2022年は日本に接近・上陸する台風が多いようだ。台風などによる大雨で床上浸水してしまったら、元の生活に戻るまでにどのくらいの時間がかかるのだろうか?
8月の台風で中心部の川が氾濫し、約30世帯が浸水した静岡県松崎町の1カ月後を取材した。
断水解消に15日 観光業は…
9月14日、松崎町雲見地区では被災した家屋の窓を開け、扇風機で床下や家財を乾燥させる作業が行われていた。
雨宮帆風記者:
今は穏やかな流れを見せる太田川ですが、1カ月前の台風では大きな被害がでました。土砂を取り除く浚渫(しゅんせつ)作業はすでに完了しています。この地区には30軒の旅館や民宿があり、そのうち24軒が営業を再開。日常を取り戻しつつある人と被害が大きく先を見通せない人、温泉街にはその両方が見られます。
8月14日に伊豆半島に上陸した台風8号。松崎町では336mmの連続雨量を記録し、土砂崩れが起きるとともに雲見温泉を流れる太田川が氾濫。30棟の住宅や民宿などで浸水被害が出た。
民宿 太郎 鈴木八十志さん:
水は階段の3段目くらいまで15分くらいの間にバーッと。今後どうするのか、まだ見通しがつかないね
お盆時期に温泉街を襲った台風。行政や地元の中学生を含むボランティアの力もあって、復旧作業は急ピッチで進められた。
水道管が破損し約70世帯で断水。約30世帯は翌日夜までに復旧したが、残りの約40世帯が復旧したのは15日後だった。この間、消火栓をつないで家庭に水を送ったものの飲料用には使えず、給水車で供給した。
松崎町は伊豆屈指のスキューバダイビングのスポットで、8日後にダイビング客の送迎サービスが再開され、それに伴い一部の民宿と旅館が営業を再開した。
床を張り替え生活再建 作業は慎重に
地元観光協会の会長をつとめる高橋博幸さんの民宿は被害を免れ、復旧活動を手伝いながら宿の営業を続けてきた。雲見温泉の観光客にはリピーターも多く、魅力発信の継続ともてなしが重要と考えた。
かわいいお宿雲見園 高橋博幸さん:
被害にあっていない宿が一生懸命やることが、雲見のためにもなると考えています
一方、床上浸水し被害の大きかった民宿は、片付けに追われる日々だった。床下の泥のかき出しや消毒が終わり、乾燥作業が続けられている。
民宿 太郎 鈴木八十志さん:
今ちょうど床下が乾いたくらいの時なので、大工さん、検査する人と相談して、床をどのように張っていくか。張ってしまうと乾きが悪くなるので、検査員にカビの状況などを見てもらって、妻と相談しながらやっていきます
早く取り戻したい日常。しかし、作業は急げばよいというものではないようだ。
松崎町防災アドバイザー 玉木優吾さん:
早く普通の生活、営業に戻れるようになればいいと思うのですが、今急いで建材が腐る事態になると、また床板をはがして修復しなければいけない。慌てずにお願いできればと思っています
民宿 太郎 鈴木八十志さん:
切り替えてやるしかない。少しでも早くオープンしたい。年内、12月には始めたい
募る不安 営業再開できない民宿の思い
温泉街の上流にある土石流が発生した現場では、県による復旧作業が引き続き行われている。また災害見舞金の支給や義援金の配分なども始まる。
多くの観光客が楽しみにするイセエビ漁もまもなく始まり、延期となった花火大会も10月8日の開催が決まった。
それでも被害の大きかった人ほど、新たな災害を恐れる気持ち、将来への不安がぬぐえないようだ。
民宿 吉右衛門 高橋勝己さん:
床下を乾燥させなければいけないのに、雨が降ったり、湿気があったり…。また土砂崩れ、山が崩れそうなので、ちょっと不安はあります。あとはもう収入がないので、どうやって生活しようかという不安だけですよね
雨宮帆風記者:
漁師民宿「太郎」は5つの部屋に約20人が宿泊可能で、イセエビ漁師で板前でもある鈴木さんが振る舞う料理と温泉が自慢の宿です。8月の台風では床上70cmまで浸水したそうですが、当時はどんな状況でしたか
民宿 太郎 鈴木八十志さん:
店の前の川から、泥水が玄関のガラスを割って1階に入り込んできました。あっという間に水浸しでした
雨宮帆風記者:
1カ月が経ち、現在はどんな作業を行っているのでしょうか
民宿 太郎 鈴木八十志さん:
大工さんと相談しながら、乾いたところは床を張っていく状態です。乾いていないところは扇風機をあてて乾かしています
雨宮帆風記者:
1カ月たっても営業再開できず、つらい思いもあるのではないですか
民宿 太郎 鈴木八十志さん:
温泉街なので少しでも早く再開したいという思いはありますが、しょうがないかな
雨宮帆風記者:
これからどんな支援が必要でしょうか
民宿 太郎 鈴木八十志さん:
家を直すのにお金がかかるので、行政と一緒になって少しでも負担がないようにやっていけたらと思います
雨宮帆風記者:
これからイセエビ漁が始まりますが、海にも大量の泥が流れたため、漁を始めてみないとその影響はわからないということです。1日でも早く活気が戻ることが期待されますが、一人一人どんな支援ができるか改めて考えることが必要と感じました
台風被害を受けて、松崎町は義援金の募集を続けている。金融機関の指定口座に振り込むか、町役場に持ち込むことで協力することができる。義援金の募集は11月17日まで。
(テレビ静岡)