電子レンジでブドウが燃える?

今や私たちの生活に欠かすことのできない電子レンジ。

冷凍食品や作り置きの料理を食べるときなどに使うことができ、私たちに温かい料理をいつでも提供してくれる。

そんな電子レンジだが、今“あるモノ”を加熱すると危険だという投稿が話題になっている。



じゅな ~料理研究家~(@juna_san1735)さんが「卵を電子レンジで加熱すると、爆発することは有名だと思います。しかし、それより更に絶対に電子レンジに入れてはいけない食べ物があります。なんだと思います?そう、『ぶどう』です。特に2つはNG。プラズマが発生して、ぶどうが燃えます。下手したら火災レベルなので気を付けてほしい。」とのコメントとともに、2粒のブドウが光っている写真を投稿。

じゅなさんによると、ブドウを電子レンジで加熱すると燃えるというのだ。ブドウを電子レンジで加熱することはあまりないと思うが、火災になる恐れもあるという。

この投稿は大きな反響を呼び、「ブドウに限らず、電子レンジの能力で持て余すような小さすぎる加熱材だけを入れると、余った力が電子レンジ本体に帰ってくるので故障原因でよくない」や「ついついやってしまう事ってあるかもしれませんが、本当にやってはいけないことってありますよね。 注意しようと思います。」などのコメントが寄せられ、11万超のいいねが付いている。(11月25日現在)

でも、これって本当に燃えているのだろうか? もし本当なら、どういった原理でブドウは燃えるというのか。

電子レンジでの加熱に使われるマイクロ波などを研究している上智大学理工学部の堀越智准教授にお話を伺った。

ブドウの隙間にマイクロ波が集中増幅しプラズマ発生

――ブドウを電子レンジで加熱すると、プラズマが発生して燃えて、火災になる恐れがある?

「ブドウを電子レンジで加熱するとプラズマが発生」というのは、条件がそろえば発生するようです。ただ、YouTubeで同様の動画を見る限りでは燃えているようには見えません。ブドウには水分が多く含まれているので、だいぶカラカラにならなければ燃えないと思います。ただ、発生したプラズマが別の何かに引火すれば燃えだすと思います。


――どういった原理なのか?

マイクロ波でプラズマの研究をやっているうちの学生に聞いたところ、最近論文が出ているとのことです。ネットでもこの論文を扱ったものがいくつかあるようです。少し書いてあることは間違っていますが、おおよそ言いたいことはあっているようです。

私たちの研究でも、活性炭の粒をある距離の隙間を開けて置くと、その隙間にマイクロ波が集中増幅してプラズマが生じることを論文発表しています。シミュレーションによると、100倍以上の増幅があります。

例えば600ワットの一般的電子レンジですと60000ワットになることになります。これによってプラズマが生じます。プラズマは雷と同じで、空気の絶縁性を超える電力が加わると発生します。この隙間の距離は、活性炭のサイズや電導度から決まります。

この記事の画像(3枚)

――特に「ブドウ2つは危険」とあるが、ブドウの粒の個数によって危険度は上がる?

ブドウも上記の理論によってプラズマが発生したとすると、数が多いほうがその適当な距離に行き当たる確率が大きくなります。ただ、多くなると、例えば2粒でマイクロ波が600ワット照射されるのに対して(1粒当たり300ワット)、20粒だと1粒当たりは30ワットになってしまいます。この辺はバランスがあると思います。

――他に電子レンジで加熱すると危険なものは?

石鹸、冷凍のさいころ状ニンジン、生卵、イカ、紙袋に入れた銀杏、皮付きソーセージなどです。

専門家の実験でもプラズマを確認

また、堀越准教授に実験をして頂いた。10回ほど試した所、プラズマが確認されたという。

実際の動画がこちらだ。

プラズマの様子が確認できる
プラズマの様子が確認できる

結論としては「ブドウを電子レンジで加熱するとプラズマが発生する」「プラズマが発生したことでブドウが燃えるのではない」ということのようだ。しかし事故という観点で見ると、短時間でブドウの水分が蒸発してカラカラになり、一部が炭化すると燃え始める可能性があるという。

いずれにしてもこうした行為は危険であるので、興味本位で絶対にマネしないでほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。