京都を代表するお盆の伝統行事といえば「五山の送り火」だが…。
実はいま、存続の危機に立たされているのだ。
物価高騰などで運営が限界を迎えつつある“夏の風物詩”。
同じような危機は関西各地でも起こっている。
伝統を絶やさないために選んだ「新たな方法」を取材した。
■「現状維持すら困難」五山の送り火が存続のピンチに
毎年8月16日午後8時、京都の夜の山には5つの文字や形が浮かび上がる。
京都を代表するお盆の伝統行事「五山の送り火」だ。
起源は平安時代から江戸時代まで諸説あるが、先祖の霊を送り出す行事として代々受け継がれてきた。
ところがことし、五山送り火連合会が「現状維持すら困難な状況」として、初めてクラウドファンディングを始めたのだ。
一体何が起きているのだろうか。

■地元住民の「無償活動」で支えられてきた実態
「大文字の送り火」は、元々、山のふもとに住む人たちが代々続けてきた地元の行事だった。
大文字保存会・長谷川英文理事長:ここで生まれたら、自分で歩けるようになったら必然的に親の後ろについて。送り火は家族全員でやらないと人手が足りないから。
五山の送り火では、山の中に設けられた「火床(ひどこ)」の上で、名前や無病息災などの願いを書いた薪や護摩木(ごまぎ)を燃やして文字などを浮かび上がらせる。
その準備には2万本以上の薪などを担ぎ、標高約465メートルの山道を登る必要がある。
運営や管理は基本的に地元の人たちの無償の活動によって支えられてきた。
寄付金や護摩木の売り上げもありますが十分ではなく、なんとか運営してきたそうだ。

■土台の火床崩落も修理開始までに“約1年”
そんな中、深刻な問題が起こった。
去年6月、火床のうち3基の土台部分が崩落したのだ。
往復1時間以上かかる山道を歩いて資材を運ばなければならないうえ、資材高騰も重なり、工事を引き受ける業者が決まるまでに約1年を要した。
現在は急ピッチで復旧作業が進められている。
大文字保存会・長谷川英文理事長:五山がついてこその『京都の火祭』と思っているので。他人任せでなく自分たちでどう資金的にやっていけばいいんだと。どうやっていけば資材がうまく入るかも含めて並行的にやっていく。
存続の危機を乗り越えるために、クラウドファウンディングを決断したのだ。

■“物価高”で花火大会が中止に
同様の課題は、関西各地の夏祭りでも発生している。
兵庫県西脇市の播州成田山夏祭りでは例年、約200発の花火が祭りを彩ってきたが、ことしは中止に。
主催者によると、これまで寄付や企業の協賛で運営費を賄ってきたものの、最近は花火代や警備費が高騰していた。
今後も夏祭りを継続していくための手段として、ことしは花火を中止にしたということだ。

■花火大会の「約4分の1」が過去5年以内に中止・規模縮小
去年公表された「全国花火大会白書」によると、花火大会の開催費用は過去10年で平均34%も高騰している。
全国461の花火大会のうち、約4分の1が過去5年の間に中止、または規模の縮小を余儀なくされた。
このまま花火大会は消滅していくのだろうか。

■「有料観覧席」は約8割の花火大会が導入
こうした状況を乗り越えようとしている花火大会もある。
和歌山県田辺市では、毎年10月に全長1キロに渡る「パノラマ花火」が魅力の「田辺花火大会」を開催している。
これまで市民からの募金や企業の協賛で運営されてきたが、物価高騰のあおりを受けてことしは規模縮小も検討された。
そこで選んだ新たな試みが「有料観覧席」の導入だ。
初期投資を抑えるため、活用したのは浜辺にもともとある石段だ。
イスなどの用意はないが、1万円で石段のスペースと近くの駐車場の利用権が手に入る。
すでに定員を超える応募があり、来年以降はイスを設置するなどサービスの充実も検討するそうだ。
帝国データバンクによると、この夏に開催される主要な106の花火大会のうち、約8割が有料席を導入しているとのことだ。

■専門家「伝統行事を続けるには必要な手法」
文化の継承などに詳しい東京藝術大学の太下義之客員教授は、クラウドファンディングや有料化の流れを「伝統行事を続けるには必要な手法」と指摘する。
東京藝術大学・太下義之客員教授:もともと無料といっても誰か(企業など)が必ず支えていたわけです。でも人口減少がある中でだんだん厳しくなってきている。誰かがやっぱりそれを負担しなきゃいけないわけですよね。たぶんその模索は色んなパターンが今後出てくると思います。
誰かと過ごした景色を次の世代につなげるために、私たち一人ひとりの手で夏の風景を守っていく必要があるのかもしれない。
(関西テレビ「newsランナー」2026年8月11日放送)


