難敵・イングランドに挑むなでしこジャパン。“崖っぷち”を乗り越えたチームの第二章が始まる

FIFA 女子ワールドカップ フランス 2019特集

カテゴリ:芸能スポーツ
FIFA 女子ワールドカップ フランス 2019特集

グループ1位通過をかけて臨む第3戦

フランス女子W杯に参戦中のなでしこジャパンは19日(日本時間20日)、グループD首位通過をかけてイングランドとのグループステージ第3戦に臨む。
会場は南仏・ニースのアリアンツ・リヴィエラ。ニースは第1戦のパリ、第2戦のレンヌより気温が5℃以上高く、暑くて乾燥している。雨が少なく天候は安定しているが、イングランド戦キックオフの21時でも気温は24℃近くあるため、消耗戦になることも考えられる。

日本は10日の初戦でアルゼンチンに引き分け、14日のスコットランド戦で勝利したため、ここまで勝ち点4を獲得している。一方、2連勝のイングランドは勝ち点6でグループ首位につけている。日本はイングランドに勝てば1位で決勝トーナメントに進めるが、引き分けなら2位。負けた場合は、3位のアルゼンチンとスコットランドの試合の結果次第となる。アルゼンチンが引き分け以下なら2位だが、勝った場合はFIFAのレギュレーションにより、3位になる可能性がある。

その場合も、3位の6チーム中上位4チームに勝ち上がれる権利があり、グループEとグループFの下位2チームが2連敗したため、日本はイングランドに負けても決勝トーナメント進出が確実だ。プレッシャーが少ない状況で臨めるのは大きい。

だが、3位になった場合は、決勝T1回戦でフランス(FIFAランク4位)かドイツ(同2位)と対戦することになる。2位でも、カナダ(同5位)かオランダ(同8位)などの強豪国が立ちはだかる。日本のランキングは7位だが、この3年間の対戦成績を見ると、欧米の強豪国には圧倒的に分が悪い。

1位通過なら準決勝までは優勝候補と当たらない可能性が高く、上位進出のハードルを下げるためにもイングランド戦は勝利したい。

日本はオフを挟んで切り替えた。非公開練習では、イングランド戦への秘策も?

日本は15日にレンヌからニースに移動し、16日は完全オフでリフレッシュした。そして、17日は、今大会最多の2時間以上にも及ぶハードな練習をこなした。

スコットランド戦前日にはベテラン選手を中心に選手間ミーティングを行い、試合に向けて気持ちを一つにしたという。スコットランド戦で見せた、チーム全体でゴールに向かう姿勢にはその好影響が見られた。敗退の可能性もある状況から一転、チームは大きく前進した。DF鮫島彩はこう話す。

「初戦を終えて、全員がチームのことを真剣に考えているとわかりましたし、それをぶつけ合う機会もあったので、今はいい状態でチームが進んでいます。本来は大会に入るまでにその過程を踏むべきでしたが、修正が効く状況で乗り越えられたことを無駄にせず、つなげていきたいです。W杯で勝ちたいのはみんな同じですから、同じ方向を向いていこうと思いを確認しました。自分自身は、(高倉監督の下で)新しくなったこのチームで、(2011年に)優勝した時のようなメンバー同士の強いつながりを持って、むしろそれ以上のチームになっていきたいという思いがあるので、そう伝えました」(鮫島)

16日に32歳の誕生日を迎えた鮫島は、15日が23歳の誕生日だったDF清水梨紗とともに、チーム全員からサプライズの祝福を受けたという。

イングランドはどのようなチームか?

「ライオネス」(「雌ライオン」の意味)の愛称を持つイングランド女子代表は、ここ10年間で力をつけてきた。女子W杯では2007年と11年大会連続でベスト8に進出し、15年に史上最高の3位になった。着々と代表強化を進め、FIFAランクを上げてきた。

率いるのは、元イングランド(男子)代表のフィリップ・ネヴィル監督。海外サッカーではおなじみの名前だろう。現役時代はプレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドとエヴァートンで活躍。サイドバックを主戦場とし、複数のポジションでプレーしたマルチプレーヤーだ。13年から指導者になり、18年1月から女子代表を指揮している。
サッカーのスタイルとしては、高さやスピードを備えた身体能力の高い選手が多く、パスをつなぐ力もある。日本戦の前日練習では、重りをつけて走るトレーニングをしていたと聞いた。体が強い選手が多いだけに、コンタクトプレーはできる限り避けたい。

