社員一人一人が経営者の視点を持つ「会計思考」に迫りました。

DX推進で高い評価を受けている町工場「松本興産」。
70以上ものアプリを自社開発し、年間約4000万円のコスト削減にも成功。

松本興産 経理・松本めぐみさん:
今まで製造業のイメージって、3Kのイメージがある。それを覆したい。楽しいですし、創造してもいい。

製造業を創造業に。
企業文化の変革の裏側には、社員一人一人が経営者視点を身に付ける「会計思考」にありました。

創業50年以上、埼玉・秩父市にある中小企業「松本興産」。
「削りで人を幸せにする」をモットーに、高精度な切削加工技術を用いて、さまざまな自動車部品を生み出してきました。

出荷する部品の数は、毎月約500万個。
経理を任された松本めぐみさんは、業務の効率化を目的にDXプロジェクトをスタートしますが、ある課題にぶつかります。

松本興産 経理・松本めぐみさん:
その時は大失敗だった。DXが何なのか目的も話し合わず、経営層、組織で言うピラミッドの上の層と下の層の心が離れてしまって、組織をつくり上げる難しさを知った。売り上げも落ちていたので。

「利益を出すこと」と「経営者と従業員が共に幸せであること」をどう両立できるか考えた松本さん。

そんな中、全ての社員が足並みをそろえて成長できる特殊な考え方を新たに導入しました。

それが、社員一人一人が経営者視点を身に付ける「会計思考」です。

会計思考とは、企業の経営成績、財政状態を示す決算書を読み解く力を鍛えることで、数字に基づき経営課題を発見・解決する考え方。

通常、決算書は数字や専門用語ばかりで苦手意識を持つ人も少なくありません。
それを松本興産では、売り上げを風船のイラストで表し、企業の資産・負債は豚の貯金箱のイラストなどに置き換えることで、難しい情報を簡素化。

週に1度、会計思考を学べる勉強会を実施することで、どのスタッフも経営課題をいち早く発見。

社員一人一人が「経営者視点」「コスト意識」を持つようになった結果、社内で無駄の見直しが始まりました。

すると、過去に失敗したDXが現場の主導で加速し、70以上もの内製アプリを開発。

当初約3万時間かかっていた業務が1万時間以内に減り、4190万円の経費削減を実現。
利益率の上昇や賃金アップにつながり、離職率も低下しました。

ある社員は、「空いた時間でオリジナルブランドを立ち上げた。自動車部品で加工する技術を生かして、お箸とかおちょことか。テンション上がりますね」と話しました。

松本興産 経理・松本めぐみさん:
日本中の製造業のロールモデルになりたい。みんなでワクワクすることもこんなにできるし、利益も出せる。