――「あしゆびプロジェクト」「あしゆび市民モニター」は何をしている?

幼児期では、市内就学前施設において、あしゆびを使った遊びやあしゆび体操、運動能力向上のための体育あそびなどを実施しています。足趾把持筋力と運動能力の関係性については、令和元年度実施した研究において、立ち幅跳びと25m走について関係性があることが分かっています。

高齢期では、転倒予防を目的にあしゆびや体幹機能の強化のための運動プログラム(3か月・全8回)を実施しており、令和3年度は65名の方が取り組み、開眼片足立ち測定では初回平均45.5秒から取り組み後平均63.1秒に、足指力測定では初回平均右3.3㎏・左3.1㎏から取り組み後平均右3.9㎏・左3.9㎏に改善し、体幹の安定度の増強などが図られました。

「あしゆび市民モニター」は、令和2年度から実施しており、足の3Dフットスキャナーと足底圧フットスキャンにより足型や足圧を測定し、足の状態を整えるためのオーダーメイドインソールを作製し、モニタリング期間として3か月間インソールを入れた靴を履いて日常生活を送り、モニタリング終了後足の再測定を行うことで、前後の状態を比較し、効果を検証するものです。一定期間インソールを使用することで足指の状態が整えられ「浮指」「外反母趾」「内反小趾」について約3~5割の改善が図られ、腰や下肢の痛みについても約8割が緩和したと回答しており、取り組みにより健康課題の改善や健康意識の醸成につながったと考えています。

今年度は市制80周年にあたり、これまでの「あしゆびプロジェクト」の取り組みをまとめたリーフレットを作成し、市内全戸に配布を予定しています。
また、これまでの取り組みにおいて、足の健康が体全体の健康づくりに関係することから、今後もあしゆびから展開する健康プロジェクトを進め、市民運動として取り組んでいく予定です。

小学校で行った「浮き指」測定(提供:橋間診療所)
小学校で行った「浮き指」測定(提供:橋間診療所)

「浮き指」の簡単チェック法

泉大津は自治体を上げて「浮き指」対策に乗り出しているが、それ意外の地域に住む人は、どんな対策や予防法があるのか?「浮き指」になる原因は何なのか?
さらに詳しいことを、同市の学校で「浮き指」の測定にも携わっている、橋間診療所の橋間誠院長に聞いてみた。

――なぜ「浮き指」になるのか?どんな害があるのか?

そもそも動物は足の指を接地し、その刺激で体幹を安定させています。例えば両手の指のはらでテーブルを上から押してみてください。お腹の奥の方に力が入っていることがわかります。それが骨盤を安定させるインナーマッスルです。
足の指にも同じ作用があります。私たちの手は動物と異なり、地面から離れています。足の指が接地できていなければどうなるでしょう。骨盤がグラグラの状態になり、学童期から全身の関節や背骨が変形し始め、40~50年で痛みやしびれを生じてきます。


――浮き指の原因は?

例えば、目隠し・裸足で車から外に降ろされ、歩くよう指示されたらどのような歩き方になるでしょうか?かかとから勢いよく歩く人はいないでしょう。足の指からソロソロ歩き始めるはずです。足の指には固有感覚といって、地面の状態を察知するセンサーの役目があるのです。しかし生まれた時から、フローリングや、靴下・靴を履く生活をしている子どもは、足の指で地面の状態を探ることもなく、かかとから接地する習慣がついてしまいます。
他に、サイズのあっていない靴を履く、正しい靴の履き方を知らない、外で長時間遊ぶことがない、などさまざまな原因があります。


――靴文化は西洋の方が長いなのに、なぜ「浮き指」は特に日本で問題になっている?

もともとの筋肉のつき方は、世界中の人でかなり差があります。例えば西洋の人間は少々足の指をうまく使えなかったとしても、もともと体幹の機能を安定させる筋力は非常に強いものを持っています。

一方、日本人や東洋人は骨盤を締めたり体幹を締める筋力が少ないのです。そういう人たちが靴を履く文化を手に入れたため、姿勢の問題や子どもの体力年齢などが徐々に悪化しています。