新型コロナウイルス感染拡大防止のため、自宅で過ごす時間が増えたことで、「夫婦間の家事の不平等さに気づいた」という声がチラホラ聞こえてくる。常に一緒にいることで不満が募りやすくなり、“コロナ離婚”に至ってしまう夫婦も…。

11月22日は「いい夫婦の日」。仕事や育児などに追われる日々の中、互いの存在を見つめ直すいい機会。だからこそ、今月は一度立ち止まって「夫婦のカタチ」について考えていきたい。

男性のなかには、「妻がイライラしているけど、理由がわからない」「キレる妻にはどう接したらいいんだ?」と、困惑している人も多いはず。対処法さえわかれば、夫婦関係は円満になるかもしれない。そこで、妻のイライラの原因を、『なぜ、突然妻はキレるのか?』(フォレスト出版)の著者・嶋津良智さんに聞いた。

妻が求めているものは“自分に関心を持ってくれる夫”

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「妻のイライラの原因は、夫婦の関係性や互いの能力、シチュエーションなどによって変わるので、一概には言えませんが、夫が関係しているケースが多いことは確かです」

例えば、夫が家事や子育てに積極的でないことや、妻の話を聞かずにスマホをいじっていることが、妻のイライラの原因の1つになっているとのこと。

「女性は結婚しても、何歳になっても、“お姫様”なのだと感じます。決してチヤホヤしてほしいわけではなく、夫に大切にしてほしい、関心を持ってほしい、話を聞いてほしいという思いが、潜在的にあるのではないかと思うのです。だから、女性は“懐が深い男性”を求める方が多いのでしょう」

「世の女性の多くは、夫から『大切にされている』『守られている』『意識されている』と実感していたいのだと思います」と、嶋津さんは話す。

要望に応えてくれない夫に対して、妻は「わかってよ!」というメッセージをぶつけてしまう。その言葉に対して、夫が「なんでそういう言い方をするんだ」と返してしまい、夫婦関係がギクシャクするようだ。

「夫婦が互いに気遣い合うこと」が家庭円満につながる道

「夫ができる最初の一歩は『傾聴』。人は、自分の話を聞いてくれる人をキライにならないので、まずは妻の話を聞きましょう」

この時に大事なことは、「話を聞こうとしている」という姿勢を見せること。例えば、妻が話し始めたら、いじっていたスマホを置く、見ていたテレビを消すなど、話に集中しようとしていることを態度で見せることが、妻の安心感につながるそう。

「夫婦円満のコツは、『親しき仲にも礼儀あり』。僕も子どもの頃に親から言われたことですが、『自分がやられてイヤなことは人にするな。うれしいことは人にもしてやれ』が、基本なんですよね。自分が話しているのに妻がスマホをいじっていたら、イヤじゃないですか?」

つき合い始めたばかりの頃は、テレビやスマホよりも、将来の妻となる彼女の話を聞くことに一生懸命だったはず。その頃の感覚を思い出すことで、妻との向き合い方を見直せるだろう。

「結婚すると、『妻だからこうしてくれて当たり前』『夫だから言わなくてもわかってくれるだろう』と思いがちですが、その感覚は相手に対する甘えです。言葉にしなければ伝わらないことがほとんど。何よりもコミュニケーションが大事ですし、互いの気づかいが良好な関係を築いていきます」

嶋津さんの友人は、「俺は会社で気を使って、家でも気を使っている。どこで気を休めればいいんだ(笑)」と、冗談半分で話すそう。しかし、その友人の夫婦関係は良好で、周囲が羨むほど仲がいいのだとか。

「どうしても夫婦間の甘えは出てくるので、『家でも気を使っている』と思うくらいが、ちょうどいいのかもしれません。多少気を使っても、家庭円満で家にいる間の気分が良ければ、幸せじゃないですか。妻をイライラさせて、家庭がギスギスし、帰宅恐怖症になってしまったら、関係修復は困難です」

夫が知っておきたい「妻のイライラ」原因別対処法

妻をイライラさせないための日々の心がけを聞いたが、妻がイライラしていると感じた時の対処法はないだろうか。

「イライラの原因は、夫にあるとは限りません。ですから、まずはイライラしている理由を、素直に聞いてみるといいでしょう。ここで妻を放っておくのが、一番ダメ。円満な夫婦関係にはコミュニケーションが必須なので、ここで逃げてはいけません」

当然ながら、「なんでイライラしてんだよ」と、ケンカ腰で聞くのはNG。「俺で役に立つことだったら相談に乗るし、俺にイライラしているなら言ってもらわないとわからないよ」と、普通の会話のように、妻に聞いてみよう。

「妻のイライラの原因は、大きく3つに分けられると思います。1つ目は『夫』。2つ目は『妻自身』。3つ目は『夫でも妻自身でもない他者や出来事』。原因によって、夫側の対応も変わります」

●原因が「夫」の場合
妻からイライラの原因となっている自分の言動を聞き出し、改めることが大事。ポイントは、反発せずに「受容」すること。

●原因が「妻自身」の場合
妻の悩みを聞き、どうしたらその悩みが解消されるか、相談に乗ることが大事。もし、妻から「私の問題だから、気にしないで」と言われたら、無理に関わらない方がいい。

●原因が「夫でも妻自身でもない他者や出来事」の場合
妻が「子どもが言うことを聞いてくれなくて」「ママ友にこんなこと言われて」と話し出したら、ひたすら聞いてあげること。まさに「傾聴」がカギ。

「夫婦に限らず、人間関係においてコミュニケーションは永遠の課題です。相手が思うように動いてくれないからこそ、コミュニケーションを取って、意思を伝えなければいけません。その事実に早く気づいて、円満な家庭を築いてほしいですね」

妻がキレそうだからといって逃げずに、向き合うことが、イライラ解消のカギ。妻の話を聞くことを習慣化するだけでも、家庭の雰囲気はグッと良くなりそうだ。

嶋津良智
教育コンサルタント、一般社団法人日本リーダーズ学会代表理事、リーダーズアカデミー学長、早稲田大学エクステンションセンター講師。大学卒業後、IT系ベンチャー企業入社、独立・起業などを経て、2005年にリーダーズアカデミー、2013年に日本リーダーズ学会を設立。リーダーを感情面とスキル面から支え、世界で活躍するための日本人的グローバルリーダーの育成に取り組む。著書に『怒らない技術』(フォレスト出版)など多数。

リーダーズアカデミー:https://www.leaders.ac/

取材・文=有竹亮介(verb)

プライムオンライン編集部
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