早くもインフルエンザの流行が始まっていますが、他にもある病気が急増しているそうです。
その名は「NTM症(肺非結核性抗酸菌症)」。
聞き慣れない病名ですが、年間2000人以上が命を落とすとも言われており、厚生労働省は初めて9月24日から9月30日を啓発週間に設定するほど、近年注目されている病気なのです。
特に「中高年の女性」は要注意だということで、関西医科大学付属病院で呼吸器・感染症内科を担当する宮下修行医師が、NTM症の実態と対策について詳しく解説しました。
■NTM症とは?
NTM症とは、非結核性抗酸菌と呼ばれる菌が肺に感染することで引き起こされる慢性の呼吸器疾患です。
インフルエンザや新型コロナのように急激に症状が悪化する急性の感染症とは根本的に異なります。
【宮下修行医師】「インフルエンザやコロナは急性の感染症ですが、NTM症は慢性の病気です。症状が進行するまでに数年から10数年かかります」
この“ゆっくり進む”という特性が、発見を遅らせる最大の要因のひとつです。
発症しても自覚症状がないまま過ごしている人も少なくなく、宮下医師によれば、外来で最も多いのは「健康診断のレントゲンで異常が見つかり、紹介されてくるケース」だといいます。
■症状の進み方「無症状」から始まり呼吸困難・体重減少
宮下医師によると、NTM症の症状は段階的に進行します。
初期にはほとんど自覚症状がなく、本人も感染に気づかないことがほとんどだということです。
症状の進行は、おおむね次のような流れをたどります。
・初期はほとんど無症状
・2週間以上続く咳や痰
・血痰、微熱、倦怠感
・呼吸困難や体重減少
2週間以上にわたって咳や痰が続けば病院を受診する人もいると思いますが、そこで注意しなければならないのが、発見の難しさです。
宮下医師は「レントゲンだけでは初期に見つかりにくく、CTを撮らないと分からない場合が多い」と指摘します。
■一度かかると「完治」は困難
NTM症のもうひとつの深刻な側面は、完治が困難であることです。
【宮下修行医師】「残念ながら一旦菌がくっついてしまうと、完治される方が実は少ないんです。ただし、薬を飲んで進行を抑える、またはそこで留めるということができます」
つまり、NTM症は一生付き合っていく可能性のある病気なのです。
一方で、発症せずに菌を持ったまま経過する「キャリア」状態の人も存在します。
免疫力が高ければ菌の進行を体が抑えられることがあり、発症に至らないケースもあります。
■要注意は「やせ型の中高年女性」
では、どのような人がNTM症にかかりやすいのでしょうか。
宮下医師によれば、最も注意が必要なのは「やせ型の中高年女性」です。
解剖学的に、男性よりも女性は気管支が弱いとされています。
また、NTM症は“慢性”の疾患なため、歳を重ねると体の免疫力が低下し、菌の進行速度にも影響が出る可能性があります。
さらに、栄養状態が整っていれば菌の進行を遅らせることができますが、やせ型の人はエネルギーが不足しがちになって免疫力が低下し、症状が悪化しやすくなるということです。
【宮下修行医師】「この病気の特徴は、ゆっくりしか進行しないということ。 簡単に言うと、体の免疫が高ければ進行を抑制できますが、中高年の女性、特に痩せ型の人は、どうしても栄養が不足したり、免疫が落ちやすかったりするので、菌が進行しやすくなる」
■感染経路は“水回り” 人から人への感染はなし
一方NTM症は、インフルエンザのように人から人には感染しません。
宮下医師によれば、菌は私たちの身近な環境、「水が溜まりやすい場所」に潜んでいるそうです。
【宮下修行医師】「一番は水が溜まりやすい場所。例えばシャワーヘッドなどもそうです。ぬめりがある場所。この菌はバイオフィルムという、外からの攻撃を防ぐガードを作り、その中で生き続けます。さらに抗酸菌といって酸に非常に強く、私たちの胃酸では死なない。水が大好きで高温でも生きられる非常にタフな菌です」
お風呂場やキッチンなどの水回り全般のほか、土にも菌が存在する場合があるということで、特に中高年女性が注意すべき場面として宮下医師は「ガーデニング」を挙げています。
■どう対策すればいい?
感染を防ぐために、宮下医師はこのような対策方法を挙げています。
・水回りをこまめに掃除する
・シャワーヘッドは数年おきに交換する(バイオフィルムが蓄積しやすいため)
・掃除、ガーデニングなどの作業時はマスクを着用する
また、NTM症の患者が急増しているのは「関心の高まり」が背景にあるということです。
【宮下修行医師】「急に増えたというよりも、関心が高まって検査の回数が増えることによって、おそらく分かってきたのではないかというのが推測です。ただ、本当のことは分かりません」
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2026年10月1日放送)
