スーツ姿のこわもての男たち。
特定抗争指定暴力団・山口組の幹部です。
写真は4月7日、兵庫県警察本部の駐車場で撮影されました。
捜査関係者によると、この数日前、山口組幹部からある書類を提出したいという申し出があったといいます。
その書類は、「山口組は抗争を終結することにしました。今後一切もめることはしません」という、抗争終結に向けた誓約書。
兵庫・神戸市に拠点を置く国内最大の暴力団・山口組が対立組織との抗争を終結すると打ち出したのです。
山口組はなぜ突然、このような行動に出たのでしょうか。
独自取材を通して、その背景と思惑を探りました。
山口組・竹中正久組長(1984年当時):
裁判したるからなこら、覚えとけこら。
山口組は、暴力団の世界で絶対的な存在として長く君臨してきました。
しかし、結成100年を迎えた2015年、司忍こと篠田建市組長の運営方針に複数の幹部が反発。
分裂する形で井上邦雄組長をトップとする神戸山口組が新たに結成されたのです。
2016年、関東に拠点を置く山口組の直系33団体の幹部が集まった親睦会の映像。
会に出席した幹部の口からは、神戸山口組への宣戦布告ともとれる言葉が飛び出しました。
山口組系幹部(2016年):
(Q.2つ山口組がありますが?)2つって、あっちはヤクザじゃねえじゃんか、お前。あんなもん認めてねーよバカヤロー。裏切った連中じゃないか、裏切り者だ、裏切り者。(Q.これから抗争どうなるんですか?)つぶすだけだ、あんなもん。
両者の対立は根深く、ここから全国で衝突が繰り返される事態へ。
それぞれの関連施設にダンプカーで突っ込むなど、事件も相次ぎました。
その後も、神戸市の商店街で神戸山口組系の組長が山口組系の組員に刺され重傷を負うなど、血を血で洗う事件が全国で頻発。
こうした事態を受け、兵庫県公安委員会は2020年、市民に危険が及ぶ恐れがあるとして、山口組と神戸山口組を特定抗争指定暴力団に指定したのです。
終わりが見えない状況の中、今回、山口組が打ち出した抗争終結宣言。
背景には何があるのでしょうか。
FNNが入手した、山口組の創立110年を記念した「機関紙」。
中には「当局による締め付けも年々厳しくなり、制限などを数えればキリがないですが、時代に沿った考え方で活路を模索し、一人一人が己の矜持(きょうじ)を持って行動しなければなりません」という記述がありました。
特定抗争指定によって、活動が厳しく制限されていることがうかがえます。
その実情について、山口組系の元組長は「飲食店に入るのもダメやし、(事務所が)使用禁止とかなって、不便は不便やね」と話します。
さらに、神戸山口組については「神戸山口組についてはもう衰退していく一方で、カエシ(報復)っていうカエシしてないし」と話しました。
実際、神戸山口組の構成員は、ここ10年で9割以上も減っているということです。
今後の動向が注目される中、4月8日にある動きがありました。
愛知・豊橋市に山口組の直系団体の組長らが集結。
誓約書の提出を受けて、緊急の会合が開かれたものとみられます。
この会合で、山口組の幹部は大声で「神戸(山口組)は構うな。とにかく、六代目山口組は前進あるのみ、前進あるのみ」と訴えたといいます。
分裂から10年。
抗争終結は現実のものとなるのか。
対立する神戸山口組側は、まだ沈黙を守っています。