年間およそ300万人が訪れる東京・高尾山の登山道で猛毒キノコ「カエンタケ」が次々と姿を現しています。
触れるだけで皮膚がただれ、食べれば死に至ることもあるという強い毒性で、除去を繰り返しても、同じ場所から何度も生え直すということです。
専門家によると、ことしの夏の暑さと記録的な長雨が重なった結果「非常に生えやすい環境が整った」と指摘するほどの事態となっているといいます。
■人気観光スポットに貼り紙 「カエンタケに注意」
高尾山の入口付近、石畳の広場に立つケーブルカー乗り場。
観光客が行き交う公園案内には、「カエンタケに注意」と大きく印刷された紙が目立つ形で掲示されています。写真つきの注意書きには、英語で「絶対に触れないように」との文言が添えられていました。
カエンタケは成長すると、地面から立ちのぼる「火炎」や、「手の指」のような細長い形になります。色は鮮やかな赤やオレンジ。その見た目から、「ついついきれいだから、触ってしまいますよね」と語る登山客も。
しかし、皮膚に触れるだけで炎症やただれを引き起こし、口にすれば命に関わるほどの強い毒性を持っています。
■登山道を歩けば次々と見つかる赤いキノコ
「とれたてっ」取材班が実際に高尾山の登山道を歩くと、様々なキノコが登山道沿いに点在していました。
その中に、「カエンタケ注意」の看板が設置されている場所がありました。看板のすぐ後ろに赤いキノコ2本が確認されました。大きさはおよそ5センチ。さらにその下には、1センチほどの小さなものが生えているのも発見されました。
50メートルほど離れた別の箇所でも、やや ピンクがかった3センチほどのキノコが2本。専門家に確認したところ、いずれもカエンタケだと判明しました。
いずれの発見場所も「すでに一度カエンタケが見つかり、除去した場所」だということです。
高尾山では登山客が誤って触れないよう対策を強化するとともに、除去を行っていると言います。
■記録的長雨と猛暑が招いた“最悪の条件”
なぜ今、これほどまでにカエンタケが急増しているのか。
食品衛生の観点からキノコを研究する立命館大学薬学部の井之上浩一教授はこう説明します。
【井之上浩一教授】「ことし夏も暑くて、特に9月ぐらいは雨が非常に長かったので、様々なキノコがすごく育ちやすい環境かなと思います」
東京都心では観測史上最長となる37日間もの長雨が記録されました。猛暑による地温の上昇に加え、この長雨による湿潤な環境が重なり、カエンタケをはじめとするキノコにとって理想的な生育条件が整ったというのです。
除去しても同じ場所から、再び生えてくる現象について専門家は「菌糸(きんし)」の存在を挙げます。
キノコは地面の下に菌の糸(菌糸)を広げており、地上に見えている部分を取り除いても、菌糸が地中に残っている限り、同じ場所から繰り返し発生する可能性があるということです。
高尾山を800回登ったという登山客を取材したところ、「写真を撮った」ということで見せてもらいました。かなり大きなカエンタケです。
登山客は「9月ごろから生えているのは見ていたが、10月に入っても、これほど次から次へと生えてくるのは記憶にない」と語り、ことしの異変を強調しました。
カエンタケは紅葉の時期を中心に生え、色が鮮やかなため子どもの目を引きやすいという特徴があります。看板が設置された場所は菌糸が地中に残っており、今後も繰り返し発生する可能性があります。
■各地の公園にも拡大 さらに別の毒キノコも
さらにカエンタケの大量発生は、高尾山に限った話ではないといいます。
【井之上浩一教授】「カエンタケは広葉樹から生えてくるので、例えば公園でも生えることがある。特にお子さんたちは気を付けたほうがいい」
栃木市のみかも山公園では、「湿生自然植物園・野草の園付近の数ケ所で、猛毒のカエンタケが発見されました。すぐに除去しましたが今後も発生が予測されます」とSNSに投稿されました。その後予想通り、カエンタケが見つかり、除去したといいます。
山梨・富士吉田市などでも注意喚起が行われています。
さらに9月には、都内の荒川の土手沿いでも別の毒キノコが発見されました。
「オオシロカラカサタケ」とみられる白い大型のキノコで、食べると激しい胃腸障害や頭痛を引き起こす強い毒性を持っています。複数カ所で確認されていて、公園や河川敷など身近な場所にも毒キノコが存在していることが明らかになっています。
こうしたキノコを見分けるにはどうしたらよいのでしょうか。
■AIによる画像判定も「危険」と専門家が警告
自分で見つけたキノコの種類を調べようと、AIによる画像判定アプリを使う人も増えています。しかし井之上教授はこの手法にも強い懸念を示します。
【井之上浩一教授】「キノコの写真などを使って、実際(AI画像判定を)やってみました。正答率が60~70%ぐらいまでしか上がりませんでした。アプリなどもあると思うが、AIのみ、画像検索のみでの判定は難しい」
食用キノコに見た目がそっくりな毒キノコも多く存在するため、AIを使った自己判断は危険だといいます。
井之上教授は、秋の行楽シーズンを迎えるにあたり、次のように呼びかけています。
【井之上浩一教授】「ハイキングとかする方も多くいると思います。決して素手で触ったり、持ち帰って食べてしまったり、ましてや他人に譲るなどは絶対にやめてください」
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2026年10月9日放送)
