赤く染まった両頬。手足まで広がる発疹。伝染性紅斑、いわゆる「リンゴ病」だ。
今、子供たちを中心に全国で感染が急拡大する異例の事態に。
妊娠中の人が感染すると、深刻な影響を受け、胎児にも危険が。
猛威を振るう「リンゴ病」。感染拡大の背景と知られざるリスクを独自取材した。

■大阪ではリンゴ病の患者が急増
大阪府箕面市にあるクリニック。先月からリンゴ病の患者が急増していた。
リンゴ病のような症状がある小学2年生に、症状を聞いた。
医師:ほっぺた見せてくれる?ホワンとした感じ。
母親:昨日の夜、この辺も若干赤くて。
頬はうっすらと赤く、身体に発疹もある。
母親:蕁麻疹みたいになってて。
医師:ここ赤い感じがあるので、今流行っているリンゴ病の可能性があるのかなと。
診断結果はリンゴ病。この1週間前、弟も感染していたそうだ。
(Q:頬が真っ赤になったときはどう思った?)
小学2年生:リンゴ病と思った。
(Q:どんな感じだった?)
小学2年生】「かゆい感じだった。
母親:蕁麻疹、熱中症かなって思ってたのでこれがリンゴ病なんだなって」
(Q:いつなったかわかった?)
母親:全然わからないです。だから怖いです。

■「リンゴ病」は10日から20日という潜伏期間の長さが特徴
風邪のような症状が出た後、頬などに赤い発疹が出る伝染性紅斑、通称「リンゴ病」。
小学校低学年までの子どもが感染することが多く、主な感染経路はウイルスによる飛沫感染・接触感染とされている。
重症化することはまれですが、やっかいなのがおよそ10日から20日という潜伏期間の長さ。
玉谷キッズクリニック菅原祐一院長:ほっぺたが赤くなる時には感染力はもうないのですが、リンゴ病ですねと診断がついたとしてもその時は本人は治っていていいんですが、時すでに遅しで、すでに他の人に移してしまっている状況になるので。

■大阪では統計開始以来初の「警報値」超えに
リンゴ病は5年ほどの周期で流行し、2019年を最後に落ち着いていたものの、ことしに入り急増。
先月22日までの1週間に報告された患者数は、1医療機関あたり2.53人と、過去最多となった。
大阪府でも先月から、感染拡大のレベルが統計開始以来初の「警報値」超えに。
中でも警戒しないといけないのが…
吉村知事:特に妊婦さんはリスクが高い。周辺にいらっしゃる方はぜひ気をつけてもらいたい。
リンゴ病は妊婦が感染すると、胎児に異常が起き、流産する恐れがあるのだ。

■妊娠中にリンゴ病の疑いと診断された女性は…
関西テレビは先月、妊娠8カ月の時にリンゴ病の疑いと診断された30代の女性を取材した。
リンゴ病の疑いと診断・妊婦のハナさん(30代):38度くらいの熱が出たのと、喉の痛みと咳がありました。まさか自分がかかっているとは思いませんでした。
ハナさんは5月下旬に息子がリンゴ病を発症。
自身も体調不良となり、病院で「赤ちゃんの体重が増えなかったりした場合は、リンゴ病の影響で(成長が)遅くなってるかもしれないので緊急で帝王切開した方がいいんじゃないかというような話は最悪のケースとしてはあり得ると」言われたそうだ。

■赤ちゃんがリンゴ病に感染すると怖いのが「胎児水腫」の恐れも
成長が遅れるほか、赤ちゃんがリンゴ病に感染すると怖いのが「胎児水腫」の発症。
貧血が起きた後、胸やおなかなどに水がたまり流産につながる恐れが。特に妊娠初期の場合は、そのリスクが高まる。
ハナさんにとっては待ち望んでいた第二子。
リンゴ病の疑いと診断・妊婦のハナさん(30代):第二子が授かるまで色々と不妊治療をして、やっと授かった子供なのでかかっちゃってすごい不安にはなりました。
妊娠後期でしたが、1週間に一度病院に通い経過観察。幸いにも現在までに胎児への感染はなく、順調に育っていることが分かった。
リンゴ病の疑いと診断・妊婦のハナさん(30代):(リンゴ病って)聞いたことはあるのにこんなに感染力がすごく高くて、気づいた時にはもう手遅れになる状況の病気だと思っていなかったのでちょっと怖いなと思いました。

■集団感染が起きやすい保育の現場では、感染対策を徹底
リンゴ病で特に注意が必要なのが、集団感染が起きやすい保育の現場だ。
まだリンゴ病を発症した子供は出ていないという大阪市内の保育園を取材した。
看護師・松浦愛さん:リンゴ病って知ってる?
園児:知ってる!顔がリンゴみたいに赤くなる!リンゴ病もしんどい?
看護師・松浦愛さん:しんどいと思う。
この保育園では保育士のほかに、看護師が一人常駐し感染対策を徹底している。
おやつを食べる前などはしっかり手洗いをし、そして食べ終わったら子供たちもしっかりと机を拭きます。さらに、1時間に1回の換気も忘れない。
看護師・松浦愛さん:(感染しない)体づくりをみなさん意識してやってくれることが感染ゼロにつながってくる。(リンゴ病は)これから流行ってくる可能性もある。しっかり掃除や子供たちの体調の変化に早く気づけるようにサポートできたら。

■「リンゴ病」の感染対策は「手洗い・うがい・マスク」
妊婦が感染すると流産や胎児に異常が出るリスクもある「リンゴ病」。どのような感染対策が有効なのか。
長崎大学高度感染症研究センターの森内浩幸教授によると、「リンゴ病にはワクチンがなく、治療薬もない。アルコール消毒も効果がなく、感染拡大を止めるのは非常に難しい」ということだ。
そして、手洗い・うがい・マスクなど、基本的な感染対策で予防することが大切だそうだ。
猛威を振るうリンゴ病にかからないために、正しい感染対策を知って実践することが大切だ。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年7月4日放送)
