経済発展に伴い教育熱が高まっているタイには、日本の学習塾も進出している。
そのタイに日本の伝統の計算機「そろばん」を広めようと活動している女性がいる。静岡県でそろばん塾を経営し、暗算8段の腕前だ。
海外でそろばんの魅力を伝えたい
今坂佳美さん:
2が引けなくて困った。困ったときは10を取って、いくつ足す? 8だね

子供たちが熱心に学んでいるのは、そろばんだ。1の位の計算から3桁のかけ算まで、様々な計算に真剣な表情で取り組んでいる。日本のそろばん教室のようだが、実はここはタイの首都・バンコクだ。

この教室を運営しているのは、今坂佳美さん。
暗算8段の資格を持つ今坂さんは、浜松市や湖西市内で3つのそろばん教室を経営している。
そして2020年にバンコクにも進出した。でも、なぜバンコクでそろばん教室を開いたのだろうか。

サナルそろばん・今坂佳美 代表:
この手法を覚えれば、どんな計算もできるので、そろばんをタイでも広めたいと思いました
もともと海外でそろばんの魅力を伝えたいと思っていた今坂さん。子育ても一段落して挑戦を決めたという。
教育熱の高まり 学習塾グループが支援
ただ、海外でのノウハウや十分な資金もない。そこで頼ったのが、仕事上のつながりがあった静岡県や愛知県などを中心に「佐鳴予備校」などを展開する「さなるグループ」だ。

さなるグループは、アジアなどでの教育熱の高まりを受け、既に6年前からタイに進出。日本人向け以外にも、プログラミングや日本語など、タイ人向けの学習塾も展開している。経済発展が続き、中間層が増えるタイでのそろばんの将来性を見込んだという。

サナル インターナショナル・佐藤 英ディレクター:
教育を子供たちに受けさせて、ちゃんとした将来をという父親・母親も多いと思いますし、需要やポテンシャルは十分に考えられる
「上達しようという気持ちは同じ」
タイでそろばんを浸透させることができるのか。今坂さんのチャレンジが続いている。
バンコク近郊のショッピングモールに設けられた、さなるグループの教室で今坂さんが教えていたのはタイ人の小学生2人だ。

今坂さん:
1を足すと?
生徒:
9?
今坂さん:
そう、9。2を足すと?
タイ語も交えながら、いちから丁寧に教えていく。お国柄か、日本の子供に比べてマイペースな子供が多いということだが、楽しさを感じてくれるまで根気よく付き合うことが大事と感じている。
サナルそろばん・今坂佳美 代表:
上達しようという気持ちが、日本もタイの子供も同じなので成長が楽しい
まだまだ参加しているタイの子供たちは10人以下と多くないが、子供たちも親もそろばんの魅力を感じていた。

タイの子供:
楽しい、好き。数の数え方が楽しいから
別の子供:
マスターすれば、計算が速くなる

保護者:
集中力のトレーニングになるので、そろばんを習わせることにした。そろばんを使うことも、計算することも楽しいみたい
目標は公立学校で「そろばん授業」
さらに、いま行っているのはそろばんを教えるタイ人の講師の育成だ。さなるグループのスタッフに毎週指導している。より多くの生徒たちに教えられる体制を整えるためだ。

指導を受けるスタッフ・キムさん:
今坂先生はとても素晴らしい。教え方がとても上手で、わからないと繰り返し教えてくれる。困ったことがあればいつでも相談できるし、生徒を成長させるために私にも一生懸命教えてくれる
サナルそろばん・今坂佳美 代表:
お金を払ってまで、(そろばんの授業を)受けられない家庭もあると思います。できれば、そういった所まで教育を届けることができたらと考えると、タイの公立学校の授業にそろばんを入れることが、私の大きな目標です

今後はタイでそろばんを生産することも考えていて、環境をさらに充実させていこうと意気込む今坂さん。そのチャレンジは始まったばかりだ。
(テレビ静岡)