知人宛に地元の銀行から「未利用口座管理手数料に関するお知らせ」が届いた。
覚えがないことから問い合わせたところ、亡くなったお母様が作った口座だと判明。
数十年前、知人が子供の頃にお母様が口座を作って管理していたが、長い間、利用がなく、数百円の残高が残ったまま放置されていたのだ。
この数年、「未利用口座管理手数料の導入」や「通帳の有料化」など、銀行口座の利用の仕方が変わってきている。
「使わない銀行口座は犯罪に使われる危険があります。また相続対策としても“銀行口座の断捨離”は必要です」
と話すのは、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さん。詳しく聞いた
■放置した銀行口座は危険…
【ファイナンシャルプランナー 氏家祥美さん】
銀行が「未利用口座管理手数料」を導入する背景のひとつに「マネーロンダリング(資金洗浄)」や「特殊詐欺」対策があります。
長年放置されている口座は、犯罪グループに売買されて、振り込め詐欺の振込先に使われたり、マネーロンダリングに利用されたりするリスクが高くなります。
存在を忘れているものや、親が作って本人が知らないといった口座は、悪用されていても気づかず大変なことに繋がりかねません。
犯罪へのリスク対策として、自分の銀行口座はしっかり管理する必要があります。
■家族のためにも断捨離は必要…
犯罪対策のほかに、相続の面からも銀行口座の断捨離は必要です。
知人が相続をした際、残高が2000円の口座も、複数の書類を提出して手続きしました。何度も電話で問い合わせたり、店舗が他県だったので郵送で書類を送ったりと、なかなか手間がかかったそうです。
たとえ少額でも、亡くなった人の名義の預金は相続財産です。手順に沿って相続手続きをしなければいけません。
残った家族の負担を減らすためにも、口座はできるだけまとめた方が良いと思います。
■銀行口座は「3+α」に断捨離を
具体的な方法として、口座は3つに絞って、使い分けをおすすめします。
*メイン口座:給与振り込みや家賃や住宅ローン、水道光熱費の引き落としなどに利用。対面での対応が可能な「実店舗がある銀行」が望ましい。
*サブ口座:貯蓄や資産運用に利用。「ネット銀行」は金利設定が高いなど、様々な優遇があることが多いので、自分にあったところを選択する。
*ゆうちょ銀行:旅行や出張、転勤などで地方に行った際、コンビニATMがない場所でも「郵便局」は必ずあるので持つべき。
この3つに加えて「通帳のある口座」をお持ちの場合は残した方が良いでしょう。
パスワードが無くても記帳すれば入出金履歴が分かる通帳は、誰かにお金の管理を頼むことが出てくる高齢期などに便利です。
最近は、新規口座開設の場合、通帳発行に手数料がかかる銀行が増えています。
現時点では、従来から持っている通帳はそのまま無料で使えますので、いざ通帳が必要といった場合に備えて残しておきましょう。
■オンライン化で「故人の口座がわからない!」
ネットバンキングなどオンライン化が進み、相続時の「財産調査」や「解約などの手続き」方法が大きく変わろうとしています。
これまでは、家庭内で通帳をまとめて保管していれば、家族が口座を把握し手続きを進めることができました。
しかし、ネット銀行の利用が増えて、金融機関からのお知らせも郵送ではなく本人宛のメールで届くようになると、どこの銀行に口座があるのか本人しか分からないといった事態が起こり得ます。
何の準備もしないまま突然亡くなると、一から調べるのは大変です。
パソコンやスマートフォンが開ければ、履歴やブックマークから探していけるかもしれませんが、ロック解除ができず開けなければ、心当たりの金融機関を絞って窓口を訪問し、ひとつずつ口座照会する等、多大な時間と労力がかかる可能性があります。
オンライン通帳は紛失の心配がなく、金利や手数料の優遇などのメリットもありますが、もしもの備えとして「銀行名や口座番号、ID、パスワードなど」を共有化しておいた方が良いと思います。
金融資産の共有化に抵抗があるという方も「銀行名と店舗名」ぐらいはリスト化しておくと相続時に困りません。
そして、こうした場合に備える意味でも、通帳のある銀行口座を残し、上手く活用して頂ければと思います。
■意外と不便なオンライン化…
口座の断捨離を思い立ち、長い間つかっていない口座を解約しようとして、思わぬ落とし穴にぶつかることがあります。
例えばログインに必要なパスワードを忘れて変更(再設定)する場合、本人確認のためにメールアドレスや携帯番号へワンタイムパスワードが送信されることがありますが、利用しない間にこれらを変更していると、本人確認ができずに手続きがなかなか進みません。
しかも今、コールセンターはなかなか繋がりません。
結局、そのまま放置している方も多いのではないでしょうか。
IDやパスワードはセキュリティ面から銀行ごとに変えるべきですが、1つの銀行でも「ログインパスワード」や「取引パスワード」など複数のパスワードがありますし、この数年で求められるパスワードは複雑化しています。
「自分でしっかり管理できるうちに解約手続きを進める」ことは、とても大切なのです。
■親が作った子供名義の口座は要注意!
冒頭のように、親御さんが“お子さん名義の口座”をつくり、お年玉やお小遣いを貯めているご家庭は注意が必要です。
口座は本人が管理するのが大原則。子ども名義の口座をいつまでも親が管理していると、「名義預金」とみなされて、贈与税や相続税の対象とされる可能性があります。
ポイントは「金額が大きくなりすぎないうちに渡す」こと。
贈与税がかからないのは年間110万円までです。
口座残高が大きくなりすぎないうちにお子さんに引き継ぎましょう。
そして引継ぎ後は「お子さん自身が通帳や印鑑を管理する」ことが重要です。
自分で出し入れできるようにして下さい。
せっかく子供のために作った口座が後のトラブルに繋がらないために、本人に引き継ぐか、本人と一緒に出金や解約の手続きをして頂ければと思います。
■老後の備えは「増やす」と「減らす」
「老後のためにお金を増やしましょう」という話はよく耳にします。
もちろん、老後資金を増やすのは大切なことですから、少しでも高い金利を求めて金融機関の口座を増やしてきた方もいるでしょう。
しかし、老後の準備を始める年齢になったら「増えすぎた銀行口座などを“減らす”」ことも重要です。
断捨離をすることで、資産管理が楽になり、不正利用や手数料負担のリスクを解消できます。
元気で余裕のあるうちに、「減らす」という大事な老後の準備もして頂ければと思います。
(ファイナンシャルプランナー 氏家祥美さん)
