女子W杯初戦はアルゼンチンに手痛いスコアレスドロー。強豪ぞろいの組で、ここから問われる高倉ジャパンの真価

FIFA 女子ワールドカップ フランス 2019特集

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FIFA 女子ワールドカップ フランス 2019特集

崩せなかったアルゼンチンのブロック

なでしこジャパンは11日、フランス女子W杯初戦でアルゼンチンと対戦し、0-0で引き分けた。圧倒的にボールを支配していたが、崩し切れなかった。

ボール保持率は日本が61%、アルゼンチンが39%。アルゼンチンの3倍以上の583本ものパスをつないだが、効果的なフィニッシュにつながる攻撃をほとんど見せられなかった。

高倉監督は、「アルゼンチンが引き気味のポジションでゴール前を固めてくる中で、ゴールに向かって変化をつける、パワーを持ってゴールに入っていくところが足りず、足を振り切ることができませんでした」と振り返った。

試合後、複雑な表情で取材エリアに出てきた日本の選手たちに対し、アルゼンチンの選手たちの歓喜の歌声が聞こえてきた。出場3大会目にして初の勝ち点獲得は、アルゼンチン女子サッカーにとって歴史的快挙に違いない。まるで勝ったような喜びようだった。

日本は初戦でアルゼンチンとスコアレスドローに終わった

アルゼンチンは4-1-4-1で、ワントップのFWソレ・ハイメス以外を前線に残して自陣で守備を固めていた。だからこそ、ボールは日本の手中にあった。

だが、選手同士の距離感が合わない。パススピードは遅く、ボールを動かしていても、アルゼンチンの陣形は崩れなかった。前半、攻撃の歯車がほとんど噛み合わなかったのは、W杯初戦特有の空気に影響された部分もあったのかもしれない。日本はスタメン11名中8名がW杯初出場。25,055人の観客が起こす地鳴りのような応援やスタンドのざわつきは、“何が起こるかわからない”異様な雰囲気を醸し出していた。

日本の選手たちが緊張しているようには見えなかったが、互いの意図がここまで合わなかった試合も珍しい。

「ボールを持っていても相手にとって怖くないだろうな、と感じたので、その怖さをもう一つ加えないと点が入らないと感じました」

そう振り返ったのは、MF中島依美だ。

攻撃のズレは守備にも波及し、日本はDF清水梨紗、MF杉田妃和、FW岩渕真奈がイエローカードを受ける想定外の事態に。球際の強いアルゼンチンに対し、慎重にならざるを得なくなった。

後半、流れは変わったものの…

キャプテンでセンターバックのDF熊谷紗希は、「後半は中盤の選手も高い位置をとって、ボールを失ってもすぐに守備に入れた場面がありました。だからこそ、前半からいくべきだったと思います。その点は後半は修正できましたが、決定機を作るところが課題です」(熊谷)と振り返る。

攻撃のリズムを変えられないなら、その中で強引に個で突破を試みたり、遠目からでもシュートを打っていくプレーが欲しい。前半38分にFW菅澤優衣香が右サイドでドリブル突破を試みた場面や、50分にFW横山久美がミドルシュートで相手ゴールを脅かした場面など、流れを変えそうなプレーはあったが、ゴールには結びつかなかった。

その中で流れを変えたのは、57分からピッチに立ったFW岩渕真奈だ。右サイドでボールを受けるとドリブルで相手を引きつけ、スペースを作り出す。その繰り返しで、周囲の動き出しもタイミングが合ってきた。また、前半は左サイドだったMF長谷川唯がトップ下に入ると、全体のポジショニングに流動性が生まれ、ようやくスペースが生まれるようになった。

一方、前半を0-0で折り返したことで、アルゼンチンの“ドロー狙い”がよりはっきりした。接触プレーでは痛がって立ち上がらないシーンが多く、交代時やセットプレーでも、最大限に時間を使おうとする。そこには、親善試合とは違い「勝ち点1は取りたい」というW杯本番ならではの割り切りがあった。日本は直近で強豪国との対戦が続いていたため、守備の確認は重ねていたが、攻撃面で準備不足を露呈してしまった形だ。

点を取れない焦りが悪循環を生み、後半は何度か危ないピンチも迎えている。ボランチで出場したMF三浦成美がピンチの芽をよく摘んでいたが、元を辿れば、自分たちの拙攻が招いたものだ。アルゼンチンの10番、エステファニア・バニーニはボール奪取とキープ力があり、ドリブルも力強かった。彼女を中心にチームはまわり、戦い方の狙いを共有できていた。

逆に、日本は各選手がイメージの引き出しを多く持っているため、噛み合えば多彩な攻撃が可能になるが、イメージが共有できなければ攻守のバランスを崩してピンチを招き、悪循環に陥ってしまう。アルゼンチン戦は、その最も悪い部分が出たように思う。

高倉麻子監督は、常に「想定外」の事態を見据えてチームの柔軟性を高めることを重視し、「ピッチに立つ選手同士で柔軟にイメージを合わせてゲームを作る」という方針を一貫してきた。もちろん、戦術面やセットプレーの狙いなどは非公開練習やミーティングで確認を重ねているだろう。だが、試合中の修正力は、選手間のコミュニケーションが大きなウェイトを占める。だからこそ、オンでもオフでも話し合いを重ね、若手からベテランまで自由に意見や感想が言える風通しのよい雰囲気を作ってきた。その中で、チームの対応力は着実に上がってきたと思う。

しかし、この試合では、苦しい時にチームとして「立ち返る場所」が見いだせていないように感じられた。

問われる真価

パルク・デ・プランスに25,055人の観客が詰めかけた

大会はまだ終わったわけではない。日本の真価が問われるのはここからだ。

長谷川はアルゼンチン戦で噛み合わなかった攻撃の狙いを短時間でしっかり共有していくことを明かし、気持ちを切り替えて、グループステージの残り2試合に向けた覚悟を決めていた。

「(アルゼンチンのように)引いてくる相手は今後少なくなると思いますし、スコットランドやイングランドはボールを回す力も個の突破もあると思うので、割り切って次の試合に向けてしっかり準備していきます」(長谷川)

また、主将の熊谷は、「一番は、気持ちの面でブレちゃいけないということです。引き分けてしまったけれど、私たちの大会は続くので、何としても勝って、前に進むしかないなと思っています」と、チーム一丸となって気持ちを新たに次戦に臨む決意を口にした。

第2戦のスコットランドは、初戦でイングランドに敗れているため、勝ち点3を取りに来るだろう。だが、2位通過という現実的な線を考えた時には、引き分け狙いで来るかもしれない。いずれにしても、相手の戦い方に対して、先手を取る力が試される。

日本は若い選手が多く、勢いに乗れれば一気に上昇気流に乗る可能性がある。そのためにも、試合が停滞した際にチームを引っ張ることができる選手がもっと出てきてほしいと願っている。できれば各ポジションに一人、そういう選手がいてくれれば心強い。

その点も含めて、中3日の準備に注目していきたい。


(文・写真:松原渓)

『FIFA 女子ワールドカップ フランス 2019』
日本戦をフジテレビ系にて全試合生中継
<放送日時>
グループステージ
6月10日(月)深夜0時25分 日本×アルゼンチン
6月14日(金)21時49分 日本×スコットランド
6月19日(水)深夜3時50分 日本×イングランド
(※すべて延長の場合あり)

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