6月22日は、「らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の日」です。国の誤ったハンセン病隔離政策の根拠となった「らい予防法」が廃止され、2026年で30年。療養所の入所者が「生きていて良かった」と思えるように・・・。全国の入所者の代表として活動を続ける84歳の男性がいます。
◆「それは僕の仕事」と全国を飛び回る84歳 活動の根底にあるものとは
屋猛司さん(84)。瀬戸内市のハンセン病療養所、邑久光明園の入所者自治会長です。岡山から宮城に向け出発します。
〇仙台駅前にて
(邑久光明園入所者自治会 屋猛司会長)
「将来構想・永続化問題、将来構想はどの辺まで進んでいるのか、永続化に向けて地域自治体とどれくらい進んでいるのか、確認しにいく。(Q:全国飛び回って大変じゃないですか?)それは僕の仕事だから仕方ない」
◆屋さんが就任した「全療協」会長 その役割とは
屋さんは3年前、全国の療養所の入所者らでつくる「全療協」の会長に就任しました。入所者が今後も安心して暮らせるための将来構想の策定や、施設を残してハンセン病の歴史を伝えていくための永続化に向け取り組んでいます。
全国13ある国立療養所では、入所者の減少と高齢化で、自治会が機能していない所もあり、屋さんが、それぞれの療養所の事情や入所者の声を聞き取り、国や自治体に届けています。
◆国立療養所で2番目に入所者が少ない東北新生園(宮城・登米市)では…
〇東北新生園を訪問
「おはようございます」
「ようこそおいでくださいました」
岡山から新幹線を乗り継ぎ訪れたのは、宮城県登米市。国立療養所で2番目に入所者が少ない東北新生園です。
(東北新生園のプレゼンに対する屋さんとのやりとり)
「1月現在、当園は入所者20人」
「20人ですか、こちらは」
「平均年齢は1月末現在で、男女合わせて91.1歳」
「え?」
「91.1歳」
◆東北新生園での取り組みをヒアリングした屋会長「将来構想だけは生きている間に」
園の将来構想に基づき、こちらでは、介護や診療が受けやすいように入所者の住居スペースが集約されたほか、地域の人と交流できるよう様々なイベントが開催されています。
(東北新生園 三國潤一園長)
「一般寮の人はセンターに上がり、皆さんこちらで最初は嫌だという人多かったが、いざ入ってみると話がしやすく、良かったと」
(邑久光明園入所者自治会 屋猛司会長)
「状況を皆さんに聞いて行こうと、そうしないと自治会が終わりますからね。全療協としても最後まで将来構想だけは生きている間に、永続化問題は今、国が頑張ってくれているので何とかしたい」
◆各地で掲げられつつある「将来構想」 一方、国による療養所の保存のあり方は…
瀬戸内市は、2つの療養所がある長島を、人権を学ぶ場所にしようと将来構想を掲げています。また、全国で唯一、検討が行われていなかった高松市沖の大島青松園でも、2025年、ようやく将来構想の策定に向けて議論が始まりました。
国は、約1万7000柱が眠る全国の納骨堂など、療養所の歴史的な建造物を保存する方針を示していますが、療養所自体をどう残して行くのかは決まっていません。
◆鹿児島県・奄美大島「奄美和光園」入所者数は全国の国立療養所で最少の6人
(竹下美保記者)
「鹿児島県の奄美大島にあるこちらの療養所の入所者数は現在6人で、全国の国立療養所の中で最も少なくなっています」
屋さんが、特に気にかけている奄美和光園。2013年には入所者の希望を受けて、療養所を一般診療にして、地域の人も治療や入院ができる施設になりました。入所者がいなくなった後、療養所がどうなるのか注目されています。
(奄美和光園 馬場まゆみ園長)
「最後の1人まで在園保障とうたわれているので、入所者が奄美和光園をついのすみかとして考えてくれて、地域社会から孤立することなく健やかに一日一日を過ごしてほしい」
全国の国立療養所の入所者は551人、平均年齢は89.2歳です。時間が多く残されていない入所者にとって、「将来構想」や「永続化」は喫緊の課題です。
◆ハンセン病を発症したために…生きることに不自由な人が「生きていて良かった」と思える療養環境を
毎年6月に行われる追悼式。屋さんは、ここで、亡くなった入所者や全国の入所者の思いを訴え続けてきました。
(邑久光明園入所者自治会 屋猛司会長)
「ハンセン病を発症したために公権力や無らい県運動によってふるさとを追われ、健康を損ねて高齢になった者たちが苦しい時代を経て不安な日々を生きている。日々の生活が立ち行かない不自由な人が、生きていて良かったと思える療養環境を整備する責務がある」
2026年の追悼式は6月22日。26年も、屋さんは全国の入所者の代表として思いを届けます。
(邑久光明園入所者自治会 屋猛司会長)
Q:わざわざ目を見て顔みて話すと違う?
「そりゃそうだ、電話で話しても何も進まないから」
Q:まだまだ全国回られますか?
「回りますよ。僕が元気なうちは全国回ろうと思う」
