長野県長和町の長門牧場はこの春、過去最多の新卒4人を採用しました。経歴も出身もバラバラな女性4人。そこには牧場の狙いがありました。

■観光客から人気の牧場

長和町の長門牧場。約210ヘクタールの敷地に180頭の牛を飼育しています。

牧場では新鮮な牛乳で作ったソフトクリームなどが食べられます。観光客からも大人気。

京都府から:
「ミルクの味も濃くて濃厚でおいしい」

塩尻市から:
「おいしい。牛や動物に感謝して食べなきゃなと思う」

■過去最多 4人の新入社員

牛乳の生産から、製品の加工、そして流通・販売まで手がける「6次産業化」を長年、手がけて来た長門牧場。

さらに力を入れようとこの春、過去最多、4人の「新入社員」を迎え入れました。

長門牧場・児玉洋子副社長:
「(4人の入社は)うれしくてやったーと思いました。社内も高齢化してきて、後継者を育てていかなくてはいけない」

長門牧場の現在の社員数は35人。

「新卒採用」を始めたのは2023年からです。もちろん人手不足が背景にありますが、狙いはそこだけではありません。

■地元・長野で畜産に携わりたい

酪農部門に配属された小谷村出身の片山柊さん(22)。

酪農部門・片山柊さん:
「3時半に出社して、朝一番に搾乳をして。朝早いし夕方まで1日しっかりやるので体力的にもきつい面もある」

子どもの頃から動物や自然が大好きだった片山さん。岐阜大学に進み動物、植物、環境などを学びました。そして、地元・長野で畜産に携わりたいと長門牧場を選びました。

片山柊さん:
「産業動物に興味があって、経済を回す動物について興味があって畜産を選んだ」

■自然豊か、ここで暮らすと楽しそう

まだ、なれない手つきで子牛にミルクをあげるているのは新潟県出身で動物福祉の専門学校を卒業した本名海音さん(21)。本名さんも酪農部門です。

酪農部門・本名海音さん:
「インターンシップで来た時に、いろんな人に優しくしてもらって、自然が豊かで、ここで暮らすと楽しそうだなと思って」


■憧れていた場所で働ける

一方、牧場の隣のレストハウスに配属されたのは上田市の櫻井実咲さん(18)。この春、市内の高校を卒業しました。

レストハウス部門・櫻井実咲さん:
「家族で何度も訪れた場所でした。以前から憧れていたこの場所で働けることがすごく幸せ」

今はレストランで盛り付けや接客などを行っています。

櫻井さんの上司は―。

レストハウス部門・赤松祐樹部長:
「料理に興味があって、調理師の免許を取りたいと話をしているので、料理を作る方にも携わってもらえたら」


■京都府出身 大学は法学部

営業部門に配属されたのは京都府出身の林杏美果さん(23)。この日はソフトクリームを箱詰めする作業に追われていました。

営業部門・林杏美果さん:
「(毎日)すごく楽しいです。毎日、飽きない。自然を見てて癒やされる」

子どもの頃から動物や自然が好きだった林さんでしたが、地元・京都の同志社大学法学部へ進学。

コロナ禍だったこともあり1年休学し、「ワーキング・ホリデー」制度を利用してオーストラリアへ留学した経験もあります。

そんな林さんがなぜ長門牧場に―。

林杏美果さん:
「自然が好きなので、ものを作る仕事(1次産業)が人間が生きていくにあたって重要な仕事だと思ったので」

農業や酪農など「1次産業」に興味はあったものの、学んではこなかった林さん。進路に悩みましたが、6次産業に力を入れている長門牧場ならば働けるのではと就職を決めました。配属されたのは「営業部門」で商品の企画・販売を担当しています。

林杏美果さん:
「(大学の法学部では)周りに牧場に就職した人はいなかったのでビックリされて、聞いたことがない環境でもあり(両親や友人が)応援してくれて、行ってみたいと思う友達も多くてうれしかった」


■狙いは?経歴も志望動機もバラバラ 

昔から通っていたファン、大学や専門学校で動物や自然を学んだ学生。そして、専門外の法学部出身者も。経歴も志望動機もバラバラな4人を採用した牧場。それこそが狙いです。

長門牧場・児玉洋子副社長:
「新卒を採用して、いろいろな才能や行きたいところへ異動ができて職場の活性化になるように。(例えば)関西の子もいるので関西の方にまた営業開拓するようなことも期待できるし、県外で得てきた経験も生かしてもらって」

これまで長門牧場は経験者や専門知識のある人を「中途」で採用することが中心でした。人手不足で採用も難しくなる中、様々な部署があることをアピールし、人材を確保。新卒採用者は異動の可能性もあり、酪農から加工、流通・販売まですべてができる人材を若いうちから育てることもできます。


■酪農部門ではロボットも導入

また、同時に働きやすい職場環境づくりも。

「重労働」だと思われがちな酪農部門では機械化を進めています。全自動で搾乳を行い、体調なども管理するロボットも導入しました。

酪農部門・片山柊さん:
「機械ができるところは機械がやって、人間が手を出さないといけないところはやって、作業分担していければ。牛の一生に寄り添える仕事を、自分の手でできるようになる今後がもっと楽しみ」

■魅力ある牧場をみんなで

それぞれの配属先で働き出した4人。牧場も期待しています。

長門牧場・児玉洋子副社長:
「楽しく自分の好きなことを積極的に見つけてやってほしい。(ずっと)同じ部署にいなくてもいい。意見をどんどん生かして、いろいろな経験をして魅力ある牧場をみんなでつくっていきたい」

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