たんの吸引など、医療的なサポートが必要な“医療的ケア児”は新潟県内に約300人いるとされている。こうした子どもの両親をサポートしようと、医療的ケア児を預かる施設が新潟市にある。オープンから半年以上が経過し、利用者、そして施設を運営する人たちの思いを取材した。

「お母さんたちを支えたい」新潟市にオープンしたデイサービス施設

新潟市中央区にあるSMiDデイサービス『なな色』。

『なな色』
『なな色』
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ここは、人口呼吸器の使用やたんの吸引などが日常的に必要な“医療的ケア児”が利用できる施設で、2025年4月にオープンした。利用できるのは、新潟市内に住む0歳~18歳までの子どもたち。

なな色を運営しているのは、NPO法人Briidge。看護師の金子まゆみさんが理事長を務めている。

金子まゆみさん
金子まゆみさん

「訪問看護に携わっている中で、24時間自宅で介護している状況を目の当たりにして、お母さんたちを支えたいなと思った」となな色をオープンした背景を語る金子さん。

24時間目が離せない“医療的ケア児” 

斎藤雫華ちゃん(4)も、なな色を利用している一人だ。

斎藤雫華ちゃん
斎藤雫華ちゃん

新潟市西区に住む雫華ちゃんは4人兄弟の末っ子。長男と長女は独立し、今は両親と小学2年生の兄・柊臣くんの4人で暮らしている。

「喘息があるので吸引したり、自力で便が出せないので、医療的ケアはすべてやっている」

こう話す母・友美さんのお腹の中にいるとき、検診で異常が見つかった雫華ちゃん。

雫華ちゃんの母・友美さんと兄・柊臣くん
雫華ちゃんの母・友美さんと兄・柊臣くん

その後、染色体異常による知的障害や重度の心疾患などを患う18トリソミーと診断された。

雫華ちゃんは自分の口から食べることができず、腸に管を入れて栄養をとっている。また、雫華ちゃんは急に体調を崩すこともあるため、24時間目が離せない。

友美さんは「元気で吐いたりもなく、目が離せたとして10分…は長い。5分くらい」とその現状を話す。

“なな色”利用で負担軽減「時間を気にせず買い物できる」

雫華ちゃんのように医療のケアが必要な子どもたちは県内に300人いると推計されている。そのほとんどの人たちが家族のみでケアしているのが現状だ。

しかし、雫華ちゃんの母・友美さんは、なな色がオープンしたことで負担が軽減したという。

「買い物とかもゆっくり時間を気にせずしたことがほとんどなかったので、生き返らせてもらっている」

療育・リハビリで子どもたちに変化

なな色は希望する家族には子どもたちの送迎も行っていて、お迎えには必ず看護師が立ち会っている。

雫華ちゃんの場合、酸素や薬・着替えなどを乗せ、移動中は看護師が寄り添い、車内で体調に変化がないか確認。なな色に到着するとすぐに酸素濃度を測る。

なな色の定員は1日5人。看護師や保育士、そしてリハビリを担当する理学療法士がスタッフとしてケアにあたる。

そして、なな色が力を入れているのが、その子にあった遊びや学びを提供する療育だ。リハビリも両親と話し合い、その子の体調に合わせて行う。

理学療法士の遠藤麻美さんは雫華ちゃんについて「蹴る力がすごくついた。ちょっとサポートするとお尻を上げたりとか上手にできるようになってきた」と話す。

こうした療育やリハビリを続けることで子どもたちに変化が出てきたと金子さんは話す。

「言葉をかけたり、五感を刺激したり表情が出てくる、動きがでてくる。目線で追ってくるとか、そういうところの成長・発達が感じられる」

当初は“なな色”利用に迷いも…

なな色がオープンした当初は、施設を利用するかどうか迷っていたという雫華ちゃんの両親。

友美さんは「『18トリソミーは短命』と言われる。1秒でも一緒にいたいので、預けた日のことも、後に何かあったときに後悔するのではないかと思っていた」と明かす。

ただ、雫華ちゃんの父・寛之さんは友美さんの負担も理解していた。さらに24時間、目が離せない雫華ちゃんがいる中で、次男の柊臣くんとの時間がつくれていなかった。

寛之さんは「一緒にどこかに行ったりとか、柊臣にはいつも我慢させてきたので、思い切り遊べる時間は必要だと思っている。なな色の存在はすごく大きい」と話す。

そして、雫華ちゃんもなな色で過ごすようになってから笑顔が増えたという。

「なな色からかわいい写真が送られてくる。良い顔をするんだなと、なな色に行ってうれしいことだったり、そこにいられること、思えることが自分はうれしいし、大事なこと」と寛之さんは顔をほころばせた。

金子さんも「子どもを成長させたい、他の子と関わらせたい、親も社会とつながりたいと思ったときに、そういう場があるという場所でありたい」と話す。

大人になってもサポートできる施設開設を目指す

なな色がオープンして半年。課題も見つかっている。

医療的ケア児は、高校を卒業する18歳を超えると大人とみなされるため、こうした施設を利用できなくなるのだ。

金子さんは今後、なな色のような施設を増やす計画で、将来的には大人になってもサポートできるような施設を開設したい考えだ。

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NST新潟総合テレビ
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