人口減少や少子高齢化が進む地域で、人はどのように幸せに暮らしていけるのか。8月、秋田・五城目町で県内外の大学生らが地域に滞在しながら課題解決に取り組むワークキャンプが開かれた。住民との交流やフィールドワークを通して見えてきたのは、人と人とのつながりが生み出す豊かさだった。
町に入り込み、地域の魅力を知る
ワークキャンプには、県内外の大学生と大学院生合わせて6人が参加した。
テーマは「ウェルビーイングな地域づくり」。
ウェルビーイングとは、身体・精神(心)・社会の3つの側面が満たされ、「よく生きている」と実感できる良好な状態が続いていることを意味する。つまり、健康で気持ちが安定し、良好な人間関係や社会的つながりのある状態を指す。
学生たちは2週間、五城目町に滞在しながら町を歩き、住民に話を聞き、盆踊りなどの伝統行事にも参加した。地域の課題を学ぶだけでなく、地域の人たちがどのような価値観で暮らしているのかを肌で感じ取っていった。
まず訪ねたのは、SNSを活用して町の魅力を発信する小学校教諭の小玉大也さんだ。
小玉さんはインスタグラムで飲食店やイベントを紹介していて、「五城目でやっていると知っている限りのものは全部撮りたい」と話す。様々な人とコミュニケーションを取りながら地域の情報を発信し、「多くの人に五城目を知ってもらいたい」という思いで活動を続けている。
学生たちは、こうした地道な情報発信が地域の魅力づくりを支える大切な取り組みの一つであることを学んだ。
外からの視点が地域を元気にする
一方で、地域の価値を見つめ直すためには、外からの目線も欠かせない。
五城目町では毎年、JICA海外協力隊として派遣される隊員がインターンシップを行っている。報告会では、隊員たちが町で取り組んできた活動について発表した。
隊員の1人は、以前勤務していた図書館での経験を生かしてプラネタリウムを開催。「子供たちに宇宙に興味を持ってもらい、楽しんでもらえたら」という思いで企画したという。
この話を聞いた国際教養大学(秋田市)1年の清水成菜さんは、「よそから入ってくることが必ずしも悪いことではない」と感じたという。
JICA隊員は県外出身の若者が中心で、町にはあまりいない人材だからこそ新しい発想や価値をもたらすことができる。清水さんは、そうした存在が地域にとって大きな強みになると実感したという。
「当たり前」にある人の温かさ
学生たちは活動期間中、同じ宿に泊まりながら議論を重ねた。長い歴史を誇る町伝統の人気イベント『朝市』を、どうすればさらに盛り上げられるかといったアイデアも話し合った。
そうした日々の中で強く印象に残ったのが、人と人との距離の近さだった。
慶応義塾大学4年の香野天晴さんは、五城目の人たちについて「みんなすごく幸せそうだった」と振り返る。外から来た自分にも自然に声をかけ、温かく受け入れてくれる。その姿勢は住民にとって特別なことではなく、ごく当たり前のものだった。
さらに香野さんは、人を肩書や立場で判断しない雰囲気にも魅力を感じたという。「物差しで人を見るという考え方そのものがあまりないからこそ生まれる価値観なのではないか」と話し、その自然体の関係性をうらやましく感じたという。
活動中には、住民から野菜やお菓子をもらうこともあった。そうした何気ないやりとりからも、この町に根付く助け合いの文化が伝わってきた。
学生たちが描いた「幸せな未来」
2週間のフィールドワークを終えた学生たちは、それぞれが考える「ウェルビーイングな暮らし」の姿を発表した。
香野さんが描いた未来は、「トトロが住むような五城目のような場所で、家族や友達と子供を遊ばせながら過ごすこと」。
豊かな自然や人とのつながりの中で暮らす時間こそ、自分にとって譲れない幸せだと気付いた。
また、清水さんは五城目町の強みを「助けを求めやすい人間関係」にあると捉えた。
人とのつながりが密だからこそ支え合うことができ、社会的な立場ではなく、一人一人が自分の幸せを大切にできる地域であってほしいと願う。
学生たちがたどり着いた答えは、人とのつながりや温かな交流こそが、地域のウェルビーイングを支える大切な土台だということだった。
外から訪れた若者たちの視点は、町の人たちにとっても、身近すぎて気付かなかった五城目の魅力を再発見する機会となったようだ。
(秋田テレビ)

