航空自衛隊の練習機が愛知県犬山市の入鹿池に墜落した事故で、一夜明けた5月15日も乗っていた2人の捜索が続いています。
■乗っていたのはベテランと中堅…ダイバーも参加し捜索続く
15日の捜索はヘリコプターやボートだけでなく、消防隊員のダイバーが水中に潜り、安否のわからない隊員の捜索が続けられています。

14日午後3時すぎ、小牧基地を離陸して宮崎県の新田原基地に向かう途中だった航空自衛隊のT4練習機が、入鹿池の北西あたりに墜落しました。

近くにいた人A:
ドーン、ドーンという音を2回聞きました。破片とか、燃料だと思うんですけど油がすごく浮いていた。
近くにいた人B:
飛行機がめっちゃ近くで飛んでいる音がした後に、ドン!みたいな音が。ガソリンっぽい匂いが充満していた。

練習機に乗っていた第5航空団所属の井岡拓路1等空尉(31)と、網谷奨太2等空尉(29)の安否がわかっていません。2人はベテランと中堅の操縦者でした。
■離陸からおよそ2分で…なぜ池に墜落したか
小牧基地を離陸した練習機は、およそ2分後にレーダーから消失しました。
離陸を撮影した人A:
手を振って、いつもどおり。
離陸を撮影した人B:
撮っていて何も違和感がなかったので。煙もいつも通りだったですし、排気ガスが異常な色をしていたとか、そういうのも全くなかったですね。

練習機は、別の戦闘機を定期修理に出したあと、隊員を新田原基地に戻すために小牧を訪れていましたが、いつもと変わった様子はなかったと言います。
墜落した練習機は、滑走路を北に向かって離陸し、右に旋回した後、およそ13キロ離れた入鹿池に墜落しました。知多半島を抜けて太平洋に出て宮崎県へ戻るという、計画通りのルートでした。

事故翌日の15日午後2時には、防衛省の金子容三政務官が犬山市役所を訪れ、市長らに報告を行いました。
犬山市の原欣伸市長:
どうして場所が入鹿池だったのか。原因究明と、これからの安全対策の早期対応のお願いを申し上げました。

離陸からわずか2分後にレーダーから消えた練習機は、なぜ入鹿池に墜落したのでしょうか。
航空自衛隊元空将/麗澤大学の織田邦男特別教授:
もし何かあったらここに飛行機を捨てるという、脱出する際に飛行機が下の民家を傷つけたり、国民の皆さまに迷惑をかけないようにするには、ここに捨てるのが一番いいなと。「脱出適地」という言葉はないんですけど、みんな多分それは思っていたと思います。

防衛省によりますと、墜落前に異変を伝える交信はなく、緊急事態の宣言も確認されていないということです。
また、練習機にはフライトレコーダーは搭載されておらず、機体から「緊急脱出」を行った場合に発信される「緊急信号」は確認されていないこともわかりました。
小牧基地には15日午後4時過ぎ、市民グループが訪れ、原因究明や再発防止策を明らかにするとともに、住民説明会の開催などを求める請願書を提出しました。

15日午後5時には防衛省の金子政務官が愛知県庁を訪れ、大村知事に事故についての報告を行いました。自衛隊機が墜落した入鹿池は、農業用のため池として利用されています。

大村愛知県知事:
入鹿池の湖面に油が浮いていることも確認されておりますから、いち早く取水口にオイルフェンスをはって、物理的に油が農業用水に混入することはない。農業用水の安全確保については万全を期していく。
■操縦ミスや機体異常の可能性は…専門家の見解

練習機が墜落した状況について、元パイロットで、小牧基地の離着陸の経験が豊富な織田邦男元空将は「今回のパイロットはベテランで、操縦ミスは考えにくいのでは。脱出できなかったのは、民間に被害を与えないように入鹿池まで必死に飛行機を持って行ったからではないか」と話しています。

同じく元パイロットで、自衛隊の事故調査委員会の委員長を務めた経験もある永岩俊道元空将は「離陸時の映像は安定している。突発的にエンジンや操縦系統などに深刻な事態が発生した可能性がある」としています。
(東海テレビ)