兵庫県尼崎市で去年8月、妻の遺体を切断し川に遺棄した疑いで46歳の医師の男が逮捕されました。
男は去年9月に警察に妻の行方不明届を提出。しかし、そのおよそ1年後には、男の供述に基づいて妻の骨が川から見つかることになります。
いつ“行方不明者の夫”から“容疑者”に変わったのか。
元刑事部長が警察の捜査を分析し今後のポイント捜査のポイントについて解説しました。
■事件の経緯 “行方不明届”から逮捕までの約1年に何が
死体損壊および死体遺棄の疑いで逮捕されたのは、精神科医の下村憲司容疑者(46)です。
去年8月、自宅で妻(当時41歳)の遺体を刃物で切断し、尼崎市内の川に遺棄した疑いがもたれています。
そのひと月後の去年9月、下村容疑者は警察に対して「妻の行方不明届」を提出しました。その際、「8月に妻と口論になり、妻が出て行った。その後、連絡がない」と相談していたということです。
そして下村容疑者の供述に基づいて捜査員が現場を確認したところ、川から妻とみられる骨が発見されました。
これを受け、9月30日、下村容疑者の逮捕に至ったということです。
■逮捕に至った捜査のポイント 下村容疑者の届け出内容と“生存の証”
元兵庫県警 刑事部長の棚瀬誠氏は、警察が着目するポイントを解説します。
【棚瀬誠氏】「容疑者の供述、すなわち『喧嘩したから奥さんがいなくなった』、これを前提にするのであれば、その奥さんからすると、夫から離れたいということだけですから、実生活が伴うはずです。
ですから、夫が知らない場所で実生活を営むのであれば、携帯電話の使用状況やクレジットカードを使っている、いわば“生存の証”というのがすぐ取れるわけですが、そうじゃないんだとすると(“生存の証”がとれないとすると)、まず怪しいと。
そもそも行方不明届というのが本当なのかどうかという着想に至ると思います」
■警察が“着目”は届出を出した夫側の行動にも
棚瀬氏はさらに、警察は届出を出した夫側の行動にも着目すると指摘しました。
【棚瀬誠氏】「行方不明届を警察に提出するとなった際には、その前に、例えば家族の周り、奥様の立ち回り先などを様々探した上で、帰ってこない、あるいはどこにもいないから“行方不明届”という文脈になる。
しかし、その探すような作業をしていなかったとすると『なんで探してないんだ』、『突然なんで行方不明なんだ』という話でピンとくるということは考えられると思います」
つまり、もし妻が本当に家出をしたのであれば、夫として懸命に妻を探す行動が先に来るはずです」
行方不明者の“実生活”、届け出た人物の行動の有無を慎重に見たうえで、下村容疑者が早い段階で“容疑者”となった可能性があると分析します。
■今後の焦点 “死亡の経緯の解明”
下村容疑者の現在の逮捕容疑は、死体損壊と死体遺棄です。
今後の捜査の最大の焦点は死亡の経緯の解明です。
遺体はすでに切断されており、死因の特定が困難な状況です。
棚瀬氏は「殺人」の立証がポイントで“一定の捜査が進んでいるのでは”と指摘しました。
【棚瀬誠氏】「供述が得られて、その供述通りに奥様のご遺体、骨が発見されたと。これはいわゆる犯人の秘密の暴露というものになるわけですけれども、そういった意味では、損壊と死体遺棄について秘密の暴露があったわけです。
普通、病気で亡くなったときに、遺棄する、損壊するというふうにはなりませんから、これまでの捜査の過程で、どうして損壊・遺棄に至るのかというのは一定程度、捜査が進んでいると思います」
■立証の“ハードル”の指摘も
一方、弁護士の菊地幸夫氏は「殺人」立証の“ハードル”について解説しました。
【菊地幸夫氏】「(立証は)なかなか難しいところだと思いますね。
供述を得た上で、川から上がってきた骨が、容疑者が言っている損壊状況と矛盾のないような形態・状況であった、というような照らし合わせを細かくしていくんだと思います」
さらに弁護士の橋下徹氏も「一部でも良いので殺害方法についての物的証拠は必要だと思います。殺害方法を裏付ける物的証拠がなければ、裁判で弁護側との激しい争いになることが避けられない」と指摘しました。
(関西テレビ「newsランナー」2026年10月1日放送)
