8月30日に行われる北海道マラソン2026。プロランナーとしてスタートラインに立つのが、サンベルクスの吉田響(23)だ。創価大時代には箱根駅伝2区で日本人歴代最高記録を打ち立て、実業団入り後もニューイヤー駅伝で22人抜きを演じた。2月の大阪マラソンでは初マラソンで2時間9分35秒。前半から果敢に先頭集団を引っ張る走りは、多くのファンの記憶に刻まれた。狙うのは北海道マラソンで日本人3位以内かつ2時間12分以内でフィニッシュし、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)出場権を獲得すること。そして2028年ロサンゼルス五輪への道を切り開くことだ。試走のため札幌入りした吉田に、北海道の印象を聞いた。
MGC出場権へ「確実に獲得するため」
――北海道の印象は。
「ご飯がおいしいというところと、夏場は涼しいので走りやすいというイメージがあります。合宿や函館マラソンのハーフに、大学4年の時に走らせていただきました」
――北海道らしいものは食べましたか
「朝はホテルのバイキングをいただいて、北海道名物をいっぱいいただきました。海鮮やサーモンもいっぱいあって、カニ汁もあったのでいただきました」
――今回、北海道マラソンに出場を決めた理由は。
「確実に、大阪マラソンで獲得できなかったMGCへの挑戦権を獲得するために、北海道マラソンに出ようと決めました」
アンケートに記した目標タイムは2時間7分59秒、目標順位は1位。大会新記録と優勝を見据えている。
「2時間8分台、7分台を狙って大会新、そして優勝を狙っていきたいという気持ちがあります。そこのペース設定に沿った走りをしていければと思います」
当日の状況に応じ、複数のレースプランを用意しているという。
「いろんなパターンを想定してコーチと考えています。当日の気象条件や自分の状態に合わせて臨機応変に変え、皆さんをワクワクさせるような走りができるように頑張りたいです」

大阪で得た課題を北海道で克服する
大阪マラソンでは、前半からペースメーカーの前に出る積極的な走りで注目を集めた。一方で終盤に失速。その経験を、北海道での走りにつなげようとしている。
「前回の大阪マラソンではだいぶ攻めた走りをしましたが、そこで大きな課題が見えてきました。その課題を克服して、さらにレベルアップしていける北海道マラソンを目指したいと思っています」
――課題克服のための具体策は。
「ペース配分というところと、北海道マラソンはかなり日差しが強いレースになりますので、水分補給や日差しの対策をしっかりして、後半もしっかり持つようなレースを展開したいです」
大阪では35キロ以降にペースを落とした。低血糖や脱水への対策として、日頃から食事と水分補給を見直してきた。
「後半7キロのペースダウンに関しては、低血糖や脱水の症状が出て急激にペースが落ちてしまったところがありました。日頃から水分やミネラルを気をつけていますし、普段の食事も気をつけて、ご飯を食べる量を多くし、より体に水分を多く取り込めるような体作りを目指してきました」
起伏のある山道を走るトレーニングも取り入れている。
「足元も不安定で、使う筋肉も変わってきます。普段使わない筋肉を使って走るからこそ、全く違った良いトレーニングができています。相乗効果があると捉えています」

「暑い方が得意」日差しと風への対応が鍵
真夏のマラソンにも、不安より期待が大きい。
「どちらかというと、寒いよりも暑い方が得意です。暑さによる不安というより、むしろ夏のレースを走れるというワクワク、楽しみでいっぱいです」
さらに、「『暑いのが得意』という武器を生かして頑張りたい」と意気込んだ。
先輩たちからは、コースの厳しさも聞いている。
「海沿いの方がだいぶ風が強いともお伺いしていますし、何よりも日差しがずっと照りつけていて、暑さよりもそっちの方がきついと伺っています。そういったところもしっかり対策して、後半にバテないようにしていきたいです」
コースについては「前半はアップダウンが強い」としながらも、攻略の手応えを口にする。
「大きなアップダウンではないと思うので、比較的走りやすいコースだと捉えています。暑さ対策をしっかりできれば、良いペースで刻んで走っていけると思います」
大阪マラソンでは、全身に貼ったシールも話題になった。顔周りにまでシールを貼った理由について、吉田は筋肉の張りを抑えるためだったと説明する。
「ニューイヤー駅伝が終わってから大阪マラソンまで、どうしても筋肉の芯の硬さが抜けづらい状態が続いていました。後半に筋肉が固まってしまうと、反発を得られずにうまく走れなくなったり、フォームが崩れたりするので、そこを予防するために貼らせていただきました」
「顔周りもすごく大事です。大阪の時は貼り過ぎてしまったのですが、筋肉は上から引っ張られてしまうので、顔や首が張ってしまうと、そこから肩、腰、足というふうに全身に響いてしまう。そういった張りを軽減するために、足だけでなく上半身や顔にも貼ったという経緯があります」
――北海道でも同じスタイルで行きますか。
「シールの枚数は当日のコンディションによります」

