元刑事の女性警察官が“被害者に寄り添う理由”
事件や事故の最前線で捜査を行う警察。
犯人を逮捕し事件や事故の概要を解明するだけでなく、警察は今、「被害者支援」の仕事にも力を入れている。
愛媛県警犯罪被害者支援室課長補佐の藤久貴子警部は、今年4月に支援室へ配属された元刑事だ。
テレビ愛媛で毎週火曜日に放送中のドラマ「さよならノワール」の主人公・黒木夏美に自身を重ね、日々職務にまい進する藤久警部。
その原点には、刑事時代の“忘れられない光景”があった。
「まるで私みたいだなと思いました」
テレビ愛媛で毎週火曜午後9時から放送中のドラマ『さよならノワール』。
警視庁の犯罪被害者支援室に所属する元刑事と心理学者が、犯罪被害者や遺族らが再び人生の歩みを進めることができるように寄り添い、支援していく警察ヒューマンドラマだ。
主人公の元暴力団対策係の刑事“黒木夏海”を演じるのは、俳優の小池栄子さん。
実は今、愛媛県警の犯罪被害者支援室に「小池さん演じる主人公」と同じように活躍する一人の女性警察官がいる。
県警犯罪被害者支援室課長補佐・藤久貴子警部:
Q.ドラマ「さよならノワール」を見てどう思った?
「正直に言っていいですか?私だなと思いました、似ているなと思いました。“雰囲気と設定だけ”は私に似ているなと思いましたけど、その他は全然似ていませんので、そこは謝っておきます」
少し控えめな“愛媛県警の小池栄子”こと、犯罪被害者支援室課長補佐の藤久貴子警部だ。

警察以外にも各機関が連携し“被害者を支援”
藤久さんは1998年に県警に採用された。
県警犯罪被害者支援室・藤久警部:
「私は刑事になりたかったから警察官になりました。刑事になって、被疑者の取り調べに従事したかった」
希望がかない、組織犯罪対策課など刑事畑の現場一筋で歩んできた藤久さん。
今年4月に『犯罪被害者支援室』に配属された。
愛媛県内には、県警以外にも様々な被害者支援機関がある。
今年4月、これら複数の機関が連携し途切れのない支援する新たな体制『愛媛県犯罪被害者に対する多機関連携支援』が構築されるなど、事件や事故の被害者や遺族をサポートする対応が強化されている。

“被害者に最初に接触”警察が果たす支援の役割とは
様々な支援機関の中でも、警察は被害者と最初に接触するため「初動」の支援を担う重要な役割だ。
事件が起きたとき、藤久さんたち犯罪被害者支援室がどのように支援を行うのか。
今回、架空の殺人事件を想定し、遺族に対する支援を再現してもらった。
刑事部門の捜査員から聞き取りを行い、被害者や遺族の状況をいち早く把握。どのような支援が必要か的確に考え出していく。
犯罪被害者支援室は、このほか「現場検証の立ち会い」や「裁判の傍聴」に付き添ったり、葬儀の際のマスコミ対応を務めたりと被害者のニーズに合わせた支援を行っている。
実は、愛媛県警が被害者支援の一環として全国で初めて取り入れたプログラムがある。
それが『ドッグセラピー』だ。
藤久警部:
Q.ドッグセラピーについて
「セラピー犬に自分の心の内を話したり、あとは撫でたり、抱っこしたりして温かみ感じることで、だんだん被害者の顔つきが変わってくるので。傷ついた心を癒すということではセラピー犬はすごく重要な存在だと思います」

忘れられない兄弟の姿
藤久さんには刑事時代の忘れられない場面がある。
藤久警部:
Q.自分の刑事生活の中で印象深かった出来事は?
「20年位前なんですけど、幼い兄弟が児童相談所に預かってもらうことがあった。下の子が不安そうな顔しているんですけど、上の子が下の子の手をギュッと握って、口は一文字なんですよ。手をギュッと握って下の子の手を引いて施設の中に入っていったんですよ。
今も思い出したら涙が出るほど、その子の顔が忘れられなくて、子供たちにあんな顔をさせたらだめだと思って、私が被害者支援をやっている上での“自分自身の核”になっているのがその出来事」

犯罪被害者支援のシンボルマーク「ギュっとちゃん」
藤久さんが、支援の取り組みを広く知ってもらおうと、取り組んでいるのが…
藤久警部:
Q.今何を作っている?
「ギュっとちゃん人形です」
警察庁が作った犯罪被害者支援のシンボルマーク「ギュっとちゃん」人形を模した人形を手作りしている。
藤久警部:
「講演会場に行ったら、人形を抱いたまま離してくれない子とかもいたりします」
藤久警部は得意の裁縫を生かして一針一針手作りし、広報イベントなどで活用している。

“捜査”と“被害者支援”で違う被害者への対応を心がけて
支援室の仕事に全力投球の藤久さんですが、配属当初はどうしても捜査を優先する“長年の刑事の癖”が抜けなかったという。
藤久警部:
「刑事の頃は自分たちが必要とする情報を得たい。相手の供述の確認もしながら話を聴いてしまう。刑事をしていたので、癖になってしまっている。今、常に心掛けているのは、相手のペースで、相手に寄り添って、相手を受け入れてじっくり相手の話を寄り添いながら聴くこと」
そんな藤久さんも注目しているドラマが放送中の「さよならノワール」だ。
藤久警部:
Q.ドラマの感想は?
「必ずドラマの最後に被害者支援センターに被害者を引き継ぐ、一連の流れが構成に入っていたので、ちょっと画期的だし、感心して見ていました」
今後、藤久さんが目指す『被害者支援』とは。
藤久警部:
「ニュースを目にしたときにそこには被害者がいて、被害者はそこから先ずっと辛い状況が待っているんだよというところまで思いを巡らせてほしい。その時に、自分も何かできる支援はないのかなというのを考えてみてほしい」
県警犯罪被害者支援室 藤久貴子警部。
優しい視線のその先には、今も『あの日の幼い兄弟』の姿が浮かぶ。


