能登半島地震から1年4カ月。富山県内の被災地は復旧復興への動きが続いています。
高岡市伏木。
あの日、液状化被害に見舞われた老舗アイスクリーム店が1日、再出発の日を迎えました。
高岡市伏木の「前山冷菓店」
創業90年、看板メニューのアイスモナカとソフトクリームが人気です。
宮本喜代美さん。
三代目として守ってきた店は能登半島地震で被災しました。
＊前山冷菓店 宮本喜代美さん
「外れてというか裂けてしまった。空が見える」
液状化で傾いた建物は、市から、損傷率が20％に満たない「準半壊」と判定されました。
「準半壊」の場合、市の支援は20万円。
しかし、店を続けるには、解体に加え、地盤調査、店舗の建て替えで、2500万円ほどの費用がかかります。
それでも、宮本さんに迷いはありませんでした。
＊前山冷菓店 宮本喜代美さん
「（店を）やめようとは思わなかった。『また来年も来るからやってね』と言われたら、ちょっと直してまたやろうかなと」
想定より3か月遅れでみせの解体工事が始まる。
＊前山冷菓店 宮本喜代美さん
「長い年月を思うと、『こんなものか』と思う」
高岡市伏木は、地震で、甚大な被害を受けました。
およそ500世帯が被災。既に転出した世帯、考えている世帯は、あわせて100を超えると見られます。
市は液状化被害の対策工法に排水して、地下水位を強制的に下げる「地下水位低下工法」を選定し住民への説明を始めました。
「けんか山」で知られる伏木曳山祭。
毎年5月中旬に行われる街を活気づける祭りを前に、新しい店が完成しました。
＊前山冷菓店 宮本喜代美さん
「（Q出来栄えは？）いいんじゃない？」
店先の地面はまだ土がむき出した状態ですが、お客さんが少しでも入りやすいように人工芝のカーペットを敷きました。
＊前山冷菓店 宮本喜代美さん
「溝の工事が終われば、道の高さが決まる。そうしたら（店先の地面を）コンクリートにする。市の工事が遅れている」
店は前より手狭になりましたが、アイスづくりに使う機械や材料は変わりません。
＊夫・国生さん
「切った？」
＊前山冷菓店 宮本喜代美さん
「何も触っとらんよ？」
前の店で使っていた製造機が何度も停止
＊前山冷菓店 宮本喜代美さん
「あーだめや。あかん。困った」
機械を何度も動かし直し、何とか試作のアイスが出来上がりました。
＊前山冷菓店 宮本喜代美さん
「おいしい。ちょっとやわらかいけれど。もうちょっと機械が真面目に動いてくれればよかった。もう心配で心配で、不安で不安で。でも私は強引にやります。できる形で、できる範囲で」
新店舗での営業初日、店としては去年9月以来
＊前山冷菓店 宮本喜代美さん
「1人でもお客さんが来てくれたらいいかな。ちょっと風が冷たいから、まだまだアイスを食べたいとは思わないのかもしれないけれど」
開店してすぐに、近所の青果店の店主がやってきました。
＊前山冷菓店 宮本喜代美さん
「きょうからです」
＊近所の青果店の店主
「きょうから？うそやろ？」
＊前山冷菓店 宮本喜代美さん
「店だけ突貫工事でつくってもらったもん」
＊近所の青果店の店主
「それなら（1つ）」
＊前山冷菓店 宮本喜代美さん
「ありがとう。第一号」
＊近所の青果店の店主
「うそ？ありがとう。たっぷりとお願いします」
＊客
「開店おめでとうございます」
＊前山冷菓店 宮本喜代美さん
「ありがとうございます。いろいろお世話になって」
＊客
「モナカください」
「俺はソフトクリーム」
「うまい」
「前と変わらずにおいしい」
＊地元の客は
「解体し始めたときどうするんだろうと思ってドキドキしていたけれどよかった。私も食べていたし、お父さんも食べていた。子どもも食べているから、ずっと続いてほしい」
＊前山冷菓店 宮本喜代美さん
「無事開けられてうれしい。子どもたちが買いに来てくれてちょっと希望が出た。道がきれいになって、下水管とかも全部完璧になれば、少しずつみんな戻ってきてほしいな。通りすがりでもいいから『ここにアイスがあったんだ』ってきてくれたらうれしい」
能登半島地震から1年4か月。
街の小さなアイスクリーム店。1日から再び、被災地伏木に笑顔を届けます。
