――「浮き指」になっているか簡単にチェックする方法は?

2人1組になって、裸足で立った人の足の指と床の間に、もう一人が名刺やはがきのような薄い紙を入れてみてください。足の指が床に接地してたら止まるはずですが、「浮き指」の人はズボッと入ります。

1人ならば、いつもように立って下半身をなるべく動かさないように足元を見たとき、内くるぶしが見えていたらOK、見えなかったら「浮き指」です。

(提供:橋間診療所)
(提供:橋間診療所)

「浮き指」は1歳頃から始まります

――「浮き指」になると何歳ぐらいから体に影響が出る?

まず「浮き指」がいつから始まるのかというと、約1歳から2歳。歩き始めた時からです。歩き始めた子どもは、床がどんな状況なのか足の裏で探ります。地面に尖った小石のような物があるところで生活していた子どもは、怪我をしないようにそっと歩くでしょう。これがフローリングのようなところであれば痛みもないので足の裏で床を探ることもなく、淡々と歩くと思います。このようにして「浮き指」は歩き始めた時から発生し、外反母趾の大きな原因になります。

私は3~4年前から、児童の外反母趾の統計を行っているのですが、小学校1~2年生あたりからもう外反母趾が出てきて、小学6年生の3人に1人ぐらいは外反母趾になっています。また、小学校1年生~6年生までの姿勢を分析してみると、子どもたちの9割が猫背になっています。

これは、踵に体重を乗せ過ぎて、後ろに転倒することを予防するために、頭を前に出してバランスを取っているのです。残念なことに、10本の指がしっかり床に付いている児童は、私が学校医として診た1年生から6年生の中には一人もいませんでした。

このような外反母趾や猫背は、はじめのうちは痛みが出ません。痛みが出始めるのは大体30歳ぐらい。この頃から深刻な肩こりや腰痛などに困る方が急速に増えて、40~50歳頃からは加えて膝の痛みが出てきます。

さらに、足の指が地面についていないと、体幹の一番下にある骨盤底筋が緩むことが分かってきました。骨盤底筋は便や尿を我慢するための筋肉で、排尿のトラブルと関連があります。女性は40歳を超えると4人に1人が尿失禁を経験するという統計もあり、排尿トラブルがある日本人は今1000万人を超えています。

(画像はイメージ)
(画像はイメージ)

――昨今のコロナ禍で「浮き指は」増えた?どんな影響がある?

コロナ禍の数年間で浮き指の発生件数はかなり増えていると思います。私達は屋外なら段差やマンホール、側溝の蓋などがあるかもしれないので、つまづいたりしないように足で探りながら歩きます。昔なら家の中でも障子の段差などがあったのですが、最近は本当に段差がなくなりました。子どもたちはこのようなところで、何年間か生活したため、足の指の裏の感覚を全く必要としませんでした。

40~50代の大人であれば身体への影響は少ないと思いますが、2~3才児などまだ姿勢の中枢が完成していない子どもが3~4年間を屋内だけで過ごしていたら、整形外科疾患の頻発する60~70代になった時、関節や脊椎の変形などが起こって日常生活に支障が出ることは十分に考えられます。