棚田を守る73歳の挑戦

人口減少や高齢化などで耕作放棄地が増えるなか、昔ながらの里山の景観を次の世代に残そうと奮闘するコメ農家がいる。

目指すのは「世界一の米作り」。

その思いは周囲に浸透し広がりつつある。

美しい棚田の風景は失われつつある

美しい棚田が広がる東温市河之内。

昼夜の寒暖差と石鎚連峰がもたらす清らかな水に育まれ、おいしいコメができると評判だ。

6月7日、棚田のオーナー制度に参加している家族連れなどが田植えを行った。

参加者:
「炊いてる時の匂いが全然違ってて、ご飯炊いてる時の炊飯器のにおい」
「すごい粒がしっかりしてるし、一粒一粒味があってすごいおいしいです」

坂本自然農場・穂田琉の代表・坂本憲俊さん・73歳。

14年前から棚田でのコメ作りにこだわり、独自に取り組んできた。

坂本憲俊さん:
「(棚田は)やはり日本の原風景ですよ。日本にとって美しい風景とは何かと。これはまぎれもなく水田風景なんですよ。本当に素晴らしいところなんですけど、自然に囲まれてですね。なのになぜ衰退するのかと」

過疎と高齢化が進むなか、美しい棚田の風景は失われつつある。

このままでは地域そのものがなくなってしまうのではないか。その危機感が坂本さんを突き動かした。

棚田でのコメ作りに取り組む坂本さん
棚田でのコメ作りに取り組む坂本さん
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58歳で早期退職しコメ作りの世界へ

坂本さんは、東温市役所を58歳で早期退職。本格的にコメ作りの世界に飛び込んた。

坂本さん:
「この土地を生かすために何が必要かと思った時に、やはりコメだと思ったわけですよね。そのコメがこの風景を作っているんだと」

ただ、そこには日本のコメ農家が抱える大きな問題がー。

坂本さん:
「コメの販売価格の、単純に言えば3倍ぐらい経費がいるような時代ですから、この風景を保つために作り続けられるコメは、どういうコメなのかと地域が持続するコメ、これは本当にブランド米しかないだろうと」

高くてもみんなが喜んで買ってくれるコメとはなにかー。

坂本さんの挑戦が始まった。

「本当にブランド米しかないだろうと」
「本当にブランド米しかないだろうと」

自然栽培のコメ

土づくりから見直し、10年ほどかけてたどり着いたのが、極限まで農薬を減らした特別栽培米と肥料や農薬を一切使わない自然栽培のコメだった。

こだわりを追求したコメは美味しさを競う国際大会で2年連続金賞を受賞するなど高く評価されている。

値段は1キロ1600円から、最高級米は5500円と少々高額ですが、それに見合った価値のある自慢のコメだ。

ブランド米の名前にも熱い思いが詰まっている。

きれいな水が流れるところだからこそ現れるあの生き物「ホタル」だ。

ブランド米の名前「穂田琉」(ほたる)は、守り残したい風景のひとつとして名付けられた。

ブランド米の名前「穂田琉」
ブランド米の名前「穂田琉」

草取りなどの負担が大きな課題

坂本さんの妻・久子さん:
「(雑草を)取っても取ってもあれ?この間取ったのに、っていうまた次の草が生えとるんで」

40枚の水田3ヘクタールあまりで約1トンの米を作っている坂本さん。

家族の手を借りながら米作りをしているが、農薬に頼らない分、草取りなどの負担が大きな課題だ。

そこで坂本さんは、外から人の手を借りる「援農」にも取り組んできた。

支援者:
「お米がどうやってできたかいうのを、ほんの一部ですけど、体験できるということは感謝して食することができるような気がします」
「自分で関わったやつって、おいしいやないですか、そういうこと」

農作業を手伝ってくれる支援者は、今では20人を超えた。

作る人だけではなく食べる人、支える人。

それぞれが棚田に集い、この場所はふるさとのような存在になっていく。

雑草取りに勤しむ妻・久子さん
雑草取りに勤しむ妻・久子さん

後に繋ぐために母体を作って

坂本さん:
「結構いい歳にもなってきたしですね、やっぱり後に繋ぐために、母体をちゃんと作っておいて、継承できるような形を作りたいなっていうのと、やはり外部人材の受け入れですよね。この地域の農業を続けていくためにも、そういうことが必要」

坂本さんは2025年12月、販売強化と就農支援を目的に株式会社穂田琉を設立。個人経営の農業から広く、次につないでいく仕組み作りへと舵を切った。

坂本さん:
「なんかすごく共通するものを感じたんですよね、目指すものとかですね。なんか感じたんですよね」

株式会社穂田琉を設立
株式会社穂田琉を設立

きっかけは東京から移住してきた人との出会い

きっかけとなったのが、東京から東温市に移住してきた坂本和幸さんとの出会いだった。

東京から東温市に移住・坂本和幸さん:
「ゆくゆくは落ち着いた地方都市とか、そういったところで腰を据えて暮らしたいなっていうイメージがずっとありまして、こんなところで農業できたら最高じゃんって思ったんですよ」

2025年5月、偶然、坂本さんの存在を知り、農業見習いとして米作りを学び始めた和幸さん。

デザインや会社経営の経験を持ち、坂本さんの挑戦を支える頼もしい参謀だ。

東温市に移住・坂本和幸さん:
「『効率よりも、命の循環を大事にする』っていう視点で、物事を考えたいなと思っていて。それって今の日本にとっても、大事な事なんじゃないかなって。それを大事に思っている人間が、ここで何かをできればそれで僕は十分かなっていう風に思ってます」

東京から移住してきた坂本和幸さん
東京から移住してきた坂本和幸さん

身近な家族の心にもしっかりと根を張っている

さらに坂本さんの思いは、身近な家族の心にもしっかりと根を張っている。

坂本さんの次女・はる香さん(38):
「米ぬかふりかけっていうのを作っていて、これが自然栽培のお米じゃないと食べれないっていうので、すごいっていうのをみなさんから声をもらって、それで商品化になったんですけど、いま力入れてやってます」

社員として営業を任された娘のはる香さんもまた父の作る米を、未来へ繋ごうとしている。

次女・はる香さん:
「米の時期になったら田植えもするし、稲刈りをするのが当たり前で育ったので、自然に父の取り組みに共感できたっていうか。その思いを引き継いで、今後もやっていきたいなと思っています」

多くの思いがさらなる米作りへの情熱につながる。

坂本さん:
「あんたの米を食べたらいい風景が見えてきたよ、またあの美しい風景を見に行くよと、そんなことを言われるような風景に負けない米を作りたい。本当の世界一と認められるような存在になりたい」

棚田はそこに携わる人たちの写し鏡。

美しい風景を作る米作りは人と人を結びつけ、新たな苗として、この土地に根付いていく。

多くの思いがさらなる米作りへ
多くの思いがさらなる米作りへ
テレビ愛媛
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