プレスリリース配信元:株式会社帝国データバンク
事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2026年)

株式会社帝国データバンクは、全国2万2,749社を対象に、「2026年の事業継続計画(BCP)」に対するアンケート調査を実施した。なお、事業継続計画(BCP)に関する企業の意識調査は、2016年以降、毎年実施し今回で11回目。
SUMMARY
企業の事業継続計画(BCP)の策定率は21.4%となり、前年から1.0ポイント増加した。一方で未策定の企業は40.7%で依然として4割を超えている。また、「大企業」のBCP策定率が39.9%であるのに対し、「中小企業」は18.3%にとどまり、規模間格差は依然として大きい。背景には、スキル・人材・時間といった基本的な経営資源の不足があり、単なる意識の問題ではなく、構造的な課題が導入を阻む要因になっていると考えられる。
調査期間:2026年5月18日~5月31日(インターネット調査)
調査対象:全国2万2,749社、有効回答企業数は1万521社(回答率46.2%)
BCP策定企業21.4%で過去最高も、依然4割が未策定
自社における事業継続計画(以下、BCP)の策定状況について尋ねたところ、「策定している」企業(以下、BCP策定率)は21.4%と前回調査(2025年5月)から1.0ポイント増加し、過去最高となった。一方で、「策定していない」企業は40.7%(前年比0.8ポイント減)と、依然として4割を超えている。また、「策定している」(21.4%)、「現在、策定中」(7.2%、同0.2ポイント減)、「策定を検討している」(21.9%、同0.1ポイント減)を合わせた『策定意向あり』は50.5%に達し、半数の企業が導入に前向きな姿勢を示している。
BCP策定率を規模別にみると、「大企業」が39.9%(同1.2ポイント増)であるのに対し、「中小企業」は18.3%(同1.2ポイント増)と20ポイント以上の差で推移している。ともに上昇傾向にあるものの、規模間格差のある状況は継続している。中小企業からは、「必要性は感じているが、目先の業務に忙殺されている」(建設、岐阜県)などの声が寄せられ、BCPの策定に踏み出せないといった課題が存在することがうかがえる。企業単独での取り組みに限界を感じるケースは決して少数の意見ではなく、BCPの前提が個社対応からサプライチェーン全体での対応に移行しつつあることを示している。さらに、日々の業務で人手・時間に余裕がなく、実効性のある計画にまで落とし込む負担の大きさも策定がなかなか進まない要因の一つとなっている。
都道府県別にみると、『策定意向あり』の割合は「富山」(62.5%、全国比+12.0ポイント)と「高知」(61.7%、同+11.2ポイント)が6割超となった。以下、「香川」(59.5%、同+9.0ポイント)、「静岡」(58.3%、同+7.8ポイント)など、南海トラフ地震の被害が大きいと想定される地域や能登半島地震のあった北陸地域などで比較的BCPへの関心が高い傾向がみられる。企業からは、「BCP策定により、今後の対策方針を明確化できる」(建設、静岡県)、「コロナ禍や震災を経て、備えておく重要性を実感した」(旅館・ホテル、富山県)、「具体的な整備は道半ばの状況だが、自然災害や感染症拡大、原材料供給の途絶などを想定し、BCP策定を検討している」(飲食料品・飼料製造、愛媛県)といった声が聞かれた。

