ネットフリックスが導入!?セクハラ防止ルール

世界中で「#MeToo運動」が広がりを見せる中、セクハラ防止のため、アメリカの動画配信大手ネットフリックスが「誰かを5秒以上見つめるのは禁止」というルールを導入した、とイギリスのメディアが報じ、話題となっている。

撮影現場などで導入されたルールで、この他には、「長いハグはしない」、「同僚の電話番号を聞かない」などがあるという。

このうち、「5秒以上、見つめる」という行為はセクハラに該当するかどうか、「法律事務所くらふと」の坪内清久弁護士に法的見解を聞いた。
 

セクハラは「相手方の意に反する性的言動」

――そもそもどのような行為がセクハラに該当するのでしょう?

セクハラ、正確にはセクシャルハラスメントとは相手方の意に反する性的言動をいいます。

具体例としては、「胸大きいね」といった女性の身体的特徴について発言することが挙げられます。また、男性に対するセクハラも成立します。
具体的には「男のくせに情けない」といった発言が挙げられます。

なお、裁判においては意に反する性行為等も「セクハラ行為」と認定されているものもあります。
このことから、セクハラという言葉は多義的といえるでしょう。
 

「5秒以上、見つめる」は法的なセクハラには該当しない

――「5秒以上、見つめる」という行為はセクハラに該当しますか?

上記の定義からすれば、「5秒以上、見つめる」という行為は言動ではないのでセクハラに該当しないことになります。

もっとも、見つめるという行為が法律上違法、つまり損害賠償の対象となる可能性は0ではないと思います(非常に低いとは思いますが…)。

 
 
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見つめる時間や箇所によっては違法となる可能性がある

――「見つめる時間」や「見つめる箇所(体の部位)」はセクハラに該当するかどうかの判断に影響しますか?

法的な意味でのセクハラに該当するかという意味では、言動ではない以上、見つめる時間、見つめる場所は関係ないことになります。

ただ、上記のように損害賠償の対象となる可能性は0ではありません。
見つめる場所が胸等であれば、その行為の悪質性は高くなりますし、1時間以上見つめるといった場合も、相手に不快感を与える度合いが高いため違法となる可能性は上がるといえます。
 

セクハラ防止の社内ルールは導入すべき

――セクハラを防止するために社内ルールを導入することは、法的に問題はないのでしょうか?

むしろセクハラ防止に関する社内ルールを作成することは推奨されるべきです。

企業は、労働者が働くにあたって、労働者の人格的尊厳を侵し、その働く行為に重大な支障が生じないようにする、または適切に対処して職場が労働者にとって働きやすい環境を保つよう配慮する義務を負っています。
ですから、企業は、社内ルールとして
①セクハラがどういう行為を意味するのか、②セクハラをしたらどのような手続きで事情を聴取し、③どのような処分がありうるのか、といったものを導入するべきでしょう。

なお、社内ルールは公序良俗に反しない限り企業が自由に決めることができます(何が公序良俗になるかという問題はひとまとめに括ることはできず、個別の事案によります)。

特に②、③については一歩間違えればプライバシー侵害となる危険や企業が責任を負う危険も生じうるデリケートな内容なので、弁護士や社労士の意見を聞いて社内ルールを導入すべきでしょう。


 

坪内清久
弁護士法人ソーシャルワーカーズ千葉支所法律事務所くらふと
パートナー弁護士
創価大学法学部法律学科卒。首都大学東京法科大学院を卒業し、2016年に弁護士登録(69期)。千葉県弁護士会所属。司法と福祉のより良い連携を目指し、特に子供の貧困、教育問題、外国人の子供の問題に注力している。

プライムオンライン編集部
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