11月5日の「世界津波の日」に合わせて和歌山県・串本町で避難訓練が行われました。
最初の津波の到達までわずか6分という場所で、訓練でも「12分」かかった高齢者もいて、対策が求められています。
■「6分後に最初の津波が到達・最大10メートルの津波で地区の8割以上が浸水」
和歌山県・串本町の大水崎(おおみさき)地区は、南海トラフ巨大地震が起きれば、6分後に最初の津波が到達し、最大10メートルの津波で地区の8割以上が浸水すると想定されています。
命を守るために、避難場所として指定されているのは、海抜30メートルほどの高台。
最初の津波が6分で到達すると想定される中、何分で避難できるのか。
住人およそ40人がきょうの訓練に参加しました。
関西テレビの田中アナウンサーも住人の89歳の田中ハルミさんと共に高台を目指します。
【田中ハルミさん(89)】「後の人に迷惑をかけるなぁ。急ぐやろうね」
■線路を横切る避難を計画も高齢者にはつらい「200段の階段」
津波が来るときは、線路沿いにある金網の扉を開いて線路を越えていきます。
こうすれば、大回りせずに、高台へとたどり着くことができます。
しかしそこにはおよそ200段の階段が。
若い人たちが足早にのぼっていく一方、田中さんは息を切らしながら登ります。
【田中ハルミさん(89)】「まだまだあるで。山越えなあかん」
【田中アナ】「この山越えたら上にいけるんですか?しんどいですね。私もちょっと息がハアハアってなります」
■到着したころには「12分経過」
ようやく到着したころには、12分が経っていました。
【田中ハルミさん(89)】「1人やったら無理。よう上がって来ん」
(Q.周りの人の手を借りて行こうとは?)
【田中ハルミさん(89)】「(周りは)年寄りばっかり」
■避難に車の活用は 町「液状化や渋滞時間を要してしまう可能性も」と懸念
実は過去の訓練でも、時間内に避難場所にたどり着けない高齢者がいました。
【田中ハルミさん(89)】「やっぱり乗り物があったらいいと思うね」
車での避難を望む声はほかの参加者からも。
(Q.時間とかどう思う?)
【高齢の参加者】「絶対足らん。車あったら使いたい」
これに対し、串本町の担当者は。
【杉本隆晴課長】「液状化や渋滞、車避難によって余計に渋滞し、時間を要してしまう可能性もあるので。個人的にはまだまだだと思います。そういう方を助けるためにもきちっとしたルール作りが必要」
全員の命が助かるように。訓練で出た課題を避難計画にどう生かすか対策が急がれます。
■東日本大震災の被災地 岩手・大槌町では一定の条件のもと車避難を容認
東日本大震災では車で避難をして渋滞に巻き込まれ、亡くなった方もいました。
しかし震災で大きな被害を受けた自治体でも、車での避難を認めている自治体があります。
岩手県の大槌町は、津波避難計画を改め、原則は徒歩避難ですが、避難が困難な高齢者と支援者、ペットと避難する人(条件あり)は車避難を容認するということです。
【政治ジャーナリスト 青山和弘さん】「この手の問題っていうのは、地域によって全く答えが違います。例えば、車で避難しても避難先に駐車場がなければ、渋滞の列になってしまって他の避難者の迷惑になることもある。(駐車場として)広い場所があるんだったら車の方が早いケースもあります。
一方で、訓練を繰り返すのは素晴らしいです。課題を見つけて、どう対応するのか。訓練を繰り返すことは何より大事かなと思いますね」
(関西テレビ「newsランナー」2025年11月3日放送)