東北自動車道で、車の逆走をきっかけに3人が死亡した多重事故。

逆走が始まったとみられるインターチェンジは、「平面交差」と呼ばれる構造で、取材を進めると、関西にも同じような箇所が複数あることが分かった。

高速道路を逆走する赤い車
高速道路を逆走する赤い車
この記事の画像(10枚)

■「道に迷った」1キロにおよぶ高速道路の逆走

愛知県内の高速道路の映像。

車の流れは画面上から下なのだが、そこに逆走して入ってくる1台の赤い車。

本線に合流すると、3車線の真ん中へ。対向車にかまわず、衝突すれすれで進み、1キロほど先でトラックに阻まれる形で停車。すぐに警察官が駆け付けた。

運転していたのは50代の男性で、「道に迷った」と話していて、高速道路の出口から本線に入ってしまったということだ。

国土交通省によると高速道路の逆走は、毎年約200件、2日に1回のペースで起きている。

「道に迷った」運転していたのは50代男性
「道に迷った」運転していたのは50代男性

■高速の逆走で多重事故発生「平面交差」原因か

そして先週、多重事故が起きた。

4月26日、栃木県那須塩原市の「東北道」上りで乗用車がおよそ3キロにわたって逆走し、走ってきた車と正面衝突。

逆走車を運転していた前原勇太さん(42)と、衝突された車の平岡勝利さん(56)が死亡した。

逆走車と接触した車の運転手:突然、前を走っていたトラックが車線変更をして、最初は追い抜きをかけて、車線変更したのかなと思っていたんですけど、前から突然(逆走してくる)車が現れて間に合わなくて接触した。

さらに、この事故で発生した渋滞の列に大型トラックが突っ込み、追突された車に乗っていた長嶋弓子さん(60)が死亡した。

「東北道」上りで発生した多重事故
「東北道」上りで発生した多重事故

この逆走が始まった地点と見られるのが、「平面交差」という構造。

右に行くと本線に合流、左は本線から下りてくる車が通る道で、これらが同じ高さで行き違うのが「平面交差」だ。

左に進むと逆走になるが、前原さんの車は、この「平面交差」を左に進入してしまったのではないかとみられる。

平面交差が逆走の原因?
平面交差が逆走の原因?

■関西にもある「平面交差」の高速道路

関西にも、同じような構造の道はあるのか。取材を進めると和歌山県に複数あることが分かった。

早速、取材班が現場へ向かうと…。

記者リポート:前方に見えてきました。ここが平面交差になっている場所です。今、左から車が来てますが、こちらが高速の出口になっているんですけど、こちらから左折すると、そのまま本線を逆走できてしまう構造になっています。

田辺市と白浜町の間にある紀勢自動車道、上富田インターチェンジ。

道路は色分けされているが、進入禁止の標識は1つあるだけ。見落とした場合は、誤って進入してしまう可能性がある。

紀勢自動車道、上富田インターチェンジも平面交差
紀勢自動車道、上富田インターチェンジも平面交差

東北道で、逆走が始まったとみられる場所と比べてみると、ほぼ同じ構造だ。さらに周辺を取材すると…。

記者リポート:ここもですね。左から車出てきていますが、出口です。物理的には左に曲がると逆走できてしまう構造になっています。

南紀白浜インターチェンジでは、ドライバーに逆走を知らせる看板も設置されていた。

慣れているはずの地元の人も「注意が必要な道だ」と言う。

地元住民:危ないよいつも。初めての人は分かりにくいと思う。僕ら(ICが)できた時は、何人かで練習に行った。練習しないと乗れない。

地元住民:大阪方面は手前にある。通り過ぎたら次のところを左に曲がったら逆走になる。

地元住民「危ないよいつも」
地元住民「危ないよいつも」

■専門家は「作っちゃいけない構造」と指摘

重大な事故を引き起こす可能性のある「平面交差」。

専門家は「逆走が不可能な構造にすべきだ」と指摘した。

日本自動車ジャーナリスト協会 菰田潔会長:上り線と下り線と交差するっていうのは、ありえない話なんですよね。作っちゃいけないものだと思っています。

日本自動車ジャーナリスト協会 菰田潔会長:本線を乗り越えていく立体交差に道を作らなければいけないのに、その予算を削ってしまったということだと思います。ドライバーが焦っていたり、それから間違った判断したりしても、逆走しないような道路構造の道を作らなければいけないと思います。

車で出かける機会が増えるゴールデンウィーク。

命を守るための安全な道路づくりが求められる。

日本自動車ジャーナリスト協会 菰田潔会長
日本自動車ジャーナリスト協会 菰田潔会長

■逆走事故65歳未満が半数 高齢者の問題ではない

逆走事故の運転者の年齢(※国交省調べ 2011~2022年の492件)をみると、65才以上と65歳未満がどちらも約5割で、幅広い年代で逆走事故は起こっている。

年齢に起因するものではないということになり、抜本的な対策が必要だと考えられる。

ジャーナリスト 鈴木哲夫さん:(多重事故の原因とみられる)栃木のインターチェンジをしょっちゅう通るんです。初めて通った時に分かりにくかった。道路を立体交差にするのはベストだけど、そのお金がなくても、もっと分かりやすい“でかい標識”で、『こっちだ』とかやればいいけど、信号が1個ついているだけなんですよ。

ジャーナリスト 鈴木哲夫さん:これは年齢に関係ないです、本当に分かりにくい。(夜になるとさらに分かりにくく)道路の色が分からなくなっちゃうんです。まず第一義的には、“とんでもないでかい”標識なり方向指示を。『進入禁止』の看板1個立ててもダメですよ。

年齢関係なく逆走は起こる
年齢関係なく逆走は起こる

■道路の構造変更は理想的だがコスト的な難しさも

コストと安全性を合わせて対策を考える必要があるだろう。

関西テレビ 神崎博報道デスク:専門家は『立体交差にすべき』だと言っていますけど、構造を造り変えるのは難しいと思うので、表示を例えば逆走を示す看板だけじゃなく、フラッシュライトみたいな感じで光が出るとか、大きな音が出るとか、そういった五感に訴える方法で、『逆走ですよ』と知らせる。

関西テレビ 神崎博報道デスク:高速道路で逆走事故が起きると、本当に死亡事故につながるケースが多いので、やっぱり逆走防止には、高速道路会社もお金をかけて、危ないところは対策すべきだと思います。

ゴールデンウィーク期間中は慣れない場所を運転することもあるし、日頃、運転に慣れていない方が運転することもある。

交通量も全体的に増えるので、十分な注意が必要だ。

道路の構造改修は困難 まず五感に訴える方法有効か
道路の構造改修は困難 まず五感に訴える方法有効か

(関西テレビ「newsランナー」 2025年4月30日放送)

関西テレビ
関西テレビ

滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。