね歓迎ムードで迎えていた。
さらに、根岸交差点は変則五差路から十字路に変わり、事故が減ることも期待されていた。しかし現実は、期待とは正反対の事態が起きていた。
なぜ事故が起きるのか 変わった「右折のルール」
警察によると、橋が開通した9月13日から10月1日までの間に、根岸交差点ではすでに9件の物損事故が発生している。なかでも多いのが、五橋方面から西多賀方面へ右折する車と、長町方面から五橋方面へ直進する車が絡む事故。まさに、ドライブレコーダーが捉えた事故と同じその背景には、開通に伴う交差点ルールの大きな変化がある。
橋の開通前、五橋方面から西多賀方面へ右折する際、青信号が出ていた時は対向車線が赤だった。つまり、右折車は対向車を気にせず曲がれる状況だったのだ。しかし開通後は、右折側と直進側のいずれも青信号となった。右折車は対向の直進車に注意しながら曲がる必要が生じたわけだ。
加えて、宮沢橋の開通によって、五橋方面から西多賀方面へ右折するレーンは3車線から2車線に減少。宮沢橋から五橋方面への右折と、西多賀方面から長町方面への右折も新たに可能になるなど、交差点全体の通行パターンが大きく変わった。
警察は、これまでの感覚のまま右折してしまうことで事故が多発していると分析している。
「通り慣れた人ほど危ない」
ドライブレコーダーの映像を提供してくれた乗用車の運転者も、「今までずっと通り慣れていた人ほど感覚が染み付いちゃって、事故につながりやすい」と事故が発生しやすい状況になっていると感じていた。同時に、「周りの車を信用しすぎず、自分自身も気を付けていかないといけない」と、自らの命を守るために意識を改める必要性を感じたという。
長年、同じルールで走り続けてきたドライバーにとって、信号のタイミングや右折の感覚はほぼ無意識のものになっている。そこにルール変更が加わると、頭でわかっていても体が反応しきれないという状況が生まれやすい。新たな宮沢橋開通後のいま、根岸交差点はまさにそういった環境になっていると言える。
利便性の向上を目指して整備された新しい宮沢橋だが、根岸交差点の安全が確保されてこそ、その恩恵が地域全体に行き渡るだろう。
警察は、「通り慣れた人も含めて、信号や標識などを確認してほしい」と改めて注意を呼びかけている。たとえ青信号であっても、交差点内の状況をしっかりと確認する。その一手間が、大事故を防ぐことにつながる。
