トラブル続出の末にことし5月をもって、大阪市で新規受付が停止となった「特区民泊」。
しかし、取材でみえてきたのは、民泊開業の”抜け道”として、「旅館業」の許可を得る動きでした。
外国人オーナーたちの間で注目を集めている「民泊」の新たな動きを徹底取材しました。
■ 特区民泊の新規受付殺到した駆け込み申請
ごみや騒音問題に加え、ビザ取得を目的とした申請が続出した特区民泊。
大阪市が今年5月に新規受付の停止を発表すると、駆け込み申請が殺到しました。
列に並んでいた申請者の一人は「特区民泊、申請しすぎやな。過剰しすぎや」と漏らし、「私たち外国人のせいかな」とも話しました。
これで問題は一段落するかと思われましたが、今、新たな“抜け道”が広まりつつあります。
■ マンションの一室で「旅館業」の許可を取得
取材班が向かったのは、道頓堀からほど近い日本橋駅徒歩すぐの場所にある物件です。
外国人の民泊物件の申請や運営代行を手がける行政書士の大久保太一さんが案内したのは、シンガポール在住のオーナーが所有する2LDK・約55平米の部屋。
大久保さんは「ここは旅館業の物件です。種別はホテルと一緒です」と説明し、年内の開業を目指していると話しました。
これまで民泊を開業するには、営業日数が年間180日に制限されている「新法民泊」か、「特区民泊」制度を利用するのが一般的でした。
しかし「特区民泊」はことし5月に受付が終了。その代わりに注目されているのが、マンションの一室で「旅館業」の許可を取得するという手法です。
(Q.事実上、特区民泊と同じことができる?)
【行政書士 大久保太一さん】「そうですね。ほぼ同じようなことができていますね」
■ なぜ“マンションの一室”で旅館の許可が下りるのか
旅館やホテルといえば、フロントでスタッフが常駐するのが一般的です。
しかしこの物件には、そのような設備はありません。
実は、大阪市が定めた“旅館業”の条例では、フロントは建物の中にある必要はありません。
トラブルの際にすぐ駆けつけられるよう、1キロ以内にフロントの役割を果たす場所を設ければよく、スタッフの常駐も求められていないのです。
大久保さんによると、この物件の管理事務所は「物件から約500メートルの場所に設けている」といいます。
さらに旅館業の許可を得れば、特区民泊ではできなかった「1泊のみの宿泊者」も受け入れられるなどのメリットもあり、外国人オーナーたちの間で注目を集めています。
■ 急増する申請件数、取材中にも電話が
大久保さんのもとには、5月まではほとんどなかった「旅館業」の申請依頼が今20件ほど寄せられており、このうち2割が外国人からの依頼です。
大阪市全体でも、旅館業の申請前に必要な届け出が7月に108件に急増しました。(6月は40件)
取材中にも大久保さんのもとへ電話が入りました。
電話をかけてきたのは中国人女性。大阪市内の分譲マンションを4戸購入しており、一度に4件の民泊を「旅館業」で始めようとしていて、大久保さんにアドバイスを求めました。
【大久保さん】「まず新法でやったほうがいいです」
【中国人オーナー】「新法で先にやって、旅館業」
大久保さんは旅館業の許可が下りるまでの間、「新法民泊」として営業することをアドバイスしました。
そして値段交渉へ。
【大久保さん】「3部屋で15万(円)とかだったら、私たちができるんですけど」
【中国人オーナー】「えー先生たっかいわー」
■ 中国の富裕層の間で広まる“旅館業民泊”
取材班はさらに、中国本土の客たちに民泊物件を売却している不動産会社にも接触しました。
中国人向けに不動産を販売する楊さんが見せてくれたのは、13億円で売却を検討している旅館業向けの民泊物件です。
高額に思えますが、円安の影響で北京の不動産の半額ほどでお買い得なのだそうです。
一棟丸ごと売るほうが人気を集めるため、賃貸物件の入居者には「応援金」として退去費用を補助することもあるといいます。
中国の富裕層の間では、「旅館業」での民泊開業がすでに広まっている実態が明らかになりました。
【楊さん】「たまにルール守らない人もたまにいるけど、基本はみんな守ってやってます。日本で不安の方も増えてますけど、これからもっと気をつけて、安心するようにやります」
■ 住民の不安と行政の対応
旅館業での民泊が増える地域では、住民から不安の声が上がっています。
「新規の人ができないとテレビで見て思ったから、結局それができたのか」と話す住民もいれば、「隣の空き家がそうなると、親目線で言うと心配かな」という声もありました。
こうした状況を受け、横山市長は「しっかり大阪の魅力を発信しつつも、住民の皆さんが不安を感じないような施策について進めていきたい」と述べ、旅館業法の規制を強化する条例改正を行う方針を表明しました。
管理者の常駐や、長屋での民泊禁止などの改正を目指しています。
■ 「現場からの悲鳴」 専門家が指摘する問題の根
元テレビ朝日アナウンサーで弁護士の西脇亨輔氏が背景を解説しました。
【西脇亨輔氏】「この規制緩和は2018年の法改正から始まりました。2020年に開催予定の東京オリンピックに向けて、海外からの観光客のために一気に緩和していこうという勢いで決まった。
実際にやってみたら、マナーの問題もありますし、投資・マネーゲームの対象になっていって、どんどん街の家賃や不動産が高くなっていく。普通に働いている人が住めなくなっていくという状況もある」
さらに、東京・墨田区ではすでにことし4月から旅館業について常駐スタッフを義務付けるなどの規制に踏み切っていることを挙げ、「大阪市も乗り出していくとなると、地元の動きは現場からの悲鳴だと思う。これを国がどう考えるのかは、法律のあり方も含めて検討していかなきゃいけない」と述べました。
イタチごっこが続く民泊問題。住民の不安を解消するために、抜け道を防ぐことができるのか。行政と国の動向が問われています。
(関西テレビ「newsランナー」2026年9月4日放送)
