子育てを一人で抱え込まず、みんなでシェアしようという取り組みが宮城県内で始まっています。3人の子供を育てる母親が自身の経験から、新たな子育て環境を提案しています。

富谷市ひより台で月に2、3度開かれている「子育てシェアラウンジ」。コンセプトは名前の通り、「子育てを皆で共有する」です。子供は生後1カ月健診が終われば、参加できます。この日は、生後6カ月から2歳11カ月までの子供6人、4組の親子が集まりました。

利用者
「インスタグラムで見ていて、こういう場もあるんだとずっと興味があった。ちょっと勇気を持って参加した」

子育てシェアラウンジには、子育て中の看護師や保育士など専門スタッフも常駐しています。体調の変化や子育ての悩みなど、親として心配なこと、困っていることについて相談したり、一緒に悩みを共有したりしてくれるのが特徴ですが、それだけではありません。

セラピスト 江川由季さん
「手から肩、頭にかけてマッサージをさせていただいております」

セラピストの江川さんは、産後にこの資格を取りました。

セラピスト 江川由季さん
「私自身も産後にリラクゼーションを受けて、心身ともに引き上げていただいた。今度は私が提供する方になりたいと思って携わっている」

マッサージ中は、スタッフが隣の部屋で子供をしっかり見守ります。

利用者
「見えないところに預けるのも、泣いてないかなとか、いろいろ心配になるが、子供の気配も感じながら、施術を受けられるのもいいかなって思います」

そして、マッサージの後は、親だけでゆっくりランチ。このランチ、持ち帰りもでき、夕飯のおかずにもなると好評です。子供の入浴は看護師が担当。家に帰ってからの育児や家事の負担を減らしたいとの思いです。

この子育てシェアラウンジを考えたのは、東北大学病院の新生児集中治療室=NICUで看護師としての勤務経験を持つ佐藤彩那さんです。看護師として多くの母親たちと接してきた経験、そして自分の子育て経験からこのような施設が親にとって必要ではないかと考えたといいます。佐藤さん自身は、9歳、7歳、5歳の子供3人を育てています。出産後、病院での勤務からは離れましたが、現在は会社を立ち上げ、子育て講座や人材育成のセミナーなどを開催しています。家事や育児は夫婦で行なっているといいますが、それでも毎日は大忙しです。

佐藤彩那さん(Q、どういう時に子育てが大変と思う?)
「仕事と違って自分のペースで物事が進まなかったり、中断させられることにすごくストレスを感じます。夫はとても主体的に、子育ても家事もやってくれるが、いつも長い時間見ているのはお母さんなので、子供の異変に早く気が付かなくてはいけないなど何かあったら自分の責任みたいな思いはずっとありました」

子供が幼い頃、特に一人目の時に育児に対する不安と孤独を強く感じ、周りからも、そうした声をよく聞いたという佐藤さん。

佐藤彩那さん
「私も1人目の時の生後3カ月目くらいまでの記憶がほとんどなくて、思い出すと泣けてくるんですけれど、すごく後悔している。娘の時は余裕が無かったから、全部楽しめなかった。今になって、ほとんど覚えていなくてもったいないことしたなと思っています」

そこで考えたのが子育てを一人で抱え込まない「子育てシェアラウンジ」。佐藤さんが理想と考える子育てに優しい社会の姿です。佐藤さんの考えは、今年2月に仙台市が開催したスタートアップ事業のプレゼンイベントで、「社会課題の明確化」「持続可能なビジネスモデル」という点が高く評価され、大賞に選ばれました。

佐藤彩那さん
「求められている必要なものと自信がついたのと、やり遂げなければいけないという責任を感じました。ママたちの声を代弁できた、分かってもらえたことがすごくうれしかった」

今年1月から始めた子育てシェアラウンジはリピーターも多く、今では東松島市でも開催しています。この施設には岩盤浴も併設され、利用者の7割は仙台から通っているといいます。

利用者
「子供と一緒にいて毎日同じことの繰り返しで、苦ではないけれど、たまにこういうリフレッシュがあるとまたあしたから頑張ろうという気持ちになる」
「気持ちがあっても体力が足りなかったり、目が配り切れない。手が足りないところを皆さんがいてくれて、ごはんを作ってくれたり、手がたくさんあるというのはありがたい」
「普段は保育所に預けているが、一緒にいる時間を確保したいので、そういうところが素敵と思っています」
「一人で子育てしなくていいんだと思えた。実家が遠いのもあるが、実家以上に気軽に来られるリラックスを感じる」

佐藤彩那さん
「リピート率がすごく高くて、来てくれた方に満足してもらえていると感じるとともに『今まで欲しかったものが全部詰まっている』と言ってもらえるので、すごく手応えを感じています。これからは、子育てシェアラウンジをもっと暮らしの動線上に置いていきたい。社会全体で子育てしていくという文化も一緒に育んでいけたらいいと思っています」

一人の母親が、自分の悩みからひらめき、自分の知識と経験を生かして始めた子育てシェアラウンジ。親たちが楽しく子育てと向き合えるように、今後も模索は続きます。
(子育てシェアラウンジ利用料 1家族6600円 ランチ代込み)

仙台放送
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