宮城県が主導する4病院再編構想について、仙台市青葉区にある東北労災病院は富谷市への移転を断念し、現地で存続することになりました。
宮城県が4病院再編構想を打ち出してから約3年8カ月。5月9日、大きな節目を迎えました。
東北労災病院を運営する労働者健康安全機構 大西洋英理事長
「東北労災病院の移転に伴う、建設工事や医療機器の整備に必要とされる多額の資金を確保することは困難である。東北労災病院の富谷市への移転を断念する」
県が主導する4病院再編構想では、青葉区の東北労災病院と名取市の県立精神医療センターを併設し、富谷市に移転する計画でしたが、去年11月、県が医療センターの移転を断念。東北労災病院の動向に注目が集まっていました。
東北労災病院を運営する労働者健康安全機構は9日、コロナ後の急激な経営環境の悪化などを理由に、移転を断念すると県と富谷市に説明しました。
宮城県 村井知事
「苦渋の決断であるということであるならば、我々として受け入れざるをえない」
これまでさまざまな議論を呼んできた4病院再編構想。4年前、村井知事が知事選の公約にもした肝いりの政策は、一部が実現できず幕を下ろすことになります。
宮城県 村井知事
「コロナで潮目が変わった。二転三転しているように見えるが、確かに二転三転しているのは事実だが、決して右往左往しているわけではなく、一つ一つ課題を解決しながら、次に前に進んでいくと捉えている」
記者リポート
「病院の移転に向け、この場所を候補地として取得していた富谷市。突然の移転断念を市民はどう受け止めているのでしょうか」
富谷市民
「もったいないね、みんな期待していたと思った、病院できるのを」
「ちゃんと来るなら来てほしかった。開発に使ったお金だったり住民の協力もあって開発した土地だったから、その努力を踏みにじったのはひとつじゃないか」
富谷市では約14億円を予算化し土地を取得することにしていて、若生裕俊市長は9日、公募を含め病院の誘致を続ける方針を明らかにしています。
一方、仙台市の郡市長は構想を主導してきた“県の責任”を厳しく問いました。
仙台市 郡市長
「残念ながら東北労災病院も移転することが前提にあったので、受診する患者が減少しているというお困りの声も現場からも聞いている。この構想自体を提示してきた県としての責任をどのように考えているのかは、これから県の考えをしっかり聞かなくてはいけない」
また、当初から構想の白紙撤回を求めてきた市民団体は、今回の移転断念を評価した上で、県の対応を批判しました。
東北労災病院を守る会 小玉高弘事務局長
「進め方が乱暴だったと率直に感じる。県政の行き詰まり、そんな問題点が大きく出た医療問題だったと感じる」