「リミッターを外して走れる」爆発力
2026年のニューイヤー駅伝で22人抜きを演じ、区間賞と区間新記録を達成した。
――爆発力の秘訣は。
「自分の強みとして、リミッターを外して走れるというのがあります。それが試合だけでなく、普段の練習でもしっかり追い込んで走れるということです。そういった練習を日頃やっているからこそ、本番でも爆発力のある走りができました」
――目立つのは好きですか。
「陸上に限らず、いろいろな業界でどんどんレベルが上がっています。普通の戦い方をしているとなかなか勝てない、難しいところがあるので、果敢なチャレンジをしていかないと、自分が目指す目標や夢には届かないと思います。普段の練習や大会でも、型にとらわれない走り、攻めた走りをしています」
――ランナーが注目されることについては、どう考えますか。
「大阪マラソンの走りは、結果として『目立つ』という形になりましたが、マラソンは素晴らしい競技です。その魅力を自分という媒体を通して発信していけたら、とても嬉しいです。目立つというより、自分の力を最大限発揮する走りは常に意識しています」
北海道出身で大会への思いも深い田中正直総監督をはじめ、多くの関係者への感謝も忘れない。
「田中総監督をはじめ、いろいろな方の尽力のおかげで今回、招待選手として呼んでいただきました。そこに恥じぬ走りをしていきたいと思います」

MGC、そしてロサンゼルス五輪へ
大学1年時から出場レースを絞ってきた吉田は、レースに出られる喜びが大きく、本番はほとんど緊張しなかったという。ただし、五輪代表選考に直結するMGCは別物だ。
「やっぱり緊張します。MGCという1回の大会で、オリンピックに出場できるかどうかが決まってしまうので、すごく緊張する大会だと思います」
――MGCの先にある五輪については。
「オリンピックは、まだまだ日本人選手がメダルを取るというのが想像しづらい世界だと思います。そこに自分が一歩踏み出し、チャレンジしていける選手になれるように頑張っていきたい」
――日本のマラソン界を背負う気持ちはありますか。
「年々、選手も強くなっていますが、世界へ一歩を踏み出す者がいるとしたら、自分が一番に先頭を切り開いて走っていきたいという気持ちがあります。そこに向けて日々練習しています」
――これから続くキャリアの中で、一人のランナーとして最大の目標は。
「オリンピックのフルマラソンでメダルを獲得することが自分の目標です。そこに向けた走り、その第一歩を北海道マラソンで踏みしめていきたいです」
プロランナーとしての在り方についても、明確な思いがある。
「走りで結果を残すのはもちろんですが、スポーツは見られるものです。より多くの人に陸上・マラソンの魅力を知っていただき、夢や希望を、自分がいろいろな方にもらったように与えていけるランナーになりたいです。恩返ししていけるランナーになれるように頑張ります」

「絶対、響が勝つなと思わせたい」
――沿道やテレビで応援する人々に、どのような姿を見せたいですか。
「まずはMGC獲得、そして優勝を目標にしているので、『絶対、響が勝つな』と、最初から最後までワクワクしていただけるような走りを皆さんにお届けできるように頑張りたいです」
さらに、こう続けた。
「陸上でいただいた恩は陸上で恩返ししたいという気持ちがあります。自分の活躍を通してより多くの人に喜んでいただきたいですし、一人でも多くの人に陸上・マラソンの魅力を広げたいという気持ちが強いです。その思いを燃料にして、日々の練習も頑張っています」
座右の銘は「失敗は糧・傷は勲章・混ぜたら未来の起爆剤」。2028年ロサンゼルス五輪を「日本マラソン界の歴史を変える場所」と位置付ける吉田響。北海道マラソンはその第一歩となる。
<放送予定>
「カネカスポーツスペシャル北海道マラソン2026」
8月30日(日) 朝8時25分~(UHB・北海道ローカル)
8月30日(日) 朝8時28分~(BSフジ)
<ゲスト・解説>
ハリー杉山(テイクオフ)
増田明美(スポーツジャーナリスト)
渡辺康幸(住友電工陸上競技部監督)


