新型肺炎による感染拡大が続く中、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が9日に開かれ、 「新型コロナウイルス感染症対策の見解」が示された。

この見解は、新型コロナウイルス厚生労働省対策本部クラスター対策班が分析した内容に基づき、同専門家会議において検討した結果をまとめたもの。
2月24日に公表した専門家会議の見解では、「これから1、2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際」と述べていたが、ちょうど2週間経ち、対策の効果をどう捉えているのか。

現時点において、専門家会議では以下のような見解を持っている。

現在の国内の感染状況

感染者の数は増加傾向にあり、一定条件を満たす場所において、一人の感染者が複数人に感染させた事例が、全国各地で相次いで報告されている。

しかし、全体で見れば、これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約80%は、他の人に感染させていない。感染者や濃厚接触者の方々、地方公共団体や保健所、厚生労働省対策本部クラスター対策班の連携と努力が実り、現時点までは、クラスター(集団)の発生を比較的早期に発見できている事例も出てきている。これは、急激なペースで感染者が増加している諸外国と比べて、感染者数の増加のスピードを抑えることにつながっている。

現在の状況を踏まえると、専門家会議の見解としては9日時点での日本の状況は、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ちこたえているのではないかと考えている。

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しかし感染者数は、一時的な増減こそあれ、当面、増加傾向が続くと予想。また、感染の状況を把握するためには、約2週間程度のタイムラグが生じ、すべての感染状況が見えているわけではないため、依然として警戒を緩めることはできない。

専門家会議としては、現在、北海道で行われている対策の十分な分析が完了し、さらに他の地域の状況の確認などをしたうえで、全国で行われている対策も含め、我々の考えを政府にお伝えしたい。

重症化する患者について

中国からの2020年2月20日時点での報告では、感染が確認された症状のある人の約80%が軽症、13.8%が重症、6.1%が重篤となっている。また、広東省からの同日時点の報告では、重症者125人のうち、軽快し退院した者が26.4%、状態が回復しつつある者が46.4%となっている。

日本国内では、2020年3月6日までに、感染が確認された症状のある人366例のうち、55 例(15%)は既に軽快し退院している。

重症化する患者も、最初は微熱、咽頭痛、咳などの普通の風邪症状から始まっており、その段階では重症化するかどうかの区別をつけるのは、依然として難しい状況だが、日本では、死亡者数は大きく増えていない。このことは、限られた医療資源のなかであっても、 日本の医師が重症化しそうな患者の多くを検出し、適切な治療をできているという、医療の質の高さを示唆していると考えられる。

重症化する患者は、普通の風邪症状が出てから約5~7日程度で症状が急激に悪化し、肺炎に至っている。重症化する患者の場合は、入院期間が約3~4週間に及ぶことが多い。 また重篤となる場合は、人工呼吸器による治療だけでなく、人工心肺を用いた集中治療が必要になることがある。

今後の長期的な見通しについて

国内での急速な感染拡大を抑制できたとしても、世界的な流行を完全に封じ込めることはできない。これまで渡航制限がなかった諸外国や国内の人々との間の往来や交流が既に積み重ねられている。しかし、全ての感染源が追えているわけではないことから、感染の拡大が、既に日本各地で起きている可能性もある。

よって、今回、国内での流行をいったん抑制できたとしても、しばらくは、いつ再流行してもおかしくない状況が続くと見込まれる。また、世界的な流行が進展していることから、国外から感染が持ち込まれる事例も、今後、繰り返されるものと予想される。

専門家会議としては、また、クラスター(集団)の早期発見・早期対応が長期的にわたって持続できる体制の整備が急務だと考えている。保健所については、労務負担を軽減すべく、帰国者接触者相談センターの機能について保健所以外の担い手を求めるなど、早急に人的財政的支援策を講じるべきだと考えている。また、地方公共団体や保健所の広域での連携及び情報共有が必要となる。医療提供体制については、さらなる感染拡大に備え、対応にあたる一般医療機関や診療所を選定し、その体制を強化していく支援をすべきだと考える。

クラスター(集団)の発生が確認された場面とその条件

これまで集団感染が確認された場に共通するのは、
1.換気の悪い密閉空間であった
2.多くの人が密集していた
3.近距離(互いに手を伸ばしたら届く距離)での会話や発声が行われた

という3つの条件が同時に重なった場。

こうした場ではより多くの人が感染していたと考えられる。そのため、これらの3つの条件ができるだけ同時に揃う場所や場面を予測し、避ける行動をとってほしい。

また、共用の物品を使用していたという場面もある。こうした状況では 接触感染がおこる場合がある。

これまで、換気の悪い閉鎖空間で人が近距離で会話や発語を続ける環境、例えば、屋形船、スポーツジム、ライブハウス、展示商談会、懇親会等での発生が疑われるクラスターの発生が報告されている。 不特定多数が参加するイベントは、感染拡大のリスクが高いだけでなく、クラスターが発生したときに感染源の特定、接触者調査が困難となり、クラスターの連鎖につながるリスクが増す。イベントの特徴に応じて可能な場合には、主催者があらかじめ参加者を把握できている方が感染拡大のリスクを下げることができる。

最後に、クラスター(集団)の発生のリスクを下げるための3つの原則を紹介。

1.換気を励行する:窓のある環境では、可能であれば 2方向の窓を同時に開け、換気を励行する。ただ、どの程度の換気が十分であるかの確立したエビデンスはまだ十分でない。

2. 人の密度を下げる:人が多く集まる場合には、会場の広さを確保し、お互いの距離を1~2メートル程度あけるなどして、人の密度を減らす。

3.近距離での会話や発声、高唱を避ける:周囲の人が近距離で発声するような場を避ける。やむを得ず近距離での会話が必要な場合には、自分から飛沫を飛ばさないよう、咳エチケットの要領でマスクを装着する。

これらに加えて、こまめな手指衛生と咳エチケットの徹底、共用品を使わないことや使う場合の充分な消毒は、感染予防の観点から強く推奨される。


これまでの予防対策などが功を奏しているのか、専門家会議の見解では「日本の状況は、爆発的な感染拡大には進んでおらず、一定程度、持ちこたえているのではないかと考えている」ということが分かった。いまだ新型コロナウイルスの感染拡大が収まってはいないが、この見解を参考に今後も皆で感染予防に励むことが大事だろう。

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プライムオンライン編集部
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