「配布された物資が食べられない」“アレルギーっ子”を抱える家庭に必要な災害時の備え

カテゴリ:国内

  • アレルギーの子を持つ家庭で常備薬や備蓄食を7日分用意しているのはわずか1割
  • 子どもと大人の双方が事前にしておくべき備えがある
  • 専門家「周囲の人たちの理解や行政機関のサポートが必要」

いつどこで起こるか予測ができない災害。

9日に台風15号が直撃した千葉県では、12日午後4時半の時点で約31万3400軒で停電が続いていて、いまだ全面復旧の見通しが立っておらず、被災者は不便な生活を強いられている。

こうした災害時に、避難所などで、食により再び命を脅かされる人がいる。

今や「国民病」とも言われるアレルギー。
食物アレルギー有病率は増加傾向にあり、患者の多くが乳幼児期の子どもといわれている。

「配布された物資が食べられない」

食物アレルギーを持つ子どもが、災害で避難所生活をしなければならない場合、実際の被災地では、これまでにどういった問題が起きていたのか?

過去の被災地での様子 提供:LFA食物アレルギーと共に生きる会

関西で活動する患者会「LFA食物アレルギーと共に生きる会」によると、被災地体験者のアンケートで、食物アレルギーのある子どもを持つ母親らからは、以下のような声が聞かれたという。

・「配布された物資はアレルギー対応ではないアルファ米やパンやヨーグルトで、食べることができなかった」
・「避難所の炊き出しは何が入っているかわからず、手を出せなかった。また食べられるものがないと言い出せなかった」
・「子どもが初めて口にする非常食を食べてくれなかった」


また、同患者会が実施したアンケート調査(患者とその家族を対象)では、常備薬やアレルギー対応備蓄食を7日分用意している人は、およそ1割だった。
国は「大規模災害時には家庭の備えとして1週間分の備蓄が望ましい」としているため、食物アレルギー患者がいるほとんどの家庭の備えが、不十分であることがわかる。

アンケートの回答では、「不安だけど、実際、何を用意したらいいのかわからない」という声が多くあったというが、では食物アレルギーのある子どもがいる家庭は、どのような備えを事前にしておくといいのだろうか?

同患者会が取りまとめた「アレルギーっ子ママが考えた防災ハンドブック」を元に、代表・大森真友子さんに、ポイントを聞いた。

子どもと大人の双方が事前にしておくべき備えがある

ーー災害時、一番必要な備えは?

一番必要なことは、食料や医療品など、各疾病に合わせて必要なものを必ず備えておくことです。

食料は1週間分を目安としていますが、2016年の熊本地震の時は、アレルギー支援が届くのに8日かかったと聞きました。
それだけ、アレルギー対応の非常食は、普通の非常食に比べて手に入りづらいのです。
アレルギーの原因食物が多い場合や、災害時、身軽に動けない可能性が高い場合などは、目安より多めに準備しておくと安心ですね。

また、子どもと大人の双方が、事前にしておくべき備えがあります。


ーー「子どもの備え」とは?

子どもに“自分のアレルギー知り、伝え、理解する力”を身につけておくことです。

・「知る力」は、「自分には食べられないものがある」という意識を定着させ、「人にもらった食べ物は、保護者が確認するまでは食べない」ことを約束させることです。
・「伝える力」は、「自分は○○のアレルギーだから食べられない」と、周りの人にきちんと正確に伝えられることが必要です。
・「理解する力」は、「薬の名前」や「何のための薬」か自分でわかるように、日ごろから伝えておくことです。


ーー「大人の備え」とは?

周りの大人が子どもを守るためには、まず医師の診断のもと、子どもが安全に食べられる量を事前に把握しておくことです。
「コンタミ(原材料として使用していないが、意図せずアレルギー物質が微量混入してしまうこと)はOKか?」や「調味料はOKか?」、「お玉やお箸など調理器具の共有はOKか?」などを確認しておくことで、炊き出し時に子どもが食べられるかどうか判断の基準となります。

次に、住んでいる地域にアレルギー対応の備蓄があるかどうか、事前に確認するといいでしょう。
また、保護者も被災し、側に居られない可能性も考えておくことが大切です。
近くの大人(近親者)にも、子どものアレルギーへの理解と食べられる市販品を日ごろから伝えておくといいでしょう。

周囲の人たちの理解や行政機関のサポートが必要

さらに、小児科医・佐藤さくらさん(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター 病態総合研究部)にも、食物アレルギーを抱える子どもの親は、災害時にどういったことに気をつけるべきか話を聞いた。

ーー親が気をつけるべきこととは?

子ども(患者)が、誤食をしないように注意することです。
避難所で配布される食品や炊き出しの提供時には、原因となっているアレルゲンが入っているかを確認する必要があります。
アレルギー対応食の備蓄は、現場によって差があるため、日ごろから食べられるものを自分で備えることや、症状が出た時の飲み薬やアドレナリン自己注射薬「エピペン」を必ず携帯しておくことも重要です。

また、日ごろから医療機関で、食物アレルギーを治療・管理しておくことが大切です。
原因食物や食物アレルギーのタイプによっても異なりますが、乳幼児期に発症した場合では、小学校就学前までにおよそ90%の患者が、アレルゲンとなる食物を食べられるようになります。
定期的に医師の診察を受け、食物アレルギーが治ってきているかを確認してもらいましょう。

ーーもし症状が出てしまった場合は?

避難所などでは、周囲の人に気を使い、症状が出ているのに我慢してしまう場合もあります。
そのままにすると重症化するケースもあるため、症状が出たことを周囲に知らせ、手持ちの薬を使用するなど早めに対応しましょう。

また、環境の変化や、ストレスの増加も、アレルギー反応を悪化させる要因となっています。
食物アレルギー患者が避難所生活する際には、患者やその家族だけでは解決できない問題も多く、周囲の人たちの理解や行政機関のサポートが必要です。

「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(2013年8月内閣府作成)では、避難所で提供する食事は、食物アレルギーの避難者にも配慮することが決められている。
しかし、混乱する被災地で、十分なアレルギー対応を行うことは難しいのが現状だ。

前述の大森真友子さんは、「アレルギー患者の声が行政に伝わりづらく、災害時にアレルギー対応食への取り組みが不十分な状態です。患者会の数は全国的に減少傾向で、地域によって活動に差があります。国に患者の声が届きやすい仕組みがあれば、環境の整備などに役立つのではないか…という思いから、患者会代表らで災害時連絡用窓口『LFA Japan』を立ち上げました」と話す。

食物アレルギーの患者がアレルゲンとなる食物を摂取すると「命の危険がある」。
災害時には、混乱や配布される食料自体が少ないことも予想されるため、アレルギーのある子どもを持つ家庭は、まずは“親子で身を守る”備えを普段からしておくことが大切だ。

(執筆:清水智佳子)

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