狙った部分を温められる電子レンジ
コンビニで弁当を買って温めてもらうとき、どうしても気になってしまうのが、漬物やポテトサラダが温まってしまうこと。
ご飯や唐揚げなどの揚げ物だけは温かい状態で、漬物やポテトサラダは冷たい状態で食べたいものだが、そうはいかないのが現状だ。
こうした中、“狙った部分だけを加熱できる”という、画期的な業務用電子レンジの試作機が完成した。
これは、上智大学の堀越智准教授が、シャープ、日本ガイシ、日本ユニシスらと共同開発したもので、これによって、コンビニ弁当などの“ご飯やおかず”だけを温めることができるのだという。
弁当のバーコードを読み取り、食材ごとの適温で加熱
なぜ、このようなことが可能なのか?
理由は2つあり、1つめは「マイクロ波の精密な制御」。
“通常の電子レンジ”は、マグネトロンという真空管技術(アナログ)を利用した、マイクロ発生装置を利用している。
それに対し、“今回の試作機”では、半導体技術(デジタル)を利用したマイクロ発生装置を利用しており、揺らぎのない高品質なマイクロ波を精密に制御できる。
この高品質なマイクロ波を、電子レンジ内の複数箇所から照射することで、弁当の中の狙った部分だけを温めることを可能にした。
2つ目は「QRコードやバーコードの読み取り機能」。
レンジに弁当を入れると自動的にQRコードやバーコードを読み取り、その情報から、弁当を自動的に認識し、弁当に入っている食材それぞれに適した温度で自動的に加熱することができるのだという。
さらに、冷凍食品のパッケージに書かれている時間どおり加熱しても、ぬるいことがたまにあるが、これは電子レンジ側の規格がメーカーや機種によってまちまちの点が原因。
このレンジでは加熱情報がネット上で管理されるので、今後はこのようなことがなくなるという。
このレンジを使うことによって、多くの人が待ち望む「コンビニ弁当のご飯と揚げ物は温めて、漬物やポテサラは温めない」が可能になるのか?
上智大学の堀越智准教授に聞いた。
弁当の「漬物やポテサラだけ温めない」は可能
――お弁当の中にある、漬物やポテトサラダだけを温めないということも可能?
可能です。
――ハンバーグは温め、その下に敷いてあるキャベツの千切りは温めない、ということは可能?
ハンバーグが温まると、その熱がキャベツに伝わるので、結果的には温まってしまうので、レイアウトに工夫が必要です。
――焼きそばは温め、その上の紅しょうがは温めない、ということは可能?
こちらも、ハンバーグの下のキャベツの千切りと同じように、レイアウトに工夫が必要です。
まずは業務用を開発、その理由は…
――現時点で、製品としては業務用を想定している。これはなぜ?
ご家庭ですと、非常に様々なものを加熱されます。
まずは業務用(ある程度、加熱するものが想定できている)で、電子レンジを鍛え、その後に家庭用の製品を出すほうが良いと考えたからです。
――家庭で作ったおかずなどバーコードがない食材は”狙った部分の加熱”の対象外?
今回の試作機は、コンビニ弁当など市販の商品に対して使用する“業務用”ですので、QRコードやバーコードが必要です。
ただ、今回の試作機はマニュアル加熱もできます。
具体的には、食材を入れるとカメラが内部を即座に読み取り、その後、マニュアルでどの食材を何度くらい加熱するか、設定できます。
また、カメラ認識機能を使うなどの仕掛けをすれば、自動化は可能です。
カメラ認識機能は認識ソフトを組み込むかだけですので、そんなに難しくありません。
――業務用、家庭用。それぞれ製品化はいつ頃になりそう?
試作機への反響と要望を取り入れ、次の試作機を開発し、量産化を検討するフェーズ(=局面)へと移行する予定です。
コンビニ弁当に入った食材をすべて適温で食べたい…こうした願いが叶う日は意外と近いのかもしれない。
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