子どもたちに本格的なフランス料理を味わってもらおうと福岡のフレンチレストランが、月に一度『子ども食堂』を開いている。どんな料理が並ぶのか?ちょっと覗いてみた。
元トラック運転手のシェフ
福岡・宗像市の古民家に続々と集まる親子連れ。この日、開かれたのは、無料で食事を提供するこども食堂。ただし、ここで味わえるのは一般的な家庭料理ではなく、フランス料理のシェフが作る“本格フレンチ”なのだ。

「子ども食堂って、ご飯が食べれない子どものたちのためって、大体そうなってるみたいなんですけど、うちはそうじゃないですよ。子どもに喜んでもらえる野菜があるんだから、だからそれを僕らが料理して、宗像の野菜ってこんなに価値があるんですよ」と話す主催者の上村秀字さん(54)。こども食堂の開催前日。上村さんは、古民家のキッチンで仕込みに追われていた。

普段は、古民家レストラン『キャトルセゾン宗像』で季節の食材を使ったフランス料理を提供している上村さん。月に一度、開いているのが『子どもフレンチ食堂』だ。

実は上村さん、かつてはトラック運転手だった。仕事で全国各地を回り、休憩中には、その土地のものを食べ歩いていたという。そんな上村さんの記憶に残っていたのが、宗像のスーパーで買った総菜の美味しさだった。

退職後、複数の飲食店でシェフとして経験を積み、50歳を機に宗像市へ。「最高の食材で最高の料理を作りたい」とフレンチレストランをオープン。そして、3年前から始めたのが『子どもフレンチ食堂』だ。

変色・変形・傷などの“規格外”の野菜
上村さんが大切にしているのが地元の農家との繋がりだ。この日は、宗像で野菜を育てる農家の人たちがレストランを訪れた。

「こういう形とか、こういう形でぱっくり割れてると、いくらお客さんに届くのが早い直売所でも、なかなか売れない」とトマト農家の天野淳一さんが持参したのは、変色や変形、傷などがある“規格外”の野菜。

「割れてるって割と美味しいですよね。完熟してるからなのかな」と上村さんは、こうした野菜を無償でもらうのではなく、できるだけ正規品と同じ価格で買い取り、料理に使っている。

ナス農家の三木雅裕さんも「もう使わなければ、本当に安く売るか、誰かにやるか、捨てるか。その選択肢しかないので、そういうところを使ってもらってるんでありがたいですね」と規格外のナスを持参。

「曲がったり傷が入ったり、捨ててしまう野菜、廃棄野菜でもこんなに価値があるんだっていうことを言うと、子どもたちが今度はいずれ、大人になっても買ってくれるんじゃないか。三木さんの作るナスは、ナスが嫌いな子どもでも食べられる」(上村秀宇さん)

仕入れた野菜はさっそくキッチンへ。傷があっても形が違っても味は変わらない。上村さんが、ひとつひとつ丁寧に下拵えしていく。

子どもの“苦手”をひとつ解消
メイン料理とデザートの仕込みを終え迎えた当日。レストランには、スタッフや地元のボランティアが集まった。慌ただしく準備を進めるうちにオープンの時間だ。

この日は、抽選で選ばれた親子、合わせて100人が訪れた。メニューは、宗像の食材をたっぷり使った『フレンチ丼』。

骨付き鶏とたっぷりの宗像産野菜をトマトで煮込み子どもが食べやすいようご飯にかけた。

そしてデザートは、宗像産ブルーベリーのソースをかけたババロアだ。

「全部、美味しい」(子ども)。「すごくシンプルな食材なのにこんなに料理の仕方で変わるんだなと思って」(母親)と舌鼓を打つ親子。

ナス農家の三木さんが持参した“キズモノ”のナスも「野菜とか余り食べないことが多いんですけど、ここに来たらすごい食べるんですよね。ナスとか日頃は全然、食べないんですよ。でも今、食べてる」(母親)。「ナス美味しい」(子ども)と地元の野菜が、子どもの“苦手”をひとつ解消していた。

運営資金不足解消のために
全国ではさまざまな子ども食堂の取り組みが進んでいるが、支援団体の調査では約47%の団体が運営資金不足を訴えている。
上村さん主宰の子ども食堂は現在、レストランの資金などで運営しているが、今後も安定した開催を続けるために取り組んでいるのが、規格外の野菜を使ったお菓子の開発と販売だ。地元の店舗などに商品をおいてもらい、売り上げを運営資金の一部にするという。

「いっぱい食べてくれるし、楽しそうじゃないですか、それだけでもう十分ですね。毎月楽しみにしてくれるって言うんで、それ聞くとやっぱり使命感みたいのも湧いてきます。ありがたいです」(上村秀宇さん)
地域の人たちに地元の食材の美味しさを知ってもらう。上村さんは、そんな時間をこれからも続けていきたいと話す。
(テレビ西日本)

