ロシア軍のウクライナへの攻勢、弾道ミサイルだけではなく、新たにジェットエンジンを装備した新型の自爆無人機(ドローン)による攻撃が強まり、防御に立たされるウクライナ側は、迎撃手段に苦慮。特に高性能であるPAC-3MSE等の迎撃ミサイルの支援を西側友好国に求めている。
最高速度500km/時、最高高度5000m
だが、ジェットエンジンを装備したロシアの自爆無人機は、従来のロシア軍自爆無人機と比べ、どのようにウウライナにとって、脅威になったのか。
ウクライナ国防情報局(DIU)は、残骸を入手したロシア軍のジェット推進自爆無人機の一種、ゲラン4を詳細に分析。
従来のプロペラ推進だったゲラン2/シャヘド136自爆無人機の速度が、180㎞/時だったのに比べると、「ゲラン4は、空力抵抗が減った新型機体、強化された構造、そして推力が増加したターボジェットエンジンを搭載している。…空気抵抗を軽減するため、胴体上の(点検用等の)ハッチの数は抑えられている」ため、「時速300~400kmでの機動飛行を可能にする上、強化された構造により大きなG負荷にも耐えることができる…上、最高速度500km/時、最高高度5000mに到達することが可能になった」(ウクライナ国防情報局、2026年5月25日)というのである。
つまり、速度が速くなっただけでなく、小回りが利き高く飛ぶ、というわけだ。
そして、弾頭部には「破片弾頭/熱圧弾頭OFZBCH-50/TBBCH-50M(50kg)または大型熱圧弾頭TBBCH-90(90kg)を搭載し、最大450kmまで距離まで飛行」(ウクライナ国防情報局、2026年5月25日)と破壊力も強力だ。
破壊力が強力で、迎撃が容易ではないジェット推進自爆無人機にウクライナが対処しようにも、パトリオット・システム等、迎撃システムに必要な、安価とはいえないものの高性能の迎撃ミサイルが不足していれば、対処は当然難しくなる。
ヴァンパイア・システムで撃墜した映像公開
それでも、防御する側は、ゲラン4等のジェット推進自爆ドローンに対処しなければならない。
ウクライナ軍のMiG-29戦闘機が、旧ソ連時代1970年代から生産されたR-60M空対空ミサイルでジェット推進自爆ドローンを撃墜した例が報じられたほか、最近目立つのは、ミサイルというより、それより安価とされる一種のロケット弾。ジェット推進自爆無人機に対し、迎撃ミサイルではなく、ロケット弾による迎撃という奇手に進む可能性が浮かんでいるのだ。
ウクライナが求めているPAC-3MSEミサイルが1発当たり、約400万ドル(約6億円)とされるのに対し、そもそも、主として、西側の攻撃ヘリコプター搭載用に開発された無誘導のロケット弾「ハイドラ70」にレーザー誘導キットを取り付けて誘導兵器としたものがAPKWS。1発あたり3万~3万5000ドル(約470万~550万円)とも報じられている。
つまり、APKWSのコストは桁違いなので、イギリス軍やアメリカ軍でも、空対地攻撃用のロケット弾として使用されている。
このAPKWSや他のロケット弾を使って、大量に襲来する自爆無人機を地上から迎撃する装備として、米国で開発されたのが、ヴァンパイア・システムだ。
WESCAM MX-10 RSTA目標捕捉・照準システムと統合されたヴァンパイア・システムは、2023年1月、米国防総省とメーカーは、4000万ドル相当の契約を結び、ウクライナ軍にVAMPIREシステムx14セットを引き渡すことになっていた。その成果は、どうであったか。
ウクライナ軍は、「ジェット推進式ドローン『シャヘド』」と発表していたが、ゲラン4ではないかとみられるジェット推進自爆無人機を、恐らく初めて、ヴァンパイア・システムで撃墜した映像を公開。迎撃ロケット弾が、標的に命中、破壊した。
米国政府が、今後、VAMPIREシステムをどれだけ増産し、ウクライナに引き渡す、引き渡さないかは不明だが、VAMPIREシステムで使用されるAPKWSロケット弾は、英国など、他の西側諸国でも保有・運用されているので、PAC-3MSE迎撃ミサイルよりは、調達が容易かもしれない。
もちろん、APKWSロケット弾は、PAC-3MSE迎撃ミサイルのように、敵の弾道ミサイル迎撃も視野に入れて開発されたわけではないが、ロシア軍が今後もウクライナ攻撃に大量に投入するかもしれないジェット推進自爆無人機の迎撃に適しているのであれば、極東でも将来のジェット推進自爆無人機の脅威を意識して、ウクライナでのジェット推進自爆無人機対APKWSロケット弾の帰趨をみるべきかもしれない。

