「民主主義を守るための大衆行動」が暴動に?

アメリカ大統領選挙は、結果がどうなろうと暴動が起きることが懸念されている中で「大衆行動を準備せよ」と指示しているグループもあることが分かった。

ミネソタ州の「ミネソタ行動せよ」という左派系のグループは、保守派のニュースサイト「ブライトバート・ニュース」が“部外秘”とした行動計画書を入手して公表した。

保守派が部外秘とした行動計画書の1ページ目(Breitbart News Network より)
保守派が部外秘とした行動計画書の1ページ目(Breitbart News Network より)
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「ミネソタ州の民主主義防衛計画」という表題の計画書は、「ミネソタ州の選挙結果がどうあれ、民主主義を守るための大衆行動を起こさなければならない」とその構成員に呼びかけている。

また「計画書」は、その行動が過激化することを次のように示している。

この大衆行動は、(州の最大都市)ミネアポリスを中心に社会不安を引き起こすことになる。状況は不安の本質や州の対応にもよるが、一気に制御できない渦巻化してゆく。

つまりは暴動にもなることも示唆しているわけだが、そのシナリオには3つある。

予想される3つの“暴動”シナリオ

まず、バイデン・トランプ両候補の得票が拮抗して勝敗が付かない場合、右派勢力が介入しようとするのを阻止する。それはミネソタ州にとどまらず、他州での民主主義運動にも連帯行動を起こす。

また、バイデン氏が勝利してトランプ陣営がそれを認めない場合、右派勢力が暴動を起こす可能性があるので、それに対応する。

問題は万一、トランプ大統領が勝利した場合で、「計画書」は「我々は大衆を動員して、戦略的混乱を起こす」としている。

「ミネソタ行動せよ」は、2020年5月にミネアポリスでアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイド氏が警察官に窒息させられて殺された事件で、抗議運動の中心になったグループ。このグループの圧力で、ミネアポリス市議会は警察組織を解体する議決をしている。

「計画書」は、選挙当日から1月20日の大統領就任式までの行動を記しているが、この間「装備(武器?)を準備し、練度を高め、素早く効果的に大衆動員ができるようにしておくこと」と構成員に指示している。

これは、たまたま左派系のグループの「計画書」だったが、右派グループも同様の準備をしていることは容易に考えられる。

市民や商店も暴動に備え対応

こうした状況に、米国各地の警察は「政治的な暴力事件」が起こり得ることを警告し、要注意人物や組織のSNSなどを注視しているという。

市民の方も、当分外出をしなくても済むように食料品を買い込んだり、商店では破壊や略奪の対応に迫られていると聞き、そのニュースを追っていくうちに懐かしい場所の映像を見つけた。

PRESS LIQUORSという飲食店でガラスに板を貼り付ける工事をしているもので、ワシントンでマスコミ各社が支局を置くナショナル・プレスビル1階の酒屋なのだ。

NBC放送のアダム・タス記者がツイートしたものだが、私も特派員時代にこの店にはよく世話になったので、ちょっとおセンチになると同時に、ホワイトハウスまで徒歩5分ほどのこのビルも危ないのかと、事の深刻さを改めて思い知らされた。

それはともかく、米国の保守派と進歩派は一触即発の状況にあるようで気が許せない。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。