19日に開会した県議会に事業費およそ1100万円で提案されたのが公立中学・高校のスクールカウンセラーの配置時間の拡充などに関する事業です。
きっかけは、4年前に起きた男子生徒の自殺でした。
なぜ生徒の命を守れなかったのか…教育現場に求められているものを取材しました。

2022年8月、2学期の始業式当日の朝、県立中学校に通う2年生のAさんは東広島市の踏切で列車にひかれ、亡くなりました。
自殺でした。

県第三者委員会・中嶋善英 委員長
「やむを得ず生じたミスに対して、教員から厳しい指導が加わって恐怖が募り、課題に向き合うことがどんどん困難になったと。次第に抑うつ状態へ移行し、時に希死念慮、死にたいという気持ちが生じるようになった」

ことし4月、2年にわたって調査してきた県の第三者委員会は、自殺に至るまでの事実関係や背景要因を公表。
調査報告書は150ページに及び、「学校側に不適切な指導があったことが自殺に至った要因の一つ」と結論付けました。

母親
「私たち自身が調査開始前に卒業生や同級生に聞いて回ったことの裏付けができましたし、私たちが知らなかったこともわかりましたので良かった」

両親と6歳年上の姉あわせて4人で暮らしていたAさん。
幼いころから手のかからない子だったといいます。

父親
「息子はとにかく穏やか。いつもニコニコしている」

生き物や工作が好きで、成績も優秀だったAさん。
友達がたくさん行くから、と県立中学校を受験し入学しました。
しかし、入学直後に不適切な指導は始まっていました。

英語の担当で、Aさんの担任でもあったB先生が、課題が指示通りにできていないとして、部活動中だったAさんのもとに怒鳴り込み「誠意をもって完璧にやれ」と教室に連れ戻したといいます。

母親
「連休明けから元気がなくなってきて体調が悪いっていうのは出てくる」

ゴールデンウィーク明けには朝、起きられず、トイレにこもることが多くなりました。
体調を心配した両親はAさんに学校を休むよう勧めましたが、休もうとせず、毎日、登校。
一方で、学校から出される大量の課題をこなすことに苦労している様子は感じていました。

調査報告書によると、実はこの頃、Aさんは課題の提出が遅れるようになり、夏休み明けには連日、担任のB先生から教室や廊下で厳しく指導されていたことが分かりました。

しかし、両親に連絡がないまま異変に気付いたのは10月。
コロナワクチンの副反応で学校を休んだため課題の提出が遅れたことについて、数学を担当するC先生から叱られたといいます。

母親
「休み明けに持っていったらC教諭に『ワクチンの副反応だか何だか知らんけど、ちゃんと朝、出せ。これが初めてじゃないぞ』って言われたって言って。それを初めて本人が言った」

さらに、この時に遅れて出した課題をC先生が「受け取っていない」と言っていることが明らかになります。

困惑した母親は、担任と数学の先生宛てに手紙を書き「ほかの生徒のノートに紛れたりしていないか、探してほしい」と伝えます。
すると・・・

母親
「今度は呼び出されたっていうんですね。職員室に。2人で息子を呼び出して『なんじゃ、これは』と。『もし、出てきたら謝ってやるよ』って言われたって。本人は帰って泣き出した」

この日、担任からの電話で提出していない課題がほかにもあり、6月から溜まっていることを両親は知らされます。

Aさんに確認すると、「数学と英語の課題は一度に大量に出され、ある日、突然、締め切りを告げられる。不完全なまま提出するとまた怒鳴られるから、怖くて出せなくなった」と言います。

