岩手県大船渡市で葬儀を取り仕切る「葬祭ディレクター」を務める男性が、山林火災で自宅が全焼する被害に遭いました。
それでも今生きる人と先祖への思いをつなぎ「この地域に住み続けたい」と前を向いています。

大船渡市三陸町綾里で葬儀会社「総合葬祭米沢」を家族で経営する米沢優希さんは、生まれも育ちも綾里地区で、関東の葬儀会社で修行したあと9年前に地元に戻りました。

米沢優希さん(1級葬祭ディレクター)
「お葬式というのはその人の人生の最後の1ページに携わること。この地域の皆さんに支えられて仕事をさせていただいている」

経営する2つの葬儀場のうち綾里地区の施設は東日本大震災で津波が押し寄せ半壊。
それでも復旧し地区で唯一の葬儀場として地域とともに歩んできました。

米沢さんは2024年8月に第一子となる長男が誕生。
家族への思いを強くするなか2025年2月、山林火災が発生しました。

米沢優希さん
「この地域自体がなくなってしまうのではないかというくらいの炎の勢い」

自宅は避難指示の対象になったため、安全な地域にある葬儀場の一室で1週間あまり寝泊まりをしました。

米沢優希さん
「小さい子どもがいるので、お風呂とか子どもの世話をするのに避難所だと難しい面があると心配した」

避難指示が解除され12日ぶりに帰宅すると自宅は全焼し骨組みさえ残っていませんでした。

米沢優希さん
「あそこに仏具が。がれきの中に入って何かないかなと見たときに仏具が出てきて、ここ仏間だったと思った。鉄でできている仏具が形がぎりぎり分かるくらいの状態で燃え残っていたので、それ以外のものはもうほとんど残ってないだろうと思った」

山林火災で大切な先祖代々の遺影も失いました。

山林火災で遺影が焼けてしまった住宅も多くありました。
総合葬祭米沢では約20年前までのデータが残っているということで、要望があれば遺影を復元して無償で提供することにしています。

米沢優希さん
「写真のデータを探して復元できれば印刷をして額に納めた状態でご家族にお返ししたい」

“心のよりどころ”が失われないように。ふるさとを愛する米沢さんの恩返しです。

米沢優希さん
「生まれ育って良かったと思えるような地域を残していきたい。自宅をどこに再建できるかは分からないが、この地域とずっと関わってできれば住み続けたい」

代々受け継いできたのは自然とこの地域を大好きになる優しい町づくり。
思いの強い土地で明るい未来を見据えます。

岩手めんこいテレビ
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