山一面を覆うススキが気持ちを涼やかにしてくれる奈良の「曽爾高原」。シルバーウィーク中も多くの人が訪れました。
自然豊かな村で、”ある異変”が起きています。
【地元住民】「まだ9月やで、10月、11月とな…えらいことやわ」
地元住民から聞こえてきたのは悲鳴でした。
ハイシーズンには高原から5キロにわたって車が列をなし、住民が自宅から出られなくなる事態も。
一体、何が起きているのか。その背景を徹底取材しました。
■ ススキの絨毯が広がる“絶景スポット”
奈良県と三重県の境に位置する「曽爾村(そにむら)」は、住民わずか1200人ほどの小さな村です。
四季折々の美しい景色が広がるこの村の中でも、特に多くの人を惹きつけるのが「曽爾高原」。山を覆うススキが、柔らかな陽射しに照らされ、高原は穏やかな空気に包まれます。
この風景を一目見ようと、関西各地から多くの観光客が足を運んでいます。
【観光客】「秋の風も気持ちよくて、日帰りにはちょうどいいレジャーかなって」
【観光客】「見渡す限りのススキ。自然とともに生きているんだっていうことを感じています」
1年で最も美しい姿を見せるのが、秋の夕暮れ時です。高原が夕日で黄金色に染まる光景は圧巻で、村によると観光客は年々増える傾向にあります。
■ 人口の300倍 約38万人が押し寄せる村
しかし、絶景の裏側では地元住民の“悲鳴”が上がっています。
曽爾村によると、去年の観光客数はおよそ38万人。人口のおよそ300倍にあたる数字です。
取材班がシルバーウィーク中の9月22日に現地を訪れたところ、高原の入口へと続く道には車がずらりと並んでいました。
正午ごろにはすでに200メートルほどの車の列ができており、午後4時頃のピークには700メートルにまで延びていました。渋滞を諦めてUターンする車も見られました。
【観光客】「40分待ってる。しんどいけど期待もある」
【観光客】「1時間くらい待ってますね。もう子供も暇しちゃうし、お腹も空いてきちゃうし。『渋滞はまっちゃったんでどうする?』『まあ行くしかないな』みたいな感じ」
10月、11月のハイシーズンになると、渋滞は高原からおよそ5キロの地点にまで及ぶということです。
■ 「自宅から出るのに2時間」住民生活への深刻な影響
地元住民にとって、この渋滞は単なる不便にとどまりません。
【地元住民】「特に土日・祝日は、もう車の停滞。もう嫌というぐらい。だから地元の人はなるだけ通らんようにしとる。夕方なんかは」
【地元住民】「うちから出ようと思ったら、2時間はかかんねん。(車が)下ってくるから、こっちが出られへん。もう待っとらなしゃあない」
さらに深刻なのが、緊急車両の通行が妨げられるリスクです。
【地元住民】「何年か前もあったけど、緊急車両入って来られへん。(観光客が)来てくれるのはいいんやけど、ありがたいことやから。(渋滞の)対応策がなかったら、みんな不安になる」
■ なぜこれほどの渋滞が起きるのか
渋滞問題に取り組む曽爾村は、その要因についてこう説明します。
【曽爾村観光係 橋詰昌宜さん】「時間帯が集中しているところが渋滞の原因かなと思います」
観光客の多くが夕暮れ時の高原を見ようと、午後になってから一斉に集中して訪れるため渋滞が発生。
加えて、曽爾高原は最寄り駅から45分ほどかかり、公共交通機関でのアクセスが不便なことから、観光客の多くがマイカーで訪れます。
また、山道が細く、運転に慣れていない観光客が多いことも渋滞を悪化させる要因だといいます。
こうした状況に対応するため、村は新たに200台ほど駐車できる駐車場を増設しました。駐車待ちの列が短くなることで、渋滞の緩和が期待されています。
■ 観光客が増えても「売り上げは伸びない」変わる客層と新たな問題
観光客の増加は、観光産業にとってプラスに働くはずです。しかし、地元の直売所からは意外な声が聞こえてきました。
【曽爾村観光振興公社 立花弘晶さん】「観光客の方がたくさん来ていただけることは、すごくうれしいことなんですが、お客さんが増えたから売り上げが伸びてる感じではないですね」
これまでファミリー層やシニア層が中心だった観光客は、最近SNSの影響で若い世代が増加しています。若い世代は”その場での体験”を重視する傾向があり、土産を購入する点数が少ないため、直売所が恩恵を受けにくい状況になっているといいます。
■電波が繋がりにくい状態に
さらに、人が大勢押し寄せることで別の問題も生じています。
【曽爾村観光振興公社 立花弘晶さん】「電子決済いろいろあるんですけれども、電波がなくなってしまって、決済できないという問題があります」
観光客の増加でネット回線を使う人が増え、電波が繋がりにくい状態に陥ります。現金を持たない若い世代も多く、電子決済ができずに困る場面も生じているといいます。
渋滞に客層の変化、そして電波障害…観光地化の波に戸惑う小さな村・曽爾村。地元住民からは、国や県を巻き込んだ対策の必要性を訴える声も上がっています。
【地元住民】「みんなで観光資源守りましょうってやるのはいいんやけど、呼ぶだけで『住民さん我慢してくださいね』っていうのは、ちょっとズレが」
美しい村の日常生活と観光産業を両立させる手立てはあるのでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」2026年9月23日放送)