想定リスクは「自然災害」が最多 備えは、初動対応とIT基盤の維持を重視
BCPの『策定意向あり』とする企業に対して、事業の継続が困難になると想定しているリスクを尋ねたところ、地震や風水害、噴火などの「自然災害」が67.8%(前年比3.0ポイント減)で最も高かった(複数回答、以下同)。次いで、「情報セキュリティ上のリスク」(50.2%、同4.1ポイント増)が半数を超え、「設備の故障」(37.9%、同1.1ポイント減)、インフルエンザ、新型ウイルスなどの「感染症」(37.3%、同3.3ポイント減)、電気・水道・ガスなどの「インフラの寸断」(36.8%、同2.2ポイント減)や供給制約などを含む「物流の混乱」(36.5%、同9.0ポイント増)と続いた。企業を取り巻くリスクは、災害といった特定のリスクにとどまらず、コロナ禍による経済活動の停滞や、アサヒグループHDやアスクルなど近年相次ぐ大手企業へのサイバー攻撃、中東情勢の悪化など、性質の異なるリスクが同時または連鎖的に発生することを前提に捉える必要がある。BCPの策定は単一リスクへの対応ではなく、複数リスクを見据えた対応力が求められる。
さらに、事業が中断するリスクに備えて実施あるいは検討している内容を尋ねたところ、「従業員の安否確認手段の整備」(65.3%、同3.0ポイント減)、「情報システムのバックアップ」(59.5%、同0.4ポイント減)が上位となり、安全確認などの初動対応とIT基盤の維持を重視する傾向がみられる(複数回答、以下同)。特に、安否確認は意思決定や現場対応の出発点となり、情報システムのバックアップは業務停止期間の最短化やデータ損失リスクの回避に直結する。また、「調達先・仕入先の分散」(42.1%、同5.2ポイント増)、「生産・物流拠点の分散」(15.6%、同5.8ポイント増)のほか、想定リスクの「物流の混乱」の大幅な上昇が示すように、中東情勢の不安定化や供給制約の長期化を背景に、企業の危機意識が地政学的リスクへと広がっていることが推察できる。単一の供給先に依存した場合、災害や地政学的リスクによって供給が途絶する可能性が高く、複数の調達・生産ルートを確保することで事業継続性を高める狙いがある。

スキル・人材・時間の不足が企業の共通課題に
BCPを「策定していない」企業にその理由を尋ねたところ、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が4 2.2%でトップとなった(複数回答、以下同)。次いで、「策定する人材を確保できない」(33.5%)、「策定する時間を確保できない」(28.1%)が続いた。これらは企業規模を問わず共通する課題であり、BCP未策定の背景には、意識の問題ではなく、経営資源の不足に起因する構造的課題となっている。BCPの策定にはリスク分析や復旧手順の設計など専門性の高い知識が求められる一方で、これらを担える人材が社内に不足していることが背景にある。加えて、多くの企業では日常業務の優先度が高く、専任担当を置けないことなどから、策定業務に十分な時間を割けない実態も影響している。

まとめ
本調査では、BCP策定率が21.4%と過去最高となり上昇傾向にあるものの、依然として未策定の企業が4割を占め、特に中小企業では対応の遅れが顕著であることが明らかになった。この背景には、スキル・人材・時間という基本的な経営資源の不足があり、単なる意識の問題ではなく、構造的な課題が導入を阻む要因となっていることが示された。
今後、企業のBCP策定率の上昇を目指すにあたって重要なことは、BCPを「大規模な計画」として、初めから完璧なBCPの策定を目指さず、段階的な導入とリスク優先度に基づく現実的な対策から取り組んでいくことだと考えられる。例えば、安否確認手段の整備やデータバックアップ、代替調達先の確保といったシンプルな施策から着手し、自社にとって影響の大きいリスク領域に拡大していくことが現実的かつ効果的であろう。また、積極駅に外部専門家の活用や業界団体のガイドラインを利用することも実務的な選択肢となるだろう。
近年では、BCPは単なる防災対策ではなく、企業の持続可能性と競争力に寄与する経営課題になりつつある。また、サプライチェーンの混乱やサイバー攻撃が頻発するなか、災害以外のリスクへの対応も重要性を増しており、BCPの未整備は信用リスクにもなり得る。企業にはBCPを「備えるか否か」ではなく、「どの水準でいつまでに備えるか」という実務レベルでの具体的な行動が求められている。
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データ提供 PR TIMES
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