中国がワイン産業で世界市場の覇権を狙っている。習近平国家主席はワイン産業を国策として推進し、国際的なコンクールで受賞するなど質の向上も図られている。日本を含む海外市場への輸出も進んでおり、日本でも中国ワインを口にする機会が増えていくかもしれない。
「中国のワイン市場の潜在力は大きい」
習近平国家主席が旗を振る、中国の「国策ワイン」の知られざる実力を取材した。

中国のワイン造りのカギを握るのが、内陸部にある寧夏回族(ねいかかいぞく)自治区。人口の3割以上がイスラム教徒だ。
3000m級の山々の麓には、約3.9万ヘクタールの、広大なブドウ畑が広がっている。ワイナリーの数は228。中国全体の半分近くのワインが寧夏で製造されている。

有名ブランドの「モエ・エ・シャンドン」も進出するなど、盛り上がるワイン産業を支えているのが、近代的なワイン工場だ。その壁には、視察に訪れた時の習近平国家主席の言葉が掲げられていた。
「中国のワイン市場の潜在力は大きい」
この20年間で4回も寧夏を訪れたという習近平国家主席が、ワイン産業の発展を指示したメッセージは、あらゆるワイナリーに掲げられている。
ワイナリー従業員は「習近平国家主席は、寧夏のワイン産業をとても気にかけている。だから私たちは力を入れて、ワイン産業を発展させます」とコメントしていた。

ここからはFNN上海支局の沖本有二支局長がお伝えする。ワイナリーを取材して、そのスケール感と圧倒的な成長力に驚いたという。中国のワインいうとあまり馴染みがないが、どんな味がするのか?
寧夏のワインを飲んだ沖本支局長によると、「しっかりしていて程よい酸味があって、しつこい中華料理でも合いそうな、ものすごくおいしいワインです」という。

寧夏のブドウ畑は、20年前の時点で、すでに日本のワイン用ブドウ畑全面積と同じ規模だったが、現在はその15倍に広がっている。
また規模だけでなく、国際的なコンクールで数多く受賞するなど、質も高く評価されるようになった。
ブドウ栽培に適した気候、広大な土地、政府の強烈な後押しによって、寧夏のワイン産業は日本では考えられないスピードで今も成長し続けている。

習近平国家主席がそこまでワイン産業に力を入れる理由とは…。
中国では、一時のワインブームに乗って海外からの輸入が急増し、国産ワインの消費を追い抜いてしまったことがあった。全てにおいて国内製品の競争力を高めたい中国としては、ポテンシャルのある寧夏のワインを成長させるのは、当然の選択肢だったのではないだろうか。
世界のワイン業界の“黒船”に?
今は中国に「ワイン」というイメージはないが、この“国策ワイン”は今後、日本や世界の市場に広がっていく可能性もあるのか。

中国は、本気で世界のワイン市場を狙ってきているかもしれない。
上海のワイナリーには「中国ワインは、いつか世界を驚かせる」と書かれていた。実は、これも習近平国家主席が現地を視察した時に残した言葉だ。まるで地域のスローガンのように、あちこちのワイナリーに大々的に掲げられていた。

2022年のデータでは、輸出された中国ワインは全体のわずか1%ほどしかなかった。その輸出先も香港やマカオなど、いわゆる中華圏が中心だ。
しかし、取材したワイナリーには、4年前から日本向けの輸出を始めたところもあった。

中国ワインの世界進出について、長和翡翠酒庄・張艷莉社長は「2023年11月までの統計では、輸出の占める割合は売上の約15%だった。今、中国はいくつものワイナリーが海外進出して、ブランドの知名度を高めることが必要」と話していた。
目線は世界にも向けられていて、日本でも中国ワインを口にする機会が増えていくかもしれない。
沖本支局長が試飲したのも、このワイナリーから日本に販売されているシリーズの一つ。ネット通販で3500円ほどで購入したものだが、日本で入手すると1割以上は高くなるかもしれない。
しかし、寧夏ワインは中国では「高級ワイン」という位置づけなので、世界の高級ワインと比べるとリーズナブルと言える。このクオリティのワインが大量に輸出され始めると、世界のワイン業界にとっては黒船的な存在になるかもしれない。
(「イット!」 12月27日放送より)