富山県内に住む外国人は今年1月時点で2万5714人、4年連続で過去最多を更新している。そのなかで10月1日から、日本に滞在するために必要な「在留資格」の手数料が大幅に引き上げられた。永住資格の申請手数料はこれまでの1万円から一気に20万円へ、実に20倍の値上げだ。「2年分の貯金がなくなる」と語る家族もおり、地域に根ざした店舗の閉店という事態にまで発展している。


「20倍」の衝撃、家族5人で100万円


富山に住んで10年、ベトナム出身のグエン・ズイ・ハイさんは、富山市と小矢部市で東南アジアの食材店を経営している。同じベトナム出身の妻タオさんと3人の子どもとともに富山市で暮らし、日本での生活が10年となったことで、いよいよ永住権の申請要件を満たした。

しかし、手数料の大幅値上げを前に、ハイさんは国際行政書士事務所に駆け込んだ。「5人で申請したら100万になってしまう。値上げの後に申請したら2年ぐらい貯金なくなると思います」。妻のタオさんも「共働きで仕事して毎月生活費とか子どもの色々(がある中で)、すごく大変ですね」と不安を口にする。

永住者の資格を取得できれば、滞在期間の制限がなくなり、転職や起業といった選択肢が広がる。銀行や金融機関からの信用度も高まり、日本人と同じ金利でローンを組むことも可能になる。それだけに、取得を目指す外国人は多い。

川西国際行政書士事務所の川西孝昭さんによると、9月に入ってからの申請件数は「10倍ぐらい増えてきている」という。「急な値上げで、どうして値上げしないといけないのかという理由があまり伝わっていない」と川西さんは指摘する。
高岡のカレー店が閉店、背景に資本金規定の引き上げ
在留資格の厳格化は手数料だけにとどまらない。日本で会社を営む「経営・管理」の在留資格については、昨年10月の改正で資本金の条件がこれまでの6倍、3000万円以上に引き上げられた。


高岡市でインドカレー店「チャウタリ」を営むネパール出身のバスネット・クリスナ・バドウルさんは、この影響を直接受けた一人だ。日本に来て20年、過去2回永住者の資格を申請したが許可が下りず、さらに資本金規定の引き上げにより、経営していた2店舗のうち高岡市の店舗を今月閉店し、射水市の店舗は第三者に引き渡すことを決断した。「ビザを変える時も結構金額が上がってきているから、やっていけなさそう」とクリスナさんは語る。


現在は就労資格で働き、妻と子は「家族滞在」の居住資格で暮らす。日本生まれの14歳と5歳の子どもたちを思い、帰国せざるを得ない事態も想定している。「ネパールに連れて行っても言葉の問題とか文化の問題がある。子どもたち、結構大変だと思います」。娘も「もし日本にいられないってなると、読み書きとか何もできないから、結構困る」と話した。
地方から都市部への流出、「日本が選ばれなくなる」懸念

BBTが県内の外国人支援団体を通じて行ったアンケートでは、今回の制度改正で「生活費の負担増への不安」が6割に上り、半数以上が「日本に住み続けることを考え直すきっかけになる」と回答している。
川西さんは、外国人への負担増が都市部への流出を加速させる可能性も指摘する。「地方よりも都市部の方が賃金は高いのが事実ですから、地方から都市部への流入が増えていくことも一つの心配材料です」。
多文化共生を研究する関西国際大学客員教授の毛受敏浩さんも、「厳格化をあまりにも出しすぎるとネガティブなイメージになってしまう。本来日本が受け入れるべきいい人材が他の国に行ってしまうリスクもある」と警鐘を鳴らす。
政府は手数料引き上げの増収分を、外国人への日本語教育や相談体制の強化などに活用するとしている。一方で、人口減少が加速する中で経済を維持発展させていくためにも、多様な人々がその能力を発揮できる「仕組み作り」は急務となっている。
その一つとして自治体が『多文化共生』について条例を制定する動きも広がっている。富山県でも今年条例の制定に向け素案が発表され、県民から意見を求めている。
その素案については、県議会で「安全や公平感への県民の懸念がある」と議員から質されたのに対し、県は「外国人材を増やすためではない」とし、「社会規範の尊重」などが、より明確に伝わる表現に修正する方針も示している。
今後のより良い富山のために外国人の置かれている現状を知り、経済社会の持続的発展をどうしていくべきか、社会全体で考える必要がある。
(富山テレビ放送)