3月のシービリーブスカップで優勝したイングランド。女子W杯でも優勝候補の一角だ

今年3月にアメリカ、日本、イングランド、ブラジルの4ヵ国で行われたシービリーブスカップでは2勝1分で優勝。日本は0-3で敗れている。前半30分までに3失点を喫する苦しい試合だった。

今大会に臨む23名の選手はイングランド女子1部リーグ(FA WSL)でプレーする選手がほとんどで、マンチェスター・シティやアーセナルなどに所属。特に多いのがマンチェスター・シティで、23名中7名を占める。

特に要注意選手となりそうなのが、右サイドのFWニキータ・パリス。162cmと小柄だが、力強いドリブル突破などで違いを見せ、決定力も高い。最近、マンチェスターシティからDF熊谷紗希の所属するオリンピック・リヨンへの移籍が発表された。また、右サイドバックのDFルーシー・ブロンズもリヨン所属。ディフェンダーながら得点力があり、熊谷とともに昨年の初代女子バロンドール候補に選ばれている。

左サイドは、前への推進力があるDFアレックス・グリーンウッドと、国際経験豊富で気持ちの入ったプレーが印象的なMFジル・スコットが縦に並ぶ。トップに入ると予想されるFWエレン・ホワイトは、11年の女子W杯の日本戦でゴールを決めたベテラン選手だ。

ダブルボランチが鍵に

イングランドは引き分け以上で1位通過が決まっているため、そこまでリスクを負って攻めてこないかもしれない。また、今大会の欧州予選では29得点1失点と、堅守も特徴だ。両サイドに攻撃力のあるアタッカーを配しているため、日本の攻撃は常に強力なカウンターのリスクを伴う。

ディフェンスリーダーの熊谷は、守備のイメージについてこう語った。

「イングランドはスコットランドよりもパワーやスピード、テクニックも上のレベルで戦ってくると思います。その中で、スコットランド戦のように前から絞って、サイドへのパスの出どころを抑えたいです。その中で出るエラーをピッチ内で修正しながら戦いたいですね」(熊谷)

熊谷が言う守備の狙いを実現しながらなるべく高い位置で奪い、切り替えのスピードを上げた上で、チャンスでは必ずフィニッシュで終わることが勝利への道を切り開くポイントになりそうだ。

左:MF杉田妃和 右:MF三浦成美

試合の流れを引き寄せるために、ここまで2試合フル出場のダブルボランチ、MF杉田妃和とMF三浦成美の2人が鍵になるだろう。杉田はイングランド戦でのプレーをこんな風にイメージしているという。

「2人で落ちて後ろが重くなると攻撃のスイッチも入りづらいですし、前のサポートも遅れてしまうので、しっかり役割分担したいと思います。ボランチも攻撃参加した方が相手も嫌だと思いますし、先手を取れるように仕掛けていきたいと思います。チームが勝つことが一番ですが、その中でできれば得点に絡みたいですし、相手にとって怖い選手でありたいなと思います」(杉田)

ここまで、大会は欧州勢が圧倒的な強さを見せており、アジア勢は苦戦している。両勢力の対決は7試合行われ、結果は1勝5敗1分。唯一の勝利が、日本がスコットランドに勝った試合だった。

大会はここからさらにレベルが上がっていく。日本は1試合でも多く戦うためにイングランド戦で勝利し、さらなる成長のきっかけを掴みたい。崖っぷちから這い上がり、一体感を高めたチームは難敵イングランドにどう立ち向かうだろうか。


(文・写真:松原渓)

『FIFA 女子ワールドカップ フランス 2019』
日本戦をフジテレビ系にて全試合生中継
<放送日時>
グループステージ
6月10日(月)深夜0時25分 日本×アルゼンチン
6月14日(金)21時49分 日本×スコットランド
6月19日(水)深夜3時50分 日本×イングランド
(※すべて延長の場合あり)

FIFA 女子ワールドカップ フランス 2019特集