結局、課題ノートは見つからず、両親はAさんをなだめ課題をやり直し4日後に提出させます。

母親
「先生は僕を見もしなかった、と。採点しながらそうやって遅れてきたのに言い訳もせずに今更出したところで受け取る義理はない」ってやられたって」

課題の受け取りを拒否されたというのです。
途方に暮れた母親はAさんに転校を勧めます。

母親
「本人が、いや、友達がいるんだと。大好きな友達と一緒に行って部活も楽しいし、だから辞めたくない、転校したくないと」

そう言われ、両親は課題を期限に間に合わせられるようサポートすることを決意。

父親
「とにかくもう合言葉のように、C教諭に目をつけられないように、と」

そんな中、2学期の終わりにあるメモを見つけます。

母親
「ノートを片付けていたら『死にたい』って書いてあるようなものも出てくるし。「これ、いつの話よ」みたいな。そしたら「それは1年生の夏休みの話だから」って。「今、大丈夫なの?」って聞いたら「今、大丈夫」って。『スクールカウンセラーとか相談してみる?』っていうんだけど、「いや、話すことなんてない」って」

教職員による不適切な指導を巡っては、第三者委員会が実施したアンケートでも生徒からおよそ120件の記述が寄せられ、「提出物遅れへの過度な叱責」など威圧的な言動を指摘する声が目立ったと言及されています。

2年生になって担任が変わり、学校生活にも適応していたかに見えたAさん。
しかし6月に、母親が2人の教師のことを聞くと…

母親
「僕はあのC先生に嫌われたって言ったんです。なんでもない時に「あの」って声を掛けたら「うるさい」って怒鳴られたって」

学校が実施している学校生活に関するアンケートでは1年生の時からAさんは「学校に行きたくない」と答え、2年生の5月には「早急に個別支援が必要とされる」状態で教師との関係は「最低」の評価でした。
しかし、学校からの支援の動きは見受けられず、保護者にも知らされていませんでした。

Aさんが亡くなって4カ月後に警察から返却されたカレンダー。

母親
「8月の24が始業式なんですけど、8月に×がしてあって、22,23も×があって、24.25から全部日付が横線で消してあるんですよね。
だから本人的にはもう学校は24からスタートなんで、戻る気はなかったんかなと思います。で、裏をみると、8月のこの22のところに『自殺日』って書いてあるんですよ」

学校に提出する生活記録ノートの8月22日と23日の記述からはAさんが追い詰められていたことが読み取れます。
このノートをリュックに入れて、始業式の朝、Aさんは命を絶ちました。

父親
「息子に関して言うなら、もうあそこ(学校)に行かなきゃよかった、それだけ」

母親
「私はものわかりのいい親になろうとしなければよかった、と思ってます。このどもの助けになろうという気持ちでやってしまったことが却って本人をずっと苦しい状況においてしまった」

第三者委員会の提言を受け県教委は、公立中学校と県立高校のスクールカウンセラーの配置時間を年間で6時間増やすほか、県立中学校3校の1年生全員を対象に面接を実施するなど、生徒の相談体制を充実させる方針です。

県教育委員会・篠田智志教育長
「大変重く受け止めていて、できるだけ速やかに実効性のある取り組みを進めたいと思っています」

しかし両親は学校のスクールカウンセラーでは相談体制に限界があると指摘します。

母親
「スクールカウンセラーに相談したら、その内容が担任に漏らされていた、と言っている人がいて。カウンセラーがちゃんとその能力を発揮できる環境なのか、信用してもらえるか、生徒たちに。そこが問われている」

第三者委員会は学校や県教委から独立した相談窓口の設置も求めています。
報告書は最後、こう締めくくられています。

「報告書では、個人情報保護の観点から、生徒を「Aさん」と記している。しかし、亡くなったのは、幸せになってほしいと願って名付けられた固有の名前を持ち、私たちと同じ時間を生きてきた一人の生徒である。本名が載らない報告書を書きながら、委員たちには忸怩たる思いがあった。その一方、学校現場の状況からは誰もが「Aさん」になり得ると考えられる。今後は誰ひとり「Aさん」にならない学校づくりを進めていかなければならない」


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テレビ新広島
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