日本酒を絞った後に残る「酒粕」。料理の材料や入浴剤、美容液などにも使われますが、全てが再利用されるわけではありません。
この廃棄されてしまう「酒粕」を「クラフトビール」の副原料として活用する取り組みが、松江市で始まりました。
松江市の大根島醸造所、4月に新たに販売を始めたのは「酒粕」を使ったビールです。黒ビールとヴァイツェン、そしてヘジーの3種類。使われるホップや麦芽の量が異なり、風味や苦みのバランスもそれぞれです。
村上遥アナウンサー:
ほのかに日本酒の香りがします。日本酒の味もしますし、まろやかな口当たりになっていて、甘さも感じます。
日本酒の味もほのかに感じられる個性的な味わいに仕上がりました。
仕込みに使われたのは、雲南市の田部竹下酒造の純米大吟醸「理八」を絞ったあとの酒粕です。
田部竹下酒造 蔵人・岸本いづみさん:
うちの蔵は、まだ槽で絞っていて、お酒の成分がしっかり残っているので、他社の機械しぼりの粕と違って柔らかい。
その酒粕をホップとともに麦芽や米などの原料を「糖化」、糖に変えたあとの「麦汁」にゆっくり溶かします。
その後、通常は2週間ほど熟成させますが、口当たりをまろやかにするため、1か月ほどかけて熟成させます。
大根島醸造所・門脇淳平代表:
1回造るたびに何100キロと酒粕は出てくるので、廃棄物として処理もしないといけないと聞いていて、それだとお金がかかるのでもったいないからということを聞いていました。
大根島醸造所では、これまでに島根名物の菓子やどじょうすくいまんじゅう、抹茶などを副原料として使って50種類以上のクラフトビールを醸してきました。
田部竹下酒造では、年間8トンほど生まれる酒粕。家庭で漬物などに使われることも少なくなり、そのまま廃棄されることが多いと言いますが、その処分にも費用がかかります。
一方で、酒粕は栄養価が高く、健康への効果も期待できることから、大根島醸造所がクラフトビールの副原料として使うことを提案しました。
田部竹下酒造 蔵人・岸本いづみさん:
SDGsになるし、すごく有効活用していただけるのはありがたい。
大根島醸造所:
高アルコールだと1杯飲んで「もういいや」となるので、何杯でも飲んでもらえるようなビール造りもしているので、うちの商品としてはアルコール度数を5%前後に揃えています。
酒粕を使ったクラフトビールは、アルコール度数5パーセントと一般的なビールよりもやや低めに抑え、低アルコールを好む若い世代にも飲んでもらえるビールを目指しました。
大根島醸造所・門脇淳平代表:
大阪・関西万博で、外国人が大勢訪れているので、島根県内にも足を運んでもらって色々な目線で見てもらえたらと思います。
この醸造所では今後、別の酒蔵の酒粕を使ったクラフトビールの製造も検討、日本ならではのテイストで、中国など海外へも販路を広げたいと意気込んでいます。