21歳の女性運転士についてです。鉄道の運転士である父親の背中を追いかけて、2026年5月に国家試験に合格。先輩の指導を受けて運転技術を磨き、ついに独り立ちのデビューの日を迎えました。
■上高地線”初”の女性運転士
乗客に笑顔で対応する中澤弥沙さん(21)。
切符の対応が終わったら乗務員室の中へ。
アルピコ交通・中澤弥沙さん:
「車側灯 消灯 知らせ灯 点灯 出発進行」
中澤さんはアルピコ交通上高地線で初の女性運転士です。
上高地線は、松本駅から新島々駅までを結ぶ約14.4kmのローカル鉄道。
通勤・通学や、上高地へ向かう観光客が多く乗車し、2025年度の利用者数は約181万人でした。
■1年、訓練重ね…無事に合格
中澤さんは2025年2月に入社。2025年5月からは、筆記と実技の訓練を重ね、1年後の2026年5月、無事に国家試験に合格。憧れの運転士となりました。
アルピコ交通・中澤弥沙さん:
「全部苦戦しました。実技の方では、実際に体を動かすっていうのもあるので、体力的にちょっと厳しかった」
長野県松本市出身の中澤さんは、幼いころから電車を見ることが大好きでした。
高校を卒業後、携帯販売の仕事をしましたが、ある時、アルピコ交通で運転士の募集があることを知らされました。
中澤弥沙さん:
「元々、電車が好きだった、電車を小さい時から見てきたというのもあるんですけど、『父の勧め』というか」
■「運転士の先輩」父の勧めで
勧めたのが、現在も鉄道会社で運転士を務める、父・俊貴さん(47)です。
父・俊貴さん:
「背中を押したというほどではないんですけど、まさかその道に進むとは思わなかったので、正直驚いたのが一番最初の印象。少しうれしさもあった」
「運転士の先輩」でもある父の存在は頼もしく、「よきアドバイザー」でもあります。
ただし―。
中澤弥沙さん:
「聞いて、返ってくる答えに、さらにプラスで言ってくれるんですけど、いや、そこまで聞いてないよみたいな、そこからだんだんと言い合いになって(笑)」
父・俊貴さん:
「ちょっと余計な一言がプラスされちゃうのかもしれない(笑)」
■「かっこいい」から「尊敬」へ
そんな父の背中を追って運転士になった弥沙さん。
実際に運転席に座ることになって、初めてその大変さ、責任の重さを実感しました。
中澤弥沙さん:
「運転していると、運転士さんすごいなっていう尊敬、かっこいいから尊敬に変わった」
この時はまだ「見習い」の腕章をつけた運転士。
一人前になることを目指し、先輩の指導を受けながら、「見習い運転」を繰り返してきました。
指導担当の先輩運転士はー。
望月浩次さん:
「まだ(鉄道業界での)経験がそんなにない中で、挑戦しようっていうすごい向上心を感じて。今はもう自分でこうします、ああしますって、自分でやっている」
■緊張の「独り立ち」当日
そしてついに、独り立ちする日がやってきました。
9月17日、この日は午前中が休みで、デビューは午後の電車でした。
中澤弥沙さん:
「笑顔を忘れるんじゃないかなっていうくらい緊張しているんですけど、この顔をお客さまが見たら不安になると思うので、乗務前には切り替えて笑顔でできればいい」
父・俊貴さん:
「多くの方に支えていただいて、今があるとういことを忘れることなく、感謝の気持ちを常に持ち続けて、安全運行に努めていってほしい」
午後2時過ぎ―。制服姿の弥沙さんが新島々駅にやってきました。
出発時刻の午後2時45分が迫ります。
中澤弥沙さん:
「よし、行きます」
先輩:
「行ってらっしゃい、頑張って」
仲間に見送られ、いざホームへ。
中澤弥沙さん:
「(緊張しますか?)緊張します、どうしよう。いや、どきどきですね」
■「見習い」の腕章外し、出発進行
担当する電車がホームに入線してきました。
乗務員室に入ったら機器の点検を行います。一つ一つ異常がないか確認。安全運転のためには、欠かすことができません。
すべてのチェックを終えた後、ついに出発時間を迎えました。
無線:
「発車オーライです」
中澤弥沙さん:
「出発進行」
午後2時45分、新島々駅発車―。
街の中を走る電車。
目的地の松本駅までは約30分かかります。先輩運転士も、腕に巻いていた見習いの腕章もありません。
■子供からの「頑張ってね」の言葉
児童:
「頑張ってね」
中澤弥沙さん:
「ありがとう」
「小さなお子さんだったりとかが手を振ってくれるっていうのが一番やりがいを感じる」
上高地線は運転士のみのワンマン電車です。一駅、一駅、確実に運転していきます。
■乗れてよかったと言われるように
そして午後3時14分、無事に松本駅に到着しました。
無人駅からの乗客の清算を行うのも運転士の務め。笑顔で接します。
休む間もなく、今度は新島々行きの運転のため、反対側の乗務員室へ。
再び走り始めた電車。弥沙さんはこの日、最終電車まで6往復を無事に運転しました。
運転を終えて―。
中澤弥沙さん:
「無事に帰ってこられてよかった」
父の背中を追い運転士としてのデビューを果たした弥沙さん。乗客の安全を第一に、そして、尊敬される運転士を目指してこれからも電車を走らせます。
アルピコ交通・中澤弥沙さん:
「父のその姿を夢というか目標にして、これから頑張っていこうかなって思っています。この運転士さんの電車に乗れてよかったって言われるように。そう言われるということは安全に運転しているということになるので、そう言われるような運転士さんになりたいと思っている」
