秋田県大仙市でタンポポで地域を盛り上げようと奮闘する男性に注目。希少な日本タンポポの栽培や商品開発に取り組んでいます。
大仙市の協和峰吉川地区です。自然豊かなこの地域の一画を黄色く彩っているのは、タンポポの花です。
このタンポポ、自生しているのではなく栽培されているもので、4月の冷え込みで例年より2週間以上遅れたものの、2025年も美しく花を咲かせました。
このタンポポを栽培しているのが今野孝一さんです。今野さんは、峰吉川地区をタンポポで盛り上げようと、10年ほど前から栽培に取り組んでいます。
今野さんが育てるタンポポ、実は私たちが街中などでよく目にするタンポポとは少し違います。
よしかタンポポプランニング・今野孝一さん:
「いわゆる『日本タンポポ』と呼ばれているタンポポ」
「日本タンポポ」は日本固有の在来種。一方、私たちが道端などでよく見かけるのは、ほとんどが海外から入ってきた「西洋タンポポ」です。
どちらのタンポポかは、花の下にある「総苞片(そうほうへん)」と呼ばれる部分に注目すると簡単に見分けられます。総苞片が上を向いて花にくっついているのが「日本タンポポ」。下に反り返っているのが「西洋タンポポ」です。
在来種の日本タンポポは年々減少しているといいます。
今野孝一さん:
「峰吉川地区では、おそらく今だと自生するタンポポの5000本に1本くらいの割合。日本タンポポが育つ環境がどんどん奪われているのが一番の原因」
今野さんは、緑にあふれ空気もきれいな峰吉川地区を“日本タンポポの里”にしようと、地域で見つけた1本の日本タンポポの種から少しずつ花を増やしてきました。
地域の人たちと協力して雑草を刈るなど、日本タンポポが成長しやすい環境を整え、今では3つの畑で合わせて約2万本を栽培しています。
今野さんが大事に育てたタンポポは、見て楽しむだけではなく、味わうこともできます。
今野さんが開発したのはタンポポコーヒー。製造の様子を見せてもらいました。
まずは、乾燥させた日本タンポポの根を細かく砕いて粉にします。この段階で良い香りが漂います。今野さんいわく「タンポポの下にアリが巣を作る。そのくらい甘みがある」ということです。
粉にしたものをフライパンで焙煎します。大量生産はできませんが、全て手作業で行うのが今野さんのこだわりです。
熱してダマになってきたら機械で細かくし再び焙煎。納得いくまで作業を繰り返したらタンポポコーヒーの完成です。
今野さん自慢のタンポポコーヒーは、香ばしい香りと優しい苦み。今野さんは「この優しさ、マイルドさが日本タンポポの特徴。せっかく手間暇かけて育てたタンポポを、完璧な形で飲んでもらいたいという思いで作っている。タンポポコーヒーでは日本で一番だと思ってやっている」と胸を張ります。
アイデアマンの今野さんは、コーヒーにとどまらず、キャンディーやパウンドケーキなど日本タンポポを使った商品を10種類ほど生み出してきました。
2025年に入り、また新しい商品を完成させました。タンポポコーヒーのビールに、サイダーです。
タンポポコーヒーサイダーは、まるでコーラのような甘さながら、後味はしっかりコーヒーのマイルドな苦みが感じられます。
今野さんは「評判良いですよ。サイダーでありコーヒーであるというものができたので、自分なりに満足している」と話し、こちらも自慢の一品のようです。
開発意欲がとどまるところを知らない今野さん。「日本タンポポは環境と一緒に考えてもらいたい部分があって、日本タンポポの輪を県外含め広げていきたい。秋田県あちこちへ行っても西洋タンポポに負けないくらい日本タンポポがある、そんな状態ができたらいいと思っている」と今後の目標を話してくれました。
「日本タンポポ」を当たり前に目にする環境を目指して、今野さんの活動は続きます。
日本タンポポを使った商品は、県内の道の駅などで販売されています。また、今野さんは県内の生産者と連携し、各地の特産品を活用した商品開発にも取り組んでいて、そちらの活動にも注目